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追放された不遇職である『ドラゴンテイマー』の僕は、婚約者だった公爵令嬢と共に生き抜いていく  作者: 保志真佐


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01不遇職




 「リック・アーカイブの【ジョブ】は………『ドラゴンテイマー』!!!」


 目の前で、台の上に乗った水晶玉を見ていた神父の人が高らかに、僕の【ジョブ】を叫ぶ。


 それによって、周囲に沈黙が訪れる。

 何故なら、僕が授かった【ジョブ】である『ドラゴンテイマー』を聞いて、僕を含めて…みんなが驚いたからだ。


 僕の名前は、リック・アーカイブ。


 年齢は今日で丁度、十六歳となる。

 アーカイブ辺境伯家の次男だ。


 アーカイブ辺境伯は、僕の生まれ故郷であるセイクリッド王国の最西端に位置するアーカイブ領を治める貴族家。


 今いるここは、僕の家であるアーカイブ辺境伯家が所有する屋敷の大広間。

 大広間では、夕方から今の時刻である夜に至るまで、パーティが開かれていた。


 この屋敷には、現在…僕や神父の人だけでなく、アーカイブ領と近い領地を持つ貴族や、そこの領地を行き来する名を通った商人など…アーカイブ辺境伯家に親交が深い高い地位の人たちがいる。


 みんな、僕の【ジョブ】の儀式を見るために集まった人たちだ。


 その彼らが一様に口を閉ざし、驚いた表情をしている。


 だけど、決して感嘆からの驚きではない。

 それは断言する。


 寧ろ、反対だ。


 「はぁ…」


 僕の後ろで、ため息をする音が聞こえた。


 振り向くと、大きな男…ベルガー・アーカイブが失望を込めた視線で僕を見ていた。


 ベルガー・アーカイブ…僕の実の父親であり、アーカイブ辺境伯の当主である。

 僕と同じ金髪に染めた髪を短く刈り添え、これまた僕と同じ何の変哲も無い茶色の目を持っている。


 けれど、僕と決定的に違うのは、第三者が見れば、一目瞭然。


 まず、貧弱で頼りない見た目の僕と違い、父のベルガーは筋骨隆々であり、離れていても強者特有の覇気を持っている。


 あたかも戦争の英雄とでも言うかのような威風堂々とした佇まい。

 僕に絶対持ちえないものだ。


 そんな父が僕に対して、失望した面持ちを向けている理由は、僕が先程授かった【ジョブ】にある。


 「………………不遇職か」


 父が小さく呟く。


 その通り。

 父の言った事が全てだ。


 僕が授かった【ジョブ】である『ドラゴンテイマー』は、所謂…不遇職であるのだ。


 この世界では、生まれてから成人である十六歳になると、天から【ジョブ】が授けられる。

 もっと詳しく言うと、十六歳になると、教会が保有している水晶から【ジョブ】を得ることが出来るのだ。


 この【ジョブ】を得るための行為が、【ジョブ】の儀式と言う。


 【ジョブ】とは、授かることで様々な能力や特殊技能である「スキル」という物を習得できるステータスみたいなものだ。


 『剣士』や『魔法使い』、『商人』、『旅人』、『錬金術師』など、【ジョブ】の種類は多岐に渡る。


 例えば、『剣士』の【ジョブ】を授かれば、剣を扱うために身体能力を飛躍的に上がり、「スキル」によって、通常では扱えない剣技を放つことが出来る。

 『魔法使い』ならば、体の保有魔力が増え、「スキル」によって、多くの魔法を習得可能だ。


 【ジョブ】は得るだけで絶大な効果を発揮する。


 それまで剣なんか握ったのない者が、『剣士』の【ジョブ】を得ただけで、即座に一人前の剣士になれるほどだ。

 『剣士』の【ジョブ】を持った者に、『剣士』の【ジョブ】を持たない者が、剣で勝つのは、ほぼ不可能なほどに。


 これで分かる通り…【ジョブ】は、この世界に置いて最も重要な指標であり、【ジョブ】によって、その人の将来が決まると言っても過言ではない。


 しかし、この【ジョブ】について問題がある。


 それは無数にある【ジョブ】の中には、”不遇職”と呼ばれる全く役に立たない【ジョブ】があるという事だ。

 不遇職は、他の【ジョブ】に比べ、取り分け性能や能力が低く、使いどころが無い【ジョブ】である。


 全ての人が【ジョブ】を得られる、この世界において、不遇職を授かった者は大変な人生を送る。


 取り分け、僕の生まれ故郷であるセイクリッド王国は、【ジョブ】至上主義の国。

 セイクリッド王国では、不遇職を授かった者は、常に侮蔑の対象であるのだ。


 周囲から蔑まれ、酷い扱いを受けることも珍しくない。

 不遇職を得た瞬間、自身の将来を憂い、自害する人だっているほどだ。


 僕は、その不遇職を授かったと言う訳だ。


 不遇職を僕が授かってしまったことで、沈黙していた周囲が段々と騒がしくなる。


 「おい………『ドラゴンテイマー』って………………」

 「ああ、不遇職だな」

 「この国では、人生が終わったも同然だな」


 騒がしくなるにつれ、周囲から僕に送られる視線は、徐々に蔑みを含んできた。


 普通の【ジョブ】でも、良かったのに。

 こんなの、あんまりだ。


 僕は自身に行く末に絶望する。


 「リック」


 冷たい声が僕に振り注ぐ。


 「は、はい!」


 僕はビクッとしながらも、父に向き直る。


 そんな僕に向かって、父の口がゆっくりと開かれる。

 僕の鼓動が急激に早まる。


 嫌な予感がする。

 頼むから外れてくる。


 ………………けれど、その嫌な予感は外れることなく、的中する。


 父は冷静に言い放つ。


 「今日より、お前の貴族としての地位を剥奪し、このアーカイブ辺境伯領から追放する」


 父は実の息子に対して、追放すると……何の後悔も憂いも無く、言い放ったのだ。




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