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新人冒険者達

「とにかく他の連中が心配だ。奥へ急ごう……行けるか?」

 ヴィルはエルフィルに付き添われながら立ち上がったベルナデッタに確認する。

「は、はい! 私は大丈夫です!」

 歩くのに問題は無さそうなベルナデッタを見たヴィルは

「アリーナ、彼女の面倒を頼む。出来れば神官の立ち回り方も教えてやってくれ」

 彼女と同じ神官でヒーラーでもあるアリーナに指示を出す。

「お、お任せ下さい!」

 彼女はヴィルの指示に緊張した面持ちで返事をする。

「んじゃ、行きましょうか。相手はゴブリンだけど結構な手練かもしれないから慎重にね」

 パーティーの先頭に立つエルフィルが片目でウインクをしながらベルナデッタに声を掛ける。

 こうして四人はお互いに軽く自己紹介をしながらゴブリンの洞窟を奥に向かって歩き始めるのだった。

 ベルナデッタはまだまだ駆け出しの神官であるらしく、ヒールもちょっとした傷を治す事くらいしか出来ないらしい。

 それでも声を掛けてくれた皆の為に頑張りたいと熱心に語っていた。少々癖のある短めの金髪が特徴の可愛らしい健気な女の子である。

 救助が間に合って本当に良かったと、ヴィルが心の中で安堵していると

「グルルルル……」

 アリーナの側にいるクロが唸り声を上げ始めた。

 次の瞬間にはエルフィルが手にしていた松明を通路の先に投げ込んだ後にすぐさま弓に矢を番え始め


ーピュン!ー


「ギャアッ!」

 通路の先からゴブリンの叫び声と弓矢の勢いで転ばされる音が聞こえてきた。

「ゴブリン二匹! 左はやるから右をお願い!」

 一匹を仕留めたエルフィルは間髪入れずにヴィルに指示を出してきた。

「任せろ!」

 ヴィルは松明を左手に持ちながら右手にショートソードを構えつつ通路の奥へ突進する。

すると、ゴブリン二匹と地面に倒れている冒険者一人に彼を運ぼうとしている冒険者二人が松明の明かりに浮かび上がった。


ードスッ!ー


「ギャフッ!」

 向かって左側のゴブリンはエルフィルが放った矢によって心臓のある胸を貫通され膝から崩れ落ちていった。

 もう片方のゴブリンは接近するヴィルに気付いて短剣を振り始めたが


ーズシャアアアァァッ!ー


「ギャッ!」

 振り回した腕ごと脳天から斬り裂かれていった。

「お前等、新人か? 怪我は無いか……」

 ゴブリンを片付けたヴィルがそこまで言いかけた時に

「この野郎! ここは僕が相手だ!」

「ギャアッ!」

 通路の更に奥からトマスの声とゴブリンの悲鳴が聞こえてきた。

(なん……だと……?)

 その状況にヴィルは一瞬で背筋が凍り付く。トマスは既に経験値が65534溜まっており何かをすればレベルアップしてしまうかもしれない現状だ。そしてレベルアップ後に習得するはずの全種族絶対隷属。

 これを今、彼に取得させる訳にはいかない。なぜなら、まず間違いなくそのスキルの矛先が魔王軍では無くヴィル達パーティーメンバーに向かうからだ。

 唯一聖女のアリーナだけはお目溢しされるかもしれないが……ヴィルとエルフィル、魔術師のミリジアは確定と見て良い。

「ぬおおおおっ!」

 ヴィルは力任せに松明を通路の奥に投げ込みながら駆け始めた。

 彼の進む先には松明に照らされるトマスと今にも彼がトドメを刺しそうなゴブリンの横たわる姿が浮かび上がった。

「やらせるかっ!」


ーブゥン!ー


 駆けながらヴィルはショートソードを横たわるゴブリン目掛けてブン投げた。


ードスッ!ー


「ギャッ!」

 ヴィルが投げたショートソードはゴブリンの頭部にザックリと突き刺さった。と、同時にトマスが振り上げていたショートソードもゴブリンに振り下ろされ

「たあっ!」


ーザクッ!ー


 ゴブリンの喉を斬り裂いていた。しかし、トマスの近くに居たゴブリンはそれだけでは無かった。

 次々と松明の明かりに浮かび上がるゴブリンに対し、ヴィルは駆けながら拾った小石を頭から解いたバンダナで投石器の様にしてゴブリンに向けて投げ付けた。


ービュン!ー


「ウギャッ゙!」

 ゴブリンの顔面に命中した小石は彼の勢いと戦意を削ぐ事に成功した。また、別のゴブリンに対しては

「ぬおおおおっ!」


ードゴオッ!ー


「ギャフッ!」

 駆けてきた運動エネルギーを上乗せした前蹴りをゴブリンにそのまま叩き込んだ。


ーゴロゴロゴロ……グシャッ!ー


「トマス、てめぇ勝手な事ばっかしやがって!」

 ヴィルが蹴り飛ばしたゴブリンはゴロゴロと転がり岩壁に激突して動かなくなった。

 ギリギリでピンチを切り抜けたヴィルはトマスに怒鳴らずにはいられなかった。しかし、彼がトマスに注意を向けたその瞬間

「ウキャアーッ!」

 ヴィルの死角から一匹のゴブリンが彼の背中に飛び付いてきた。


ーガシッ!ー


 ゴブリンはヴィルの背中に組み付いて背中から斬りつけようとした様だが

「話の途中に……」


ーガシイッ!ー


 背中に取り付いたゴブリンの両腕を掴んだヴィルは、そのまま両腕を地面に振り下ろした。

「邪魔すんじゃねぇ!」


ーバキイッ!ー


「ギャフッ!」

 頭から地面に叩きつけられたゴブリンはそのまま動かなくなった。

 三匹のゴブリンを無力化したヴィルはようやく辺りの広さとゴブリンの数に気が付く事が出来た。

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