表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/108

帝国の手先

「ワンッワンッ!」

 クロの嗅覚を頼りにアリーナを探していたヴィル達は長い事王都を右往左往していた。

 なんとか教会まで辿り着いた後もあっちに行ったりこっちに来たりと中々、本命に辿り着かなかった。

 しかし、裏路地に入ったところで確信を得たかの様にクロは一直線に駆け出していた。

 そして裏路地を突き進み、ヴィル達が奥の曲がり角を曲がったところで

「そこまでだ! アリーナを返して貰うぞ!」

 今にもアリーナを抱えて逃げようとしていた黒マントの男達に手が届いたのだった。

「面倒なのが来たわね。イケメンなのにイケズなんだからぁ〜」


ーヒュン!ー


 アリーナを抱え上げていた黒マントの男は軽々と建物の屋根へと跳躍してしまった。

「くそっ、逃がすか!」

 ヴィルが咄嗟に背中の長剣に手を伸ばしたが、その間にも黒マントの男は屋根伝いに走り去っていく。

「クロ、ヤツを追ってくれ!」

 テイマーでもないヴィルだが、そんな彼がクロに指示を出すと

「ワンッ! ワンッ!」

 クロは勇ましく黒マントの男を追って裏路地を駆け出していく。心なしか尻尾をフリフリしていたのは気のせいだろうか?

「さっきのオカマはどこに向かった?」

 長剣を抜いたヴィルはその場に残った二人の黒マントに切っ先を向けて問い質す。

「お前に話すと思うか? 魔王を倒した勇者など相手にしてられるか」


ーヒュン!ー


 黒マントの二人の男も逃げるべく屋根へと飛び上がる。しかし

「ウインドフィールド!」


ービュオオオオッ!ー


「うおっ!」

「ぬあっ!」

 ヴィルは直ぐ様周囲に強風を吹き荒れさせて黒マントの男達を地面に墜落させた。ヴィルは背中に長剣を収めると

「誘拐の現行犯だ。お前らは王国に引き渡す」

「馬鹿な、我らがむざむざ……」


ードスッ!ー


「がはっ!」

 ヴィルは腹パンによって瞬く間に黒マントの男一人を無力化した。

「キャキャーッ!」


ーババババッ!ー


「ぎゃあああっ!」

 もう一人の男にはモン吉が飛び掛かりあっさりと制圧し終えてしまったのだった。

「モン吉、こいつらを見張っててくれ。俺は衛兵呼んでくる」

 こうしてヴィル達は黒マントの男達を王都の衛兵に引き渡したのだった。



「ったく、しつっこいワンコロなんだから!」

 黒マントのオカマがやってきたのは王都街中にある一軒の空き家。街の裏通りにひっそりと佇む三階建てのそれは、周りの建物とも同化して完全な街のよくある建物連として溶け込んでいた。


ーギギィ……ー


 彼が裏口の扉をゆっくりと開けると、そこには長らく放置されていたかの様な埃っぽくて何も無い板張りのホールがあった。

 引っ越し前の空き家か夜逃げ後の酒場の様に、カウンターしか目立つものが置かれていないその部屋にアリーナを下ろした黒マントのオカマは窓から外の様子を伺う。

「うまく連絡員に引き渡せると良いんだけど……」

 そう言うと黒マントのオカマはどこからか取り出した香水の様な小瓶を自らに吹きかけ始めた。


ープシュプシュー


「あの小娘の匂いが辿られたら困っちゃうものね〜! 女ってのはこれだから嫌いなのよ」

 窓から見る限り、追っ手に辿られている様子は無い。あのヘルハウンドの犬もうまく撒けたらしい。そんな状況に黒マントのオカマがようやく一息付いていると

「う〜ん……」

 攫ってきたお嬢様が目を覚ました様だった。しかし、黒マントのオカマは彼女が目を覚ますのを止めるでも阻止するでも無く、ただ余裕たっぷりにその仕草を見下ろすのみでしかなかった。



「こ、ここは……? 私は……」

 意識を取り戻したアリーナが気が付いたのは冷たい木の床の上。ほんの少し月明かりが差し込む程度の明るさの埃っぽい空き家だった。

「わ、私は誰かに攫われて……!」

 自分の状況を思い出したアリーナがその場から起き上がろうとするが


ーググッ!ー


「な、かにこれ……?」

 両腕は後ろ手に縛られており、両足も足首できつく縛られている。これでは上体が起こせるかも分からない。

「ようやくお目覚めかしら? 聖女様」

 窓の明かりのある方から野太い男性の声が聞こえてきた。

 アリーナが床に転がされた姿勢のままでなんとか顔だけそちらに向けると

「あなたには暫く大人しくしてて貰うわよ。ったく、散々手を焼かせてくれちゃって……」

 野太い声の主が自分を拐った黒マントの男性と知ったアリーナは

「あ、貴方は何者ですか。どうして私を……」

 自分を誘拐した理由を男に問い質す。なんとか身体を起こしたアリーナは毅然と男を見据えるがその声の震えは隠せるものではなかった。

 そんな彼女の様子に黒マントのオカマは窓際から外の様子を伺いながら、アリーナを見下ろしている。

「アタシは命令されたから動いてるだけ。アンタを生け捕りにしろって皇帝直々の命令なのよ」

「こ、皇帝……?」

 いきなり皇帝と言われてもアリーナにはまるで理由が分からなかった。

 この世界で皇帝と言えば、このグランフェルム王国の西に位置する帝国しか無い。

 しかも帝国に縁のある者はヴィル達パーティーの中には一人もいない。

 せいぜい、魔王軍の四天王が攻め入ったのを討伐した位で、その位の関係性しか無いのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ