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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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蒸発

 一晩中、王都を探し回っていたヴィルだったが、アリーナの行方を見失って翌朝を迎えていた。

「はぁ……はぁ……」

 勇者として鍛えられたフィジカルも行方知れずとなった者を探し出すのにそれほど役に立つものでは無かった。

「少年、人が簡単に消えてなくなる事は無い。ましてや黒マントの男などありふれた人間じゃない」

 息を切らせて街中を探すヴィルを元気付けているのは、途中で合流したクレアだ。彼女は行き合う街の住人に片っ端から声を掛けてアリーナを攫った黒マントを尋ね聞いて回っていた。

「ク〜ン……」

 最初こそアリーナの匂いを追えていたグロだったが、雑多な人間が行き交う王都で訓練を受けた訳でもないヘルハウンドの彼がアリーナの行方を突き止める事は出来ず、匂いを途中で見失ってしまっていた。

 責任を感じているのかクロは尻尾にも覇気が無くなり申し訳無さそうに項垂れながらヴィル達と共に歩いていた。

 当て所なくヴィル達が歩いているのは王都でも有数の治安の悪さを誇るスラム街となった旧市街地だった。

 三階建ての標準的な王都のボロボロになった集合住宅が通りの奥までずっと続いている。

「身を隠すなら……この辺りに居てもおかしくは無いんだろうが……」

 アリーナを連れ去ったのは黒マントを羽織った帝国の関係者だ。外国人が姿を隠すならスラム街はうってつけだろうが……流石に当て所無く探すのに王都のスラム街はあまりに広すぎた。

「何か気になる事があったら言ってくれ。手がかりなら何でも欲しいんだ」

 ヴィルは一緒に歩いているクロとモン吉に声を掛ける。気がついたらペン太の姿は見えなくなっていたが、彼が地中をフラフラするのはそこまで珍しい話では無くなったので、ヴィルもあまり気に留めないようになっていた。

「少年、どうする? 王国に捜索願頼んでみるか? 世界を救った勇者様の一大事だ。無下にはされんだろう」

 スラムの住民から聞き込みを終えてヴィルのところに戻ってきたクレアは捜索が芳しくなかったのか、王国に行方不明者として捜索願を出す方法を提案してきた。

「……そうするしかないか」

 一晩中王都を駆け回っても手がかり一つ得られないのだ。このまま闇雲に探し続けるより国家機構に頼った方が良いのかもしれない。

「分かりました。一回りスラム街を回ってみて……それから王城に行きましょう」

 万策尽きたヴィルが已む無く王国に頼る事を決めたその時


ーガラガラガラガラー


 一台の荷馬車がスラム街の通りを無造作に駆け抜けていった。

「あれは……霊柩馬車だな。誰か街の住民に不幸があったのだろう。世知辛い世の中だ」

 スラム街とは言っても死人を放置する訳にもいかず、防菌防疫の観点からも死んだらそのままという訳にはいかない。

 その辺りは申告さえあれば国が無縁塚に遺体を埋葬するシステムが整備されている。

 よくあるRPGの様にパーティーの生き残りで死体を棺ごと連れ回すリアルはここには無い。

 件の馬車が止まったのは見るからに空き家な三階建ての元宿屋の様な建物の前だった。

 アリーナを探してい街を隈無く見ているヴィル達が馬車のそばを通り過ぎようとした時

「よ〜し、慎重に運び出すぞ!」

「おう、せ〜の!」

「なんだ、誰か外に居るのか?」

 数人の男達が棺を運び出そうとする声が建物の中から聞こえてきた。他に人気は無く誰かが立ち会っている様子も無い。身寄りの無い人間が孤独死でもしたのだろうか……?

「人様の不幸をジロジロ見るもんじゃ無いよな……」

 ヴィルがなんとなく霊柩馬車や男達から目を逸らしていると

「こうして会ったのも何かの縁だ。迷える羊さんの魂の救済を祈ってやらねば」

 腐っても修道女なクレアは運び出されようとしている棺に興味を示した。すると

「よ〜し、ゆっくり! ゆっくりだ!」

「おうよ!」

「手を挟むなよ?」

 建物から棺を運び出した男達が、馬車の荷台にそのまま積み込もうとし始めた。

「すまない。私は旅の者なんだが……そちらの方の魂の安息を祈らせてはくれないか?」

 クレアが珍しくやや控えめな態度で男達に魂の鎮魂を申し出ると

「んだぁ、見ねぇ顔だな」

「宗教なら間に合ってんだ。邪魔だからあっち行け」

「コイツは身寄りの無い婆さんだ。今更祈ってもらわなくても結構だ」

 男達は作業を急いでいるのか取り付く島もない。男達にしてみれば段取りにない聖職者の祈りなど時間のロス以外の何物でも無いだろう。しかし

(クレアさん……! もしかしてヴィルさんも近くに……?)

 今まさに男達が馬車で運び出そうとしていた棺の中には捕らわれのアリーナが収められていた。

彼女は何とかして自分の存在を二人に気付いて貰おうと身体を動かし叫ぼうとしたが


ーググッー


「んん! んんーっ!」

 両手足どころか身体も棺に固定されていて身動き一つ出来ない状態だった。

(ヴィルさん! クレアさん! 気付いて……お願い!)

 アリーナが必死に願っても外からは何の変哲もないただの棺にしか見えない。しかも

「こいつぁ、見つかるのが遅かったんだ。死体も腐っちまってるから止めといた方が良いぜ」

 男達のリーダーがそう告げるとクレアからの申し出は無くなり静かになってしまった。

「そういう訳だから気持ちだけありがたく貰っとくぜ」

「ほら、さっさと積んじまおうぜ」


ーゴトン!ー


 暗闇の中で救助を願っていたアリーナだったが、担ぎ上げられていた棺が何かに降ろされた感覚に襲われた。

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