よくある風物詩
魔導具店から続く裏通りを歩いていたヴィル達が通りの角を曲がると
(あれは……?)
道を遮る様に数人の男達が立っているのが見えた。
「別の道から行こう」
ヴィルがアリーナに声を掛けて別の道から帰ろうと、来た道を引き返そうとすると
(なんだ……?)
後ろからも数人の男達がこちらに向かってきていた。彼等は見るからに冒険者といった風体だが、若干ゴロツキの様にも見える。
所謂、冒険者崩れと呼ばれる素行不良な者達だ。彼等は、ギルドには属しているもののペナルティを受けて真っ当な仕事からは外され、人気のない仕事で食いつないでいると聞く。
「へっへっへ……、小さい嬢ちゃんのくせに大金持ってるみてーじゃねぇか」
見るからに集団のリーダーらしい男が話し掛けてきた。
「アリーナ、後ろの奴等との間に光の壁は張れるか?」
ヴィルがアリーナに小声で確認すると彼女は小さく頷く。
「俺があいつら抑えてる間に教会まで走るんだ、良いな?」
「そんな……ヴィルさん一人でなんて……私も一緒に戦います」
人数差にアリーナは自分も戦うと言い出したが
「心配すんな。俺は剣聖の勇者様だぞ? 後、これ付けといてくれ」
ヴィルは笑って余裕をアピールして見せるとアリーナに例の指輪を手渡した。
「あの、これって……?」
いきなり手渡された指輪を見たアリーナは戸惑いながらヴィルに真意を尋ねるが
「はあぁっ!」
ードガッ! バギィッ!ー
「ぐはっ!」
「げへえっ!」
一気に飛び出したヴィルはゴロツキ二人をあっという間に殴り倒す。
「お前らも手伝え!」
「ワンッ!」
「キイーッ!」
ヴィルの指示にクロ達二匹も続いて残りのゴロツキ達に襲い掛かっていく。
「ホーリーウォール!」
ーパアアァァ!ー
次に手早く魔法の詠唱を済ませたアリーナが後方のゴロツキ達との間に光の壁を展開した。
ーガッガツッ!ー
「くそっ! なんだコイツ!」
「通れねぇぞ! 開けやがれ!」
「こいつ、破れねぇぞ!」
後ろから襲い掛かろうとしていたゴロツキ達はこれで戦力外になってしまった。
「くそっ、馬鹿どもめ!」
瞬く間に戦力の大半を無力化されてしまったゴロツキのリーダーは悪態を付いている。
ーガブゥッ!ー
「うぎゃあぁっ! う、腕がぁ!」
そうこうしている間にもクロに噛みつかれたゴロツキは悲鳴を上げてのたうち回り
ーズババッ!ー
「んぎゃあっ!」
モン吉に顔面を引っ掻かれたゴロツキは顔面を押さえて悶絶していた。
「なんだコイツら!」
ゴロツキのリーダーはあっという間に独りにされてしまい、ショートソードを抜いてはいるもののすっかり及び腰になっている。
「残るはお前だけだ」
ヴィルがそう言ってゴロツキのリーダーに素手で殴り掛かったその時
「これならどうだ!」
ーボン! シュウウウゥゥゥ……ー
ゴロツキのリーダーが何かを地面に投げつけると、裏路地一面があっという間に白煙に覆われてしまった。
「くそ……」
視界が遮られてはただの人間に過ぎないヴィルには何も出来ない。風魔法で吹き飛ばすにも、残念ながらヴィルは魔法の微調整などは得意では無い。
「アリーナ! 無事か!」
ヴィルは嫌な雰囲気にアリーナに確認するが
「は、はい! 私……どうすれば良いですか?」
白煙のせいで予定が狂ってしまったからかアリーナが行動指針を確認してきた。
「今、そっちに戻る! 光の壁を出し続けてくれ!」
視界が利かない状態で移動させるのは危険と判断したヴィルはアリーナに現状維持の指示を飛ばしながら彼女の位置に戻る。
「いで! いでででで!」
「あだだだだ!」
ヴィルが戻る最中、相変わらずクロとモン吉はゴロツキを押さえていた。
「程々にしといてやれよ?」
ヴィルは二匹に声を掛けながら最初に倒した二人の姿を探す。二人ともそう簡単には起き上がれないはずだから、その辺に転がっていていいのだが……その時
「このガキ! さっさと金をよこせ!」
「捕まえろ! 逃がすな!」
ーバシィ! バシィン!ー
「や、止めて下さい!」
アリーナの悲鳴と男達の争う音と魔法の発動音が聞こえてきた。
白い煙の向こうにアリーナが展開している光の壁と、彼女の魔法と違う緑色の光も見える。
「アリーナ! 大丈夫か!」
ーガシッ! グイッ!ー
「ぬおっ!」
「は、離せ!」
現場に駆け付けたヴィルはアリーナにナイフを振り下ろそうとマジックシールドに防がれている最中のゴロツキ二人を
ードガッ! ズシャアッ!ー
「んがぁっ!」
「ぐへっ!」
アリーナから力任せに引き剥がし二人を裏通りの壁に叩き付けた。
「良かった……大丈夫だったか?」
ゴロツキ二人に襲われていたがアリーナに怪我は無かった。ドワーフがくれた例のプロテクトリングの力のお陰だろう。
「クェ〜……」
彼女の足元に寄り添うペン太の姿が見えた。
「お前……、少しはアリーナ手伝ってやれよ」
人手が足りないヴィルとしてはペン太にも役に立って欲しいのが本音だったが
「まぁ、寒いもんな。アリーナに付いててくれてありがとな」
ヴィルはしゃがみ込むとペン太の頭を優しく撫でた。そんなヴィルからの労いに
「クェッ!」
ードスッ!ー
「あたっ!」
ペン太は触るなと言わんばかりにヴィルの手をくちばしで突っつくのだった。




