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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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ささやかな最後の晩餐

 ゴロツキ共に襲われたヴィルとアリーナ達は白煙が落ち着いたと共に、その場から逃げ出していた。

 二人はその足で冒険者ギルドに向かい、自分達を襲ってきたゴロツキ共の事を説明した。

 その後、その場に居た冒険者達総出でゴロツキ共の捕縛が始められた。

 ヴィルとクロ達で倒したゴロツキ達は直ぐに捕まったが、ゴロツキのリーダーとアリーナが光の壁で阻んでいたゴロツキ達は既にその場から消えてしまっていた。

 そんな冒険者ギルドからの教会への帰り道、ヴィルはアリーナに

「今日は色々あったな……」

 少し疲れた様子を覗かせながら肩をすくめて話し掛ける。そんなヴィルにアリーナは少し緊張した様子で

「ヴィルさん、あの……こちらの指輪……私が受け取ってしまって……い、良いのですか?」

 自らの右薬指に嵌めてある指輪に左手を添えながら尋ねてきた。

「ああ、防御力が上がる指輪なんだから俺よりアリーナが付けた方が良い」

 アリーナが頬を赤く染めながら尋ねているのだが、ヴィルは彼女の真意には気付かず単純なパーティーとしての戦力補完の道具としか捉えていなかった。そんな彼の態度に

「そ、そうです……よね。お気遣いありがとうございます……」

 アリーナの返事は落胆した様ながっかりした様な力無いものになってしまった。

「明日、ドワーフの爺さんの店で剣を引き取ったらそのまま王国へ向かおう」


ーガチャー


 後ろのアリーナに語りかけながら教会の扉を開けるヴィルに

「くぉらぁ〜っ! この朴念仁がぁ!」


ーボゴッ!ー


「ぐへぇ!」

 教会にあるまじき鉄拳がヴィルの横っ面目掛けて跳んできた。鉄拳を受けた彼は見事に吹き飛ばされ、教会正面の通りをゴロゴロと転がっていく。

「いでででで……」

 ようやく回転が止まったヴィルにアリーナが駆け寄ろうとしたが

「あんな奴、捨て置け。アリーナ、早く入れ」

 中から出てきたクレアによって半ば強引に中へと連れられていき、クロ達もそのままついていった為かその場には殴られたヴィルがただ残されただけの結果となった。



「いでぇ……」

 殴られた頬を抑えながら教会に入ったヴィルを出迎えたのは

「おい! 少しは反省したか!」

 食堂で腕を組みながらヴィルを見据えてくるクレアの姿だった。近くには昨日の夜と同じ配置で夕食が並べられており、軽く昨日のデジャヴを感じられた。

 明らかにおこなクレアの様子に戦々恐々なヴィルが隣に座ると

「あの〜……俺なんか粗相やっちゃいましたかね……?」

 頭を掻きながらなるべくクレアを怒らせないようにヴィルが尋ねるが……

「お前、アリーナと一緒のところを襲われたそうじゃないか! 分かってるのか! うちのアリーナに何かあったらどうする!」

 ヴィルの胸ぐらを掴んで頭をユッサユッサするクレアに

「あ、あの……今日のはヴィルさんのせいじゃ……」

 アリーナが暴力を止めさせようと仲裁に入る。さらに

「それに……あの、こちらの指輪も下さいましたから……」

 アリーナがヴィルから受け取ったプロテクトリングをクレアに見せると

「お前はぁ〜! うちのアリーナに手を出したのかぁ! お前の噂は聞いてるぞ! だらしないお前が……」

 クレアはさらにヴィルの胸ぐらを掴んで頭を揺らしてきた。あまりの勢いで脳みそが撹拌される感覚にヴィルの意識が飛んでいく。



「あ……」

 ヴィルが意識を取り戻すとクレアは既に手を離し解放してくれていた。

「おい少年、すまなかったな。少しお前を誤解していた」

 朦朧とする意識の中、隣のクレアがヴィルに背中をバンバン叩きながら話し掛けてきた。ヴィルが訳が分からないまま、目の前に出された食事に手を付けようとする。

 今日の献立はチキンの入ったホワイトシチューだ。周りを見れば子供達も皆、美味しそうにシチューを頬張っている。

(ん……?)

 いつの間にか殴られた頬の痛みも腫れも引いていた。ヴィルがその事に気付いて反射的にアリーナを見ると……

「すみません。クレアさん、お話したら分かって頂けたみたいで……」

 なんだかよく分からないが、ヴィルの意識が飛んでいた間にアリーナがうまく説明してくれた上にヴィルに治癒魔法を掛けてくれていた様だ。

(なんだったんだ一体……)

 気を取り直したヴィルがホワイトシチューを食べ始めていると

「そういう訳だから、王国までの旅は私も一緒に行ってやるからな! 感謝しろ?」

 相変わらず背中をバシバシ叩きながらクレアが笑顔で話し掛けてきていた。

(は? 王国まで? 何言ってんだこの人……)

 何の事か分からないヴィルがクレアを怪訝そうな顔で見ていると

「腑に落ちない顔をするんじゃない! お前達が心配だからエスコートしてやろうって話だ! 喜べ少年!」

 ヴィルのあからさまに嫌そうな顔が面白くなかったらしい。彼女はまたヴィルの胸ぐらを掴むと頭をユサユサと揺らしてきた。

「う、うわ〜い。嬉しいな〜……」

 ヴィルが処世術の一環としてクレアの同行に社交辞令を返す。こうして、ヴィルは悩みの種が新たに増えたまま明日の旅立ちを迎えるのだった。

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