12炎
バキ…バキ…バキ…。
僕が後ろを見ると、アースドラゴンは僕とレーナを追って、木々を薙ぎ倒しながら向かっている。
幸いにも、漆黒の森は全方位が大きな樹木で生い茂っているので、それが障害になってアースドラゴンは思うように進めずにいた。
シュン!
大きな風切り音が後ろから聞こえてくる。
「リック!」
レーナが急いで、僕を屈ませる。
さっきまで僕の上半身があった場所を通り過ぎたのは、大きな岩だった。
アースドラゴンも馬鹿ではない。
まともに、追いつこうと思っても追いつけない。
だから、魔法を撃って僕達を仕留めようとしているのだ。
そこから岩の乱れ打ちが始まったが、レーナのお陰で何とか回避できている。
途中すれ違った魔物は、アースドラゴンの岩によって、押しつぶされるに至る。
「こうなったら、〈調伏〉!」
「え?それは……」
僕は苦し紛れに、自身の【ジョブ】のスキルである〈調伏〉を発動する。
レーナが目を点にさせるが、当然の反応だ。
僕の【ジョブ】は『ドラゴンテイマー』は知っての通り。
テイマーとは、何かを調伏して従魔にする【ジョブ】。
そのため、テイマー系の【ジョブ】に着くと必ず、〈調伏〉と呼ばれるスキルが行使可能だ。
この〈調伏〉によって、成功されれば、魔物などをテイムし、自身の仲間にする。
だが、勿論、〈調伏〉は無条件で成功する訳では無い。
基本的に、〈調伏〉を発動したテイマーと、〈調伏〉対象である魔物との力量差が小さいことが条件だ。
本来なら、普通のテイマーはスライムやゴブリンなどの弱い魔物を〈調伏〉によってテイムしていき、力を付け、さらに強い魔物を〈調伏〉していくという流れだ。
間違っても、初手でドラゴン相手に使うものでは無い。
パリン!
案の定、〈調伏〉のスキルは速攻で無効となった。
うん、分かってた。
因みにだが、この〈調伏〉はテイマーと、テイムする魔物の一対一での力量差が小さいことが条件である。
最も、分かりやすく言うと、誰かがテイマーの代わりに、テイムする魔物と戦い弱らせる。
その弱らせた魔物に対して、〈調伏〉を行っても、無効になる。
弱らせたことで、力量差が小さくなったとしても、〈調伏〉においては第三者の介入は駄目なのだ。
だからこそ、〈調伏〉は一人でやらないと意味が無い。
アースドラゴンに追われていると言う焦りから、つい…冷静な判断を誤ってしまった。
その後も、魔法による岩の攻撃が飛んで来る。
それを何とか躱しながら、森の奥へと走る。
「グル」
暫くして、アースドラゴンがいきなり止まる。
追ってくる様子が無い。
まさか、諦めてくれたのかな?
そんな僕の淡い期待は、次の瞬間破られる。
グラララララ………。
突如、地面が揺れ始める。
揺れているのは、地面全体ではなく、僕とレーナがいる地面だ。
「わわわ?!」
「こ、これは地面が揺れています?!」
僕とレーナはバランスを保とうと、踏ん張る。
でも、バランス力の無い僕は、踏ん張りがきかず、地面に転げ落ちる。
その時、地面が揺れるだけでなく、割れ始める。
アースドラゴンの足元の地面に入った亀裂は、見る見るうちに、広がり、僕とレーナの元に到達しようとしていた。
なるほど、アースドラゴンは岩を作り出せるだけでなく、地面を操作して、地割れを引き起こすのか。
このままだと、僕が地面に沈み込まれる。
レーナが手を伸ばすが、既に僕は地面に半端落ちかけていた。
その時。
ゴオオオオオオオオオ!!!
凄まじい熱気が僕の頬を撫でる。
視界が赤に染まる。
熱気と共に来た衝撃波で、僕とレーナが割れた地面から吹っ飛ぶ。
「グルアアアアア?!」
続いて、聞こえるアースドラゴンの悲鳴。
何と、アースドラゴンの足元から巨大な炎が上に向かって吹いていたのだ。
炎は、飛んでも無い火力で、離れているのに、僕の額に汗が噴き出す。
突然の炎の強襲を受けたアースドラゴンは、悲鳴を上げたまま、焼き尽くされる。
レーナの攻撃にビクともしなかったアースドラゴンが焼き尽くされる現場に、僕とレーナは目を見開くことしか出来なかった。




