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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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地の利

 最前線でゴブリンを片付けているヴィルだったが

「チッ……くそっ!」

 雪崩込んでくるゴブリンを全て片付けるのは無理があった。

「キャキャアッ!」

「ケケケッ!」

 ヴィルの剣閃を抜けた何匹かはヴィルを放置して後方のメンバー達の方に向かう。

「おらあっ!」


ーバギィッ!ー


「ギャッ!」

 だが、第二列として広間に入ったクレアとパルミラの二人によってゴブリン達は途中で無力化されていった。

 そんな中、なんとか安全を保たれていた後方のアリーナは

「神聖なる輝きよ、今ここに降り、

心と身体を清廉に還し給え……ヒール!」


ーパアアァァー


 重傷を負っていたアッシュに神聖魔法を掛け終えたところだった。

「皆さんも……ヴィルさんやクレアさん達をお手伝いしてきて頂けませんか?」

 一番後ろから戦況を見守るアリーナからは戦場の様子が一目瞭然だった。

 最前線で戦うヴィルの負担は勿論、広間の中で戦うクレアやパルミラのキャパもギリギリに見えた。

 彼女達の助けになればとアリーナか傍らに居るクロ達三匹に語り掛けると

「ワンッ!」

「キャキャッ!」

 クロとモン吉の二匹は少し躊躇ったがそれでも広間に突入していった。

「クエ〜」

 ただ一匹、サンドペンギンのペン太だけはアリーナから離れず近くの地面を地均しして、歩くのに負担を減らす裏方に勤しんでいた。



 その頃、最前線では明らかに戦況が変わり始めていた。


ードガアッ!ー


「おわっ!」

 多数のゴブリンに加えて、一際巨体なホブゴブリンが戦闘に参加し始めたのだ。

 ホブゴブリンの棍棒は大したもので、ヴィルでも当たればひとたまりもないだろう。

 多数のゴブリンばかりかホブゴブリンまで相手となっては、流石のヴィルであっても致命傷を避けるので手一杯であった。

 纏めて倒せるウィンドストームも、真空波を放つシャルゲシュベルトも溜める為に一瞬の時間を必要とする。

 多数に囲まれた今のヴィルにはその僅かな時間を見出すのも難しかった。

「ヴィルさん……!」

 周りに敵が居ない事を確かめたアリーナは魔法の詠唱に入る。

「偉大なる女神様、

無垢なる天の息吹をこの地に……」


ーキュイイイ……ー


 アリーナの目の前に掲げた錫杖に光が集まっていく。その時

「ケケケッ!」

「ケッケッケッ!」

 何処からとも無くゴブリンの笑い声が聞こえてきた気がした。

(な、何……?)

 呪文を唱えながら周りを見るアリーナだったが、やはり近くには何も居ない。

「神聖なる輝きよ、今ここに降り、勇敢なる者に清き力と加護を与え給え……ディバインリンク!」


ーパアアァァ!ー


 アリーナの錫杖から放たれた光は苦戦していたヴィルの長剣へと飛んでいき


ーキュイイイィ!ー


「これは、魔王を倒した時の……!」

 ヴィルの長剣の刀身が眩い光を放ち始めた。

「はあああっ!」


ーズバアッ!ー


「グアアアアッ!」

「ギャアーッ!」

「ギャアッ!」

「ウギャアッ!」

 光の剣となった長剣を振るうとホブゴブリンも周りのゴブリンも例外なく両断されていった。

「はぁ……はぁ……。悪いな! 助かった!」

 周りのゴブリンを片付けたヴィルが肩で息をしながら、アリーナに礼を言おうと彼女の方を振り向く。

 すると、暗闇の中に一瞬だけアリーナの足元に蠢くものが見えた。

「アリーナ! 近くに敵だ、気をつけろ!」

 突然のヴィルの声に辺りを見回そうとアリーナが後退ったその時


ーガシッ!ー


「きゃっ!」

 何者かに足を掴まれたアリーナはバランスを崩して仰向けに倒されてしまった。


ードサッ!ー


「うぐっ!」

 頭を強打したアリーナからは一気に意識が失われていく。

(あ……う……?)


ーズズズズズ……ー


 ほんの一瞬の暗転の後に彼女が自覚したのは我が身に伸し掛かる様な圧迫感。そして、どこかへ引き摺られて行く感覚だった。

「はっ……! ここは……?」

 直ぐに起き上がろうとしたが、両足は何かに掴まれたままどこかに引き摺られている最中だった。

「くうっ……!」


ーガツッ!ー


(な、何……? これは……?)

 何とか身動きをしようとした瞬間、身体が周りの固い何かにぶつかり手も身体も身動きが出来なかった。

「いやっ! 離して! 離して下さい!」

 自分が狭い場所に連れ込まれている恐怖に、アリーナは足を動かして懸命に抵抗する。

 しかし、非力なゴブリンと言えど複数人相手ではアリーナに勝ち目はまるで無かった。

「ケケケッ!」

「ゲヘヘ!」

 足元からはゴブリン達の笑い声が聞こえてくる。足を動かそうにも膝すら曲げられない程の狭さにアリーナの恐怖は増していく。

「い、いやあ……助けて……!」

 時間ともに身体に感じる圧迫感は増していく。何とか顔を頭上に向けると、ほんの僅かな明かるさが頭上に感じられるが、どんどん遠ざかっていく。

 明かりに手を伸ばそうにも狭さで上に挙げる事すら出来ない。

「いやっ! いやあっ! ヴィルさん! クレアさん! 助けてぇっ!」

 自分がどうなるのか分からない恐怖にアリーナにはただ助けを求めて叫ぶ事しか出来なかった。



 アリーナからの悲鳴が聞こえてきたのは通路の地面ギリギリに開いていた小さな横穴だった。

 岩の窪みに隠される様に開けられた横穴を見つけるのは相当な熟練冒険者でなければ無理だろう。

 しかもそれは小さなゴブリンが屈んでやっと通れる程度の狭さでしかなく、ヴィルは勿論、クレアでも中に入ったら出られなくなる小ささだった。

 松明の明かりだけで初見で見破るには難易度が高すぎた。

「まさか、冒険者達が襲われたってのは……ここから?」

 ヴィルはパルミラに尋ねるが彼女は分からないと首を横に振るばかり。

 確かに、こんな不意を突かれたら後列はひとたまりもない。

 冒険者の女の子達の姿が見えないのも、同じ様に横穴に引きずり込まれたのかもしれない。

「私が助けに行きます!」

 そう志願したのは身体の小さな斥候のパルミラだった。彼女は腰にロープを巻きアリーナを助けに行く構えだ。

「俺は奥に行って反対側が無いか調べてくる」

 横穴に引きずり込んでそれで終わりなはずは無い。ならば……

(急がないと……!)

 確証は無いがヴィルは松明を手に取ると、あるかどうか分からない横穴の反対側を探しに出る準備を始める。

「アリーナ! 心配するな! 必ず助けてやる!」

 ヴィルはアリーナが引きずり込まれた横穴に声を掛けると一人、広間奥の洞窟へと下っていくのだった。そして

「クレアさん。合図したらこのロープ引っ張って下さい」

 パルミラも匍匐前進の様にして一人狭い横穴へと入っていくのだった。

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