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朝御飯

 ヴィルの背中を押しながらシルヴェリスがテーブルに戻ると、新人パーティーメンバー含めたエルフィルとトマスが起きてきていた。

「それじゃ、朝御飯頼んできますね?」

 ヴィル達が戻ると同時にアリーナが朝御飯の料理を取りにギルドの受け渡し口に向かう。そんな彼女の後ろ姿を目で追っていたシルヴェリスは

「わ、私もお手伝いに行ってきますね」

 アリーナの手伝いの為に彼女も受け渡し口に向かっていく。

「ねぇ、あのダークエルフなんだけどさ……」

 席に戻ったヴィルにエルフィルが神妙な顔をしてヒソヒソ声で話し掛けてきた。

「今更言おうかどうか迷ってたんだけどさ……似てるのよ。四魔将の最後の一人に」

「似てるって言われてもな。そいつの顔知ってるのお前だけだから俺には分からんし……」

 ヴィルは話でしか聞いていない四魔将リリスと、料理の受け取り口でアリーナと談笑しているシルヴェリスが同一人物とは判断出来なかった。

「今のところは何かしようって雰囲気でも無いし、様子見で良いんじゃないか?」

 仮にも冒険者としてギルドに認められた以上、シルヴェリスを四魔将の疑いだけで叩っ斬る訳にはいかない。

 ヴィルとしては、シルヴェリスが何か四魔将らしい事をしてからでも対処は遅く無いだろうと考えている様だ。

「何かあってからじゃ遅いでしょ。大体……」

 エルフィルがそこまで言ったところで

「お待たせしました」

「今日の朝御飯はポトフと固パンみたいですよ。人数多いからってお鍋ごと渡されちゃいました」

 固パンが積まれたバスケットを手にしたアリーナとポトフの鍋を持って若干辛そうなシルヴェリスが戻ってきた。

 バスケットと鍋をテーブルの上に置いた二人は食器を取りに再び受け取り口に戻っていく。

「魔王軍の奴なんて何考えてるか分からないのよ。そんな奴野放しにしてたら危ないでしょ!」

 シルヴェリス達が立ち去った辺りでエルフィルが再びヒソヒソ声で話し掛けてきた。

 しかし、現状ではヴィルに出来る事は何も無い。彼女は表向きにはただの新人冒険者のダークエルフでしかないのだ。

「まぁ、怪しくなったら問い詰めるで良いんじゃないか? 今日のところはトマスの面倒見てくれるってんだからさ」

 何をどうするのかは知らないが、トマスが少しでも使える子になってくれるなら、ヴィルにとってもこれほどありがたい話は無い。

 それにダークエルフとは言っても初対面の年上の女の子相手ならトマスも素直になってくれるかもしれない。

「皆さん、お待たせしました」

 ポトフ用の取り皿と木製スプーンを持ってきたアリーナとシルヴェリスが全員にそれぞれ配っていく。

「アリーナさんもお席に着いて下さい。後は私がやりますから」

 シルヴェリスはそう言ってアリーナを席に着かせると、自身はポトフ鍋に陣取って一人一人の皿にポトフを均等に配り始めた。そんな彼女の手際の良さに

「シルヴェリスさん、お上手なんですね……」

 アリーナが感嘆の声を上げる。まるで一流のメイドの様に無駄なく給仕を終えたシルヴェリスは

「大した事ありませんよ。昔取った杵柄と言いますか……」

 褒められ慣れていないのか照れくさそうに頭を掻いている。

「貴女、メイドしてたの? でも妙ね、ダークエルフを雇う人間なんか居るのかしら? 貴女の雇い主はどこの人? 王国? 帝国?」

 シルヴェリスに疑いの目を向けていたエルフィルはここぞとばかりにツッコんで来た。

「う、あ……え〜……」

 そのあまりの猛攻にシルヴェリスは困り果て目が泳いでしまっていた。

「エルフィルさん、シルヴェリスさん困ってらっしゃいますよ? 話しにくい事なのかもしれないじゃないですか」

 そんな彼女へ助け舟を出してきたのはアリーナだった。控えめな彼女が勝ち気なエルフィルに反対意見をハッキリ口に出してくるのは珍しい。

「なによ、気になったから聞いただけだってのに。大体、ダークエルフをメイドに雇うもの好きなんか居るのかしら?」

 まるでいじめっ子認定されたかの様なエルフィルは頬を膨らませてプイッとそっぽを向いてしまった。

「で、貴女はトマスに何が教えられるワケ? 元々使えない荷物持ちなんかどう鍛えようって言うのかしら?」

 しかし、ちょっとやそっとではめげないエルフィルはシルヴェリスにトマスへの教育方針を尋ねてきた。

「……そうですね。まずはトマスさんにご自身の実力を再確認して頂く事から始めようと思っています」

 そんなシルヴェリスをトマスはポトフを食べながら不審そうな目を向けている。

「トマスさんはテイマーとの事ですが……あまり懐かれている様に見えませんね」

 シルヴェリスはクロ達三匹の魔物達の仕草を見ながら彼等の現状を推し量っている。

「トマスさん、その子達のお世話はされていますか?」

 シルヴェリスが尋ねるまでも無くトマスが世話していないのは一目瞭然であり、彼等の朝食の世話はアリーナとシルヴェリスの二人で済ませたばかりなのだ。

「僕だってそいつらには餌くらい出してるさ。出先じゃ僕がやるしかないからな」

 トマスはこれまでの冒険での出来事を思い出しながら話している。確かに他のメンバーが本業をこなしている間はトマスがやらなければならない。だが……

「トマスさん? 今の態度、その子達の前で見せていませんか?」

 シルヴェリスは若干冷ややかな目でトマスに確認を始める。

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