スキル
「いってぇ……」
目を覚ましたユーマが見たのはさっきと変わらないままの地下牢だった。
よく分からないが、エルフィルを弄んでいる間に背後から一撃を貰ってしまった様だった。
痛む後頭部を抑えながらユーマが身体を起こすと……ガタガタと震えているエルフィルの姿があった。
「一体、何があった?」
ユーマか尋ねるもエルフィルは震えるばかりで答えは何も返ってこない。
(絶対隷属!)
ーキイィィン!ー
ユーマは彼女にスキルをかけ直して、何が起きたのかを尋ねるのだった。すると
「……悪魔の女がユーマ様を蹴り飛ばして逃げていきました」
淡々とした答えがスキル制御下のエルフィルから返ってきた。
(悪魔のあいつが俺を……? いや、確かにスキルは掛けたハズ……)
自害を命じた対象が命令無視し、あまつさえ自分を攻撃してくるなどユーマには信じられなかった。
(おい! このスキルは絶対隷属なんだよな? 誰でも支配出来るんだよな!)
エルフィルを放置してユーマは頭の中に尋ねる。すると
【はい。この世界のあらゆる対象を隷属可能です】
無機質な女性の音声で返事が返ってきた。その事実に安心したユーマは
「皇帝、エルフィルの枷を外せ。上に戻るぞ」
皇帝にエルフィルの解放を命じると彼は地下牢を後にするのだった。
一方その頃、北の街ルミナスフォールから王都を目指す旅に出たヴィルとアリーナ、クレアと三匹たち一行は街道を順調に南下を続けていた。
クレアは分からないが今のヴィルにとっては初めての王都になる。アリーナも数カ月ぶりになるかもしれない。
話で聞く限りはこの世界でも有数の美しい都市であるらしいので、まだまだ雪が混じる寒空な森を歩いているヴィルにとっては王都に着くのが待ち遠しかった。
「王都に戻ったら抹消された冒険者登録を戻してもらわなきゃな。いつまでもプータロー勇者なんかゴメンだからな」
会話のついでにヴィルは少しおどけてアリーナに話し掛けてみる。すると
「そうですね。王都に行けばきっと分かって貰えますよ。それに……」
微笑んで答えるアリーナは少し考えて
「もしかしたら、エルフィルさん達も王都に戻っているかもしれませんしね」
別れてしまった他のパーティーメンバー達の事を気遣う言葉を口にした。
「そうだな。あいつらも王都に居れば話がはやいんだがな」
今回の旅の目的はそれなので王都で合流出来るのならそれに越した事は無い。
「別れた他の連中も出身は王都に近いんだろ? だったら手がかりくらいはあるだろうな」
先頭を歩くクレアが会話に混ざってきた。先頭は彼女が買って出たのだが一人で暇であるらしい。
「ま、まぁ……そうなんすけどね」
クレアの言葉にヴィルの返事の歯切れは悪い。クレアには話していないが別れた勇者パーティーメンバー達はトマスのスキルによって支配下に置かれている可能性が高い。
単純に彼等を救うにはトマスをどうにかしなければならないのだが……今のヴィルはノープランでしかない。
勝ち目があるとすれば完全な奇襲でトマスがこちらを認識する前に黙らせなければならない。
一体、どれだけの人間を支配下に置いているかは分からないが魔王以上に骨が折れる相手である事に違いは無いだろう。
(となると……冒険者ギルドで情報収集は必須だな)
王都に無事辿り着いてものんびり観光と言う訳にもいかない様だ。魔王を倒したら消化試合と言う訳でも無いらしい。
「ウキャキャッ!」
その時、横合いから一匹のゴブリンが飛び出してきた。だが
「ガルルッ!」
ーガブリッ!ー
「ギャアーッ!」
飛び出してきたのがクロの眼前だった為、即座にガブリと一噛み。
迂闊なゴブリンはあえなく即落ち二コマで御退場となってしまった。
(他に姿は……よく見えないな)
ゴブリンは大体が群れて襲い掛かってくる。どんなに少なくても襲う対象より人数は集めてくるハズだ。
いくら男一人女二人ペット三匹でも、ゴブリン単独というのはまずありえない。
だが、森は深い針葉樹で阻まれ森の奥まで見通しは利かない。斥候のエルフィル不在が非常に痛手でしか無かった。
ヴィル達が周りに気を配りながら森の中の街道を進んでいると
「おい! 誰か生き倒れだ! アリーナ、来てくれ!」
先頭を進んでいたクレアから指示が飛ばされ最後尾のアリーナが先頭に向かう。その間、ヴィルは進みながら周囲を警戒する。
「酷い怪我だ。助かりそうか?」
対象の人影の場所までアリーナを先導したクレアは周囲の警戒に当たりながら様子を尋ねる。
「慈愛の女神様……」
必要最低限の確認を済ませたアリーナかすぐさま治癒魔法の詠唱に入っていく。
(助かるのか……?)
ヴィルの目から見ても生き倒れが助かるかは微妙なラインだった。
大量の失血に加えて体温の低下……見た目斥候らしい少女は助からないかに見えた。だが
「心と身体を清廉に還し給え……ヒール!」
ーパアアァァ!ー
アリーナから眩い光が放たれ、倒れている少女の身体を包んでいく。
「う、ん……」
死にかけていた少女に意識が戻りつつあった。傷は見る魔に塞がり、聖女としての実力をまざまざとヴィルとクレアに見せつけていた。
「こ、ここは……私は……?」
「ここはルミナスフォールと王都を繋ぐ街道です。あなたはここで生き倒れておられたんです」
アリーナが出来るだけ穏やかに現状を少女に説明する。それを聞いた少女は




