第2話:狂愛の夜
三年目のハロウィン。
赤い二つの月が森を血のように染める夜、セシルは静かに魔法陣を描いた。
今夜、彼女は決意していた――契約を解除し、カインを自由にするために。
森の奥、礼拝堂の闇が揺れる。
セシルは杖を握り、契約解除の呪文を唱えようとした。
胸の奥で、恐怖と愛が絡み合う。
「ねぇ……セシル、今夜も、君を“殺して”いい?」
紅い瞳のカインは、普段の理性を失い、狂気に染まっていた。
ハロウィンの夜だけ、愛ゆえの暴力を抑えられない――それが契約の副作用だった。
「カイン……私は……あなたを自由に……」
セシルが呪文を唱えようとすると、カインは手を伸ばし、彼女を潰さんとばかりに強い力で抱きしめる。
「ダメだ、セシル。君を手放すなんてできない……永遠に、君の中にいたいんだ。」
力は暴力的で制御不能。
文字通り抱き潰されたり、引き裂かれたり、使い魔としての力は一切制御されないまま、セシルにぶつけられる。
セシルは何度も死ぬが、不死身の体はすぐに蘇る。
痛みは深く、恐怖は増し、狂愛は濃くなる。
セシルは何度も契約解除を試みる。
魔力を集中し、呪文を唱えるが、カインのハロウィンの暴走がそれを阻む。
「……カイン……これが契約の代償……?」
「そうだ。君の中にいられるためなら、何度でも、ずっと……」
甘く恐ろしい声は、永遠を誓う狂愛そのものだった。
夜が明けるころ、礼拝堂には黒薔薇がひとつ残る。
その中心には、紅く光る魂――ハロウィンの夜だけ暴走するカインも、永遠にセシルの中で脈打っていた。
「ねぇ、カイン……私、もう逃げないわ。」
『僕もだよ、セシル。君が生き返る限り、僕は永遠に君を抱きしめる。』
赤い月が消え、静かな朝が訪れる。
森には恐怖と愛が混ざった余韻だけが残った。
二人の狂愛は、契約と解除の葛藤、ハロウィンの暴走を繰り返しながら、永遠に続く。




