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街道での遭遇

 ヴィルの指示によりトマスに持たせていた予備の水入り革袋をそれぞれパーティーメンバー各自が持つ事に。

 これで五キロ程度はトマスの軽量化になるだろうが……。

「私達は敵が来たらすぐに対応しなきゃなんないのよ〜! それなのに……」

 最前面で敵と遭遇するかもしれないエルフィルは顔を膨らませて不満を隠すつもりも無い。

「まぁまぁ、お前の分は俺がもっておくから。さぁ行くぞ!」

 ヴィルはエルフィルを宥めると村への旅路を再開させるのだった。そんなヴィルを見るパーティーメンバーの視線は……

「ヴィルさん、なんか変わりましたよね……。人当たりが柔らかくなったみたいな……」

 神官の錫杖を手に、アリーナがミリジアに話し掛ける。

「そうよね〜。風邪でもひいたんじゃない? それか頭でも打ったとか?」

 ミリジアも彼の変化には気付いている様だ。そんな彼女達の視線に気付く事など無くヴィルは一人胃痛に耐えていた。

(あっぶね〜! 単なる移動だけで音をあげるとか、トマスのやつどんだけなんだよ!)

 これから魔王軍との一戦が控えているというのに、余計な気苦労は勘弁して貰いたい。

 誰にも話せない悩みを抱えながらヴィルはエルフィルに続いてミノさんと並んで街道を歩き始めるのだった。



 街道と言えば、通りすがりのお姫様が盗賊等に襲われるのが鉄板だ。

 しかし、まさか魔王軍に襲われてる村との一本道にそんな場所は居ないだろう……と、ヴィルが意味もなくトラブルフラグを立てていると……


ーガラガラガラガラー


 街道の向こうから砂煙を上げて迫ってくる一台の馬車が見えてきた。

(おいおい、まさかな……)

 四頭立ての豪奢な馬車、はヴィル達のところまでやってくると

「旅の方ですね? この先は危険です。私達は魔物に追われてここまで逃げてきたのです!」

 馬車に進路を開けるために路肩に寄ったヴィル達に馬車から声が掛けられた。その透き通るような透明感のある声の主は……

「ふ、フィオレット王女! どうして貴女がここに……?」

 馬車の小窓から顔を覗かせた声の主を見たミリジア、そしてアリーナの二人が反射的に頭を下げる。

 二人に釣られて他四人も頭を下げると

「あまり時間は無いのです。貴方方も早くお逃げ下さい」

 ヴィル達にも退避を勧めてくるフィオレット王女にヴィルは

「私達はその魔物達の討伐に来たのです、フィオレット王女様」

 ヴィルは一歩前に出てそう話すと深々と頭を下げる。

「まぁ……! 銀髪に赤いバンダナ……貴方はもしかしてあの……!」

「お姫様! 早く逃げないと魔物来たよ! ほら急いで!」

 フィオレット王女との知り合うフラグが立ったかと思いきや、エルフィルが見事にフラグ粉砕してきた。


ードドドドドドー


 街道の向こうを見ると図体のデカい人型の……トロールかサイクロプス辺りが徒党を組んで向かってきているのが見える。

「俺とミノさんで街道上で迎え討つ! エルフィルは漏れた敵を足止め! ミリジアは魔法で援護! アリーナはいつでも怪我人を看れる様に待機だ!」

 ヴィルはそう言うと二十メートル程前進した当りで足を止め背負っていた長剣を正眼に構える。

「ヴィル、お前 突っ込まないのか?」

 巨大な戦斧を構えたミノさんがヴィルの戦法に疑問を持ったらしい。いつもの猪突猛進勇者のヴィルベルヴィントとは違うのだろう。

「いや、ここで良い。連係が難しい程離れていい場合じゃない」

 ミノさんに不適な笑みを浮かべながら答えるヴィルに対し

「お前 気を使える様 なったか?」

 ヴィルが突っ込まないのは何をしでかすか分からないトマスを危惧しての判断なのだが……

「少しは成長したんだよ……トルネードブレード!」


ーブアアアアッ!ー


 ヴィルが長剣を振るう事で生み出した竜巻は向かってくる巨人の集団に向かっていく。そして……



ーゴオオオオオオッ!ー


「ガアアアアッ!」

「ウオアアアアッ!」

「ギャアアアアアッ!」

 竜巻はそのまま敵集団の中へと進んでいき、少なくない数の巨人達を吹き飛ばしていった。向かってくる敵の勢いを削ぐ事に成功したヴィルは

「トマス! お前は後列のミリジア、アリーナ二人の護衛だ! 詠唱に入ったら二人に敵を近寄らせない様にしろ!」

 一人指示を出せていなかったトマスに指示を出す。

 後列の魔法使いの護衛を命じておけば余程の事が無ければ敵と直接相対しないだろう……。

 と、いうトマスが経験値を得る事によってヴィルに訪れる破滅を回避する為の、自己都合に満ちた超個人的な判断だった。

(俺もちゃんと努力はしてたんだな……)

 思考が転生者となったヴィルは、魔物との戦闘は初めてだったが、身体はきちんと動いてくれた。

 流石は剣聖と呼ばれる動きが出来る身体である。その辺りは傍若無人であってもきちんと剣技の向上に努めてきた元のヴィルに感謝である。

「ウオオオオオッ!」

「シ、シネエエエエッ!」


ードドドドドッ!ー


 魔物の集団の中から、竜巻で手傷を負ったがまだこちらに向かってくるトロールやサイクロプスの姿が見えた。

「シャルゲシュベルト!」


ーブウウウンー


 次にヴィルは袈裟斬りに振るった刃から真空波を飛ばして向かってくるトロールの一匹の首を


ースパアアアッ!ー


「グア……?」

 いとも簡単に跳ね飛ばしたのだった。

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