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ダークエルフ

「ヴィルさん、おはようございます」

「……おはようございまーす」

 ヴィルがテーブルに座ってうつらうつらとしていると、起きてきたアリーナとシルヴェリスの二人が声を掛けてきた。

「ああ、おはよう。シルヴェリスさん。昨日はありがとう。これ、途中まで片付けておいたんだが……」

 ヴィルの視線の先には一箇所に纏められた昨日の夜食と食器があった。

「あ〜、すみません。ついうっかり!」

 シルヴェリスは自分の道具袋に片っ端から食器やら食材やら放り込んでいく。

 第三者のヴィルの目から見ても道具袋の中がゴチャゴチャになっていそうに思えるのだが……

「これでヨシ! それじゃ私は受付に行ってきますね」

 シルヴェリスは慌ただしくテーブルの上を片付けると道具袋を背負って、営業が始まったばかりの受付へと向かっていった。

「おはようございます。皆さん、おトイレは大丈夫ですか?」

 一方のアリーナは三匹の魔物達に様子を尋ねている。

「クーン……」

「キィ……」

「クェ……」

 三匹とも今はいい様で特に外に出たがる素振りは無い。ホッとして席に着くアリーナにヴィルが

「厚意はありがたいが、少しずつトマスにやらせる様にしていかないとな」

「そ、そうでしたね。……ごめんなさい」

 話し掛けるとアリーナは少し照れた表情を見せる。

「謝る事は無いさ。少しずつトマスにやらせる様にしていこう」

 ヴィルは思った以上にアリーナが慣れてしまうほど彼女に任せきりにしていた事を改めて自覚するのだった。その時

「ヴィルさん! すみません! ちょっとお願いしまーす!」

 受付に行ったシルヴェリスからヘルプが飛んできた。

「悪ぃ、ちょっと見てくる」

 ヴィルはアリーナに一言残して受付に向かう。すると

「ヴィルさん、私パーティー加入希望してますよね? 仮メンバーだって説明して下さ〜い!」

 不法侵入者だけあってシルヴェリスは受付嬢から疑われてしまった様だ。

「すまない。シルヴェリスさんはうちのパーティーに入れるかどうか保留してるトコなんだ。冒険者登録してレベルを見てからと思ってさ」

 ヴィルが説明すると受付嬢はジト目で疑った様子のまま

「ヴィルさん? うちは品行方正が求められている社会的に意義のある組織なんです。勇者である貴方もきちんと自覚を持ってですね?」

 ヴィルの女癖の悪さは流石に有名になり過ぎていて受付嬢にも知れ渡っている。

 今のヴィルにとっては濡れ衣でしかないのだが……説明して解って貰える話では無いので諦めるしかない。

「そういう訳ですのでシルヴェリスさんも勇者パーティーだからって軽々しく付いて行っては駄目ですからね? 冒険者証はこちらになります」


ーゴトッー


 受付嬢はそう言うとブレスレットを机の上に置いた。一方のシルヴェリスはブレスレットとヴィルを交互に見返している。

「それを手首に付けるんだ。それで宝石の部分を上にむけてボタンを押すとステータスが出る様になってるんだ」

 ヴィルの説明通りにブレスレットを装備するシルヴェリスは

「ここはそういう仕組みなんですね。私、こういうのは初めてで……」


ーカチッー


 話しながらボタンを押すと、ホログラム状のステータス画面が受付の机の上に映し出された。だが……


【フ▼ィ■ナ】

レベル ∞

職業 ▶◆◎

技能 〇✕

経験値 530000


「あ、あわわわわ……!」

 どういう訳か表示が完全にバグり散らかしていた。その表示に慌てたシルヴェリスは


ーカチッー


 ホログラムを隠すようにボタンを押して消してしまうのだった。

「なぁ、今のって……」

 ヴィルが話し掛けるとシルヴェリスは

「え、あ……はい。不具合ですよね! 受付さん、これ不具合です!」

 シルヴェリスはブレスレットを外し受付嬢に渡すが

「それ……新品ですしテストもしたんですけどね……」

 受付嬢はブレスレットを手にすると自分の腕につけてボタンを押したりして動作確認を始める。

「あの、何か特殊な装備品とか身につけてたりされてます? 稀にあるんですよ。ブレスレットと競合しちゃうみたいなの」

 受付嬢はシルヴェリスに原因があるのではないかと疑っている様だ。すると

「じゃあ、外してみますね」

 シルヴェリスは額に付けていたサークレットを取り外し、後は自分の手でそれらしい物が無いか全身を確認していく。

「じゃあ……もう一回付けてみます」


ーパアァ……ー


 シルヴェリスが再びブレスレットを手に取った時、一瞬だけ彼女の手が光った様に見えた。

 ヴィルにはその光がまるで聖職者が使う神聖な光に感じられた。


ーカチッー


【シルヴェリス】

レベル 50

職業 スカウト

技能 精霊魔法

経験値 0


 彼女が映し出したホログラムにはシルヴェリスのステータスがしっかり表示されている。

「す、すみません。これが何か駄目だったみたいですね〜。ははは……」

 何かを取り繕う様にするシルヴェリスにヴィルは何となく疑いの目を向ける。

「……シルヴェリス……さん? 聞きたいんだが……」

 ヴィルがシルヴェリスに質問しようとしたのだが

「いつまでグダグダやってんだよ。こっちは仕事終わらせてようやく帰ってきたんだよ!」

 すぐ後ろに仕事を終わらせてきたらしいベテラン冒険者が並んでいた。彼は不機嫌そうにヴィルとシルヴェリスを見下ろしている。

「あ、すみませんすみません! 今どきますから……!」

 シルヴェリスはそう言うと、ヴィルの背中を押しながら受付から離れる。

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