救助成功
「あ……!」
横穴から引っ張り出されたアリーナはようやく閉塞感から解放された。
近くに自分を見ない様にして顔を赤くしているヴィルの姿を見つけた彼女は
「ヴィルさん……!」
ーガバッ!ー
震える身体でヴィルにしがみつく様に身体を預けた。
「すみません! ごめんなさい! 私が至らないばっかりに……皆さんに……ヴィルさんにご迷惑を……!」
自分に身体を預けているアリーナにヴィルは内心オロオロしていた。
鎧を脱いでいる為、アリーナの柔らかい身体の感触がダイレクトに伝わってくる。
すっかり直立不動で固まってしまったヴィルはなんとか理性を保たせると
「いや、俺の方こそすまなかった。他の冒険者が襲われたんだから俺達も……俺も慎重に動くべきだった」
ーポンー
ヴィルは謝罪の言葉を口にすると恐る恐るアリーナの頭に手を乗せる。
「良かった。アリーナが無事で……お前に何かあったら俺は……」
ヴィルがアリーナの頭を撫でながらそこまで言い掛けた丁度その時
「お〜い! 少年、無事かぁ〜?」
松明を手にしたクレアとパルミラ、そしてアリーナが治療していたアッシュが二人の元にやってきた。
そんなクレアの声にビクッと身体を震わせたヴィルとアリーナの二人は、急いでお互いから離れると
「あ、ああ。こっちは大丈夫だ」
先刻手放した松明の明かりを頼りにヴィルは装備を身に着け始める。
「ほれ、アリーナ。お前の錫杖だ」
クレアはアリーナに彼女が手放してしまった錫杖を手渡してきた。
「後は冒険者の女の子達だ。急いで探さないとな」
こうしてヴィル達は本来の目的であるパルミラの仲間達の捜索に戻る事にするのだった。
ゴブリンの洞窟はほぼ壊滅状態だった。広間で倒したホブゴブリンが彼等の用心棒兼リーダーだったらしい。
ホブゴブリンを失った群れはただの烏合の衆に成り下がっていた。そんな中
「ミドリ、イザベル、ユミル! 無事か!」
洞窟の最奥、木の柵で作られた牢屋の中に冒険者の女の子三人と近隣の村から攫われてきた女の子達を見つける事が出来たのだった。
ーズババッ!ー
木の柵を難なく破壊したヴィルが牢屋の中に入ろうとすると
「ヴィルさん、ここは私が……」
アリーナがヴィルを留めつつ自身が代わりに牢の中へと入っていく。そして
「偉大なる女神様、
無垢なる天の息吹をこの地に……」
ーパアアァァー
神聖魔法を唱え始めると錫杖に光が集まっていく。
「神聖なる輝きよ、今ここに降り、心と大地を清廉に還し給え……
ピュリフィケイション」
アリーナが唱えた魔法の光が牢屋の中の女の子達に振り注いでいく。
「皆さん、これで悪しきモノは浄化されていきます」
続けてアリーナは治癒の為の神聖魔法を唱えようとするが
ークラッ!ー
「あ……!」
立て続けの魔法に加え、彼女は閉所からようやく助け出されたばかりである。立ちくらみの様にふらつき始めたアリーナに
「危なっ!」
ーガシッ!ー
蹌踉めいたアリーナの両肩をヴィルがガッチリと支える。
「気持ちは分かるが……無理はするな」
そして現状を把握したヴィルは
「悪いが村に行って人手を呼んできてくれないか? これは俺達だけじゃ無理だ」
女の子達は衣類がボロボロになってかいる子もおり、今のヴィル達で彼女達を連れ出すのは無理があった。
「それなら私が呼んでこよう。パルミラ、村までの道案内を頼む」
村に助けを呼びに行くのはクレアが申し出てくれた。彼女なら途中で魔物にやられたりとかは無いだろう。また
「俺も……助けを呼びに行きます。それ位は俺にもやらせてくれ」
病み上がりなアッシュもクレアとの同行を申し出てきた。
「頼む。皆が乗れる様な馬車と……マントを人数分だな」
こうしてヴィルとアリーナとクロ達三匹は、助けを呼びに村へ向かうクレア達を見送るのだった。
「カーラ、無事か!」
「エミリー、生きてて良かった!」
クレア達が連れてきた村人達によって囚われていた女の子達は無事に保護された。また、パルミラの仲間達の三人の冒険者達ミドリ、イザベル、ユミルの三人は外傷も無く救助が早かったのが幸いした。
「ヴィルさん達、この度はありがとうございました!」
村への道すがら、近くを歩いていた十代後半らしい冒険者パーティーのリーダーアッシュが深々と頭を下げてきた。
「いやいや、俺達も出来る事をやっただけだ。それにアリーナを助けてもらったりもしたしな。礼はよしてくれ」
ヴィルがアッシュに謙遜気味に応えるが、
「ヴィルさんって、もしかしてあの有名な勇者のヴィルヴェルヴィントさんですか?」
ここでようやくアッシュは目の前の銀髪青年が話題の勇者であると気が付いた様だった。
「あ、ああ。そんな大それたモンじゃねぇさ。出来る事をやってただけだ」
そんな謙遜してみせるヴィルに、冒険者パーティーの女の子三人組の一人、格闘家のミドリが
「でも、人って見かけによらないわよね。勇者様って英雄色を好むを地でいってるって聞いてたけど」
噂で聞いていたヴィルヴェルヴィントと実際の彼とでは明確な齟齬があったらしい。
「そうそう。巷じゃ女の子の敵なんて言われてるのにね〜?」
ミドリに同意してきたのは魔術師のイザベルだ。
「エッチなのはいけないと思います! アッシュさんは真似したら駄目ですからね?」
割と酷い物言いをしてきたのは神官のユミルだった。真面目らしい彼女の言動にヴィルの内心は複雑だった。
「そんな事ありません。ヴィルさんは本当に優しい人なんです」
悪し様に言われっぱなしのヴィルのフォローにアリーナが入る。こちらは勇者パーティーの聖女様と言う事もあり
「まぁ、人の噂には尾ひれが付き物だし。何より俺達皆を救ってくれたんだからな。立派な勇者だろ」
全滅の危機を救ってくれた恩人だけあってアッシュからの評価は高い。すると、冒険者女の子三人組の評価は
【アッシュが言うのなら】
という感じでヴィルは高評価のまま着地したのだった。




