助っ人
「そこまでにしてくれねーかな。それは俺のなんでね」
皇帝とエルフィルが居る地下の牢屋に気だるそうな物言いの少年が近付いてきた。
「な、何故お前がここに……」
これから悪代官に回されようとしていた町娘を助けに来たノリの少年は皇帝と拘束されているエルフィルを見やると
(お前は絶対隷属! そして……エルフィルは解除だ!)
ーキイィィン!ー
皇帝には絶対隷属のスキルを、そして何故かエルフィルに掛けていた隷属スキルを解除するのだった。
(あれ……私、魔王と戦ってて……)
久しぶりに自身を取り戻したエルフィルにとっては魔王と戦いヴィルの事を手伝っていた真っ最中だった。そのはずが……
ーガチャ、ガチャ……ー
(な、何コレ? 私いつの間に捕まって……?)
手足が鎖で繋がれた枷で拘束されていて、周りが明らかな地下牢である事に気が付いたのだった。
そんな彼女の目の前には見るからに貴族っぽい醜悪な中年男性と……
(な、なにアイツ……トマス?)
見慣れない黒い衣装を着たトマスを見つけたエルフィルは
「ちょっと、アンタ何してんのよ! 早く私を助けなさいっての!」
いつもの口調で彼に命令を飛ばす。しかし、彼は嫌そうに一瞥くれるのみ。
「ちょっと、あの馬鹿勇者はどこで何してんのよ! 早く探して連れて来なさいよ!」
トマスがアテにならないと見たエルフィルはヴィルを連れてくる様に指示する。しかし……
「お前、誰に口利いてんだよ。俺はトマスじゃねぇ、ユーマ・キリサキだ」
ユーマはエルフィルに凄んでみせる。しかし、当のエルフィルにはただの黒い衣装でイキるトマスとしか見えていない。
「はぁ? アンタ何言ってんの? つまんない事言ってないで……」
ーバシッ!ー
「きゃぅっ!」
エルフィルの態度に腹を立てたユーマは彼女を平手打ちにした。
「俺は新たな勇者ユーマ様だ。お前は自分の立場を弁えろよ!」
手足が拘束され抵抗出来ない自分に勝ち誇るユーマにエルフィルは睨み返すが
「気に入らねぇな! 何も出来ねぇそんなザマで生意気なんだよ!」
ーバシッ! ピシャアッ!ー
「うっ、ぐぅっ!」
反抗的な態度のエルフィルの頬を力任せにユーマは引っ叩く。
ーバンッ! バシッ!ー
「はっ! 少しは分かったかよ! 自分の立場ってヤツがよ!」
暴力に涙目になりながら痛みに耐えるエルフィルの姿にユーマは優越感と嗜虐心、自己肯定感に満たされていた。
自分に対し常に高圧的だったハイエルフの心が折れかけている。
これまで自分を散々見下してきたプライドの高いエルフが自分の足元で無様な姿で打ち拉がれている。
ーガチャガチャ……ー
「な、何を……!」
ユーマは唐突にエルフィルのレザーアーマーを脱がしに掛かってきた。
「いい機会だから、どっちが上か分からせてやるよ!」
留め具を外してレザーアーマーを取り祓い、彼女のスカートもめくり上げた彼の目的は明確だった。
「やめなさいよ! やだ、止めてっ!」
ーガチャガチャー
抵抗するエルフィルだが四肢が拘束されているのでユーマにされるがままでしか無かった。そんな時
ーパアアァァー
地下牢の一角が突然眩い光を放ち始めた。
「帝国皇帝ルートヴィヒ! それ以上の狼藉は私が許しません!」
光の中にはツインテールの少女のシルエットが見える。そして収まった光の中から現れたのは
「我が名は妖艶将軍リリス! 帝国の皇帝よ、お前がハイエルフに手を掛けるなど十年遅い! 大人しく……あれ?」
四魔将の一人、銀髪ツインテールのリリスだった。
しかし、暗闇に慣れたらしい彼女が見たのはエルフィルに襲い掛かっているユーマの姿だった。
「なんだ悪魔かよ。いいトコなんだから邪魔すんなよ!」
これからようやくと言ったところで邪魔されたユーマは心底うんざりした様子で
(絶対隷属!)
ーキイィィン!ー
考えるより先にリリスに向けてスキルを発動した。その時
【スキルレベルが上がりました】
ユーマの頭の中にメッセージが流れてきた。それはスキル対象人数の制限解除を告げるものだった。
そんな彼の前にはスキルで大人しくなったリリスが佇んでいる。
「お前の目的は何なんだよ。いいトコで邪魔しやがって」
「そのハイエルフの清らかな魂と永遠の命は魔王様復活の生け贄に丁度良いので、無闇に手を出されるのは困ります」
リリスはこの地下牢に乱入してきた目的をユーマに白状し始めた。
彼女にも目的があった様だが、楽しみを邪魔されたユーマからすればそんな事は知った事では無い。
「まぁ、いい。お前は自害しろ。面倒だ」
ユーマはそれだけ告げるとリリスに背を向け、再びエルフィルに近付いていく。そして
「やだ、止めて! 離しなさいよ!」
ーガチャガチャー
手足の鎖を鳴らしてエルフィルは抵抗するが、枷はビクともしない。
「お前も観念しろよ。助けなんか来ねぇんだからよ」
さっきの続きとばかりに拘束されているエルフィルを再び襲い始めた。
「お前じゃアリーナの代わりにはならねーが、遊ぶだけ遊んでやるよ!」
ーガバッ!ー
「いやっ! 助けて……ヴィル! 助けてっ!」
閉じようとしていた足を無理やり開かされたエルフィルがヴィルの名を思わず叫ぶと
「結局、お前もあいつかよ! でも、あいつがここに来る訳ねーんだよ! あいつはお前を見捨ててアリーナと逃げちまったんだからなぁ!」
歪んだ笑みを浮かべたユーマは、泣き叫ぶエルフィルに勝ち誇る。その時
ードゴッ!ー
「があっ!」
鈍い痛みがユーマの後頭部を襲った。そこで彼の意識は一旦途絶え、暗い闇の中へと沈んでいくのであった。




