表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/56

枕投げ

「行き遅れのエルフさんがやってくれるじゃない」

 頭上に枕を魔力でフワフワと浮かべさせたミリジアは小さく詠唱を済ませると


ードガガガッ!ー


 魔力で操った枕を三連射でエルフィルに叩き付けた。

「俊敏なエルフ様に行き遅れの眼鏡お姉様の攻撃が当たるわけ無いでしょ」

 余裕綽々でかわそうとしたエルフィルだったが、フカフカのベッドが足場では思う様に動けず


ードガッ!ー


「んぎゃ!」

 初弾を足にぶつけられバランスを崩したところで


ードガッドガッ!ー


「いだっ! あだっ!」

 次弾の追撃が加えられ、下着姿のエルフィルはベッドの下に叩き落された。


ードッターン!ー


「や、やったわね〜!」

 ベッドの下からヨロヨロと這い上がってきたエルフィルはその辺に落ちていた枕を掴むと

「どぉりゃあああっ!」


ーブンブン!ー


 両手に其々掴んでいた枕をアンダースロー気味にミリジアに投げつけた。


ーバシンバシン!ー


 連続で投げ付けられた二つの枕はミリジアの魔力障壁によって難なく防がれていた。

「フフン、私の防壁を舐めて貰っちゃ困るのよ」

 得意気に人差し指を立てて勝ち誇るミリジアだったが、残り一つの枕の行方についてはすっかり見落としていた。

「ほあたぁっ!」

 攻撃を防いだミリジアが安堵した隙を見逃さずエルフィルは枕をミリジアの頭上に投げ付けた。

 枕は防壁を飛び越え天井に飛んでいくかに見えた。明後日の方向に飛んでいく枕に呆れたミリジアが視線を外したその時

「今よ、シルフ!」

 エルフィルの声に呼応して姿を現したシルフは枕を掴むと、直ちに急降下に入りミリジアの頭上ギリギリまで接近して枕を手放す。

 その様は急降下爆撃の様な綺麗な一連動作だった。


ーボフッ!ー


「あたっ!」

 不意打ち気味に頭上からの枕の一撃を食らったミリジアは思いの外ダメージが大きかった。

「やってくれたわね〜! この豊島エルフ!」

 実際の物理ダメージは大した事は無かったが、化かし合いで手玉に取られた事に精神的ダメージを受けていた。

 それも、学校も出ていない様な森の民であるエルフ風情に。王国でもトップクラスの名門出のミリジアにとって、頭を使った戦いで後れを取る事は屈辱であり許せなかった。

 しかし、ここまでうるさく騒いでしまえば周りから苦情が来ないはずも無く……


ーコンコンー


「すみません。少し静かにして貰えませんか?」

 部屋の扉を叩いてきたのはダークエルフのシルヴェリスだった。今日の宿屋にはヴィル達勇者パーティーだけでは無く、ハーマン達新人パーティーも宿屋に泊まっていたのだ。


ーガチャー


「随分騒々しいですけど……何かあったんですか?」

 何かあったのかと聞かれても騒ぎの張本人達はパーテーションの向こうのベッドスペースである。

 ヴィルはその方向を指差して目線で誘導しつつ、自身は首を振って無関係をアピールする。

 なんとなくで状況を察したらしいシルヴェリスはパーテーションの所まで歩いていくと

「失礼します。シルヴェリスです。ちょっとお邪魔します……よろしいですか?」

 彼女は特に臆する事なくパーテーションの向こうに声を掛け、そのまま中に乗り込んでいくのであった。



 あれから小一時間、シルヴェリスがエルフィルとミリジアの二人にお説教を終えたところでヴィル達の居る共用スペースへと戻ってきた。

「ヴィルさん、少しお時間よろしいでしょうか?」

 今度はヴィルに同行を求めてきた。勇者パーティーの責任者としての監督不行き届きを責めれるものと、ヴィルは半ば諦めてシルヴェリスに言われるがままに宿屋の大部屋を後にするのだった。



シルヴェリスに連れられてヴィルがやってきたのは宿屋の裏路地にある人気のない物陰、彼女は辺りを見回すと


ーパアアァァー


 手から光を放ち辺りにうっすらと防壁の様なモノを展開し

「これで、辺りに話し声は聞こえないはず……」

 シルヴェリスはヴィルに向き直ると

「お久しぶりですね。牧島玲二さん」

 いきなり純日本人な名前でヴィルを呼び始めた。予想外の展開にヴィルが戸惑っていると

「この姿では分からないかもしれませんが……」


ーバサァ……ー


 シルヴェリスは自身のツインテールを解くと、そのまま後ろに下ろした。そんな彼女に見覚えを感じたヴィルは

「ま、まさかあの時の女神……様?」

 自身がこの異世界に転生する際、行き先を面談した一人の女神の姿を思い出していた。

 褐色のシルヴェリスはそんな彼の態度に微笑むと

「姿が違いますが、私にも事情がありまして……ヴィルさん、貴方にお伝えしなければならない事が出来てしまいました。これは貴方だけでは無くこの世界の行く末にも関わってくる大事な事です」

 少し申し訳なさそうに事情を語り始める。シルヴェリスが話すには、異世界の住人に未来の出来事を教えるのは世界に歪みを生じさせてしまう可能性もある。

 それでも、ヴィルに何も知らせないで歴史を歩ませるよりはリスクが小さいと判断したのだという。

 そんなシルヴェリスがヴィルに伝えたい未来の出来事というのは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ヴィルの周りの女性陣強すぎる笑。高度な枕投げも笑いました。シルヴェリスの伝える未来の出来事ってなんでしょう? 続きが気になりますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ