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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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王都の治安

 日が暮れた大通り、行き交うのは街の住人らしい労働後の男達の姿がより目立っていた。

 冒険者の特に女の子達は大体複数で行動するか、安全な宿屋などに引っ込んでしまうので、今のアリーナの様に一人で夜歩きしている女の子というのは中々見掛ける事は無い。

 それもあってか、アリーナを見る街の人達からは好奇の視線を向けられていた。

(早く冒険者ギルドに……!)

 勇者パーティーの一員で経験豊富な一流冒険者のアリーナであろうと、非戦闘職で非力な女の子である事には変わらない。

 冒険者ギルドへと急ぐアリーナの足は自然と速くなる。異世界の夜の街に危険は付き物なのだ。


ードンッ!ー


「あ、ごめんなさい!」

 帰りを急ぐあまり、ふいに誰かと肩がぶつかってしまったアリーナは、蹌踉めきながらも体勢を立て直し相手に頭を下げ謝罪の言葉を口にする。

「いてぇっ! 痛たたたたっ!」

「兄貴ぃ! 大丈夫ッスかぁ?」

「おいおいおい! 何処見て歩いてくれとんのじゃ!」

「うちの兄貴が痛がってるじゃねーか!」

 アリーナがぶつかったのはスキンヘッドに髭面の大男だ。彼は大げさに痛がる素振りを見せていて、彼の取り巻きらしい男達がスゴみ始めてきていた。

「ご、ごめんなさい! お怪我でしたら直ぐに診させて下さい。治療しますから……」

「そーいう事じゃねーんだよなぁ!」

 慌てて治療を申し出るアリーナに取り巻きの男が、怯える彼女の眼の前に顔面を突き出して脅しにかかる。

「うちの兄貴の骨が折れちまったんだぁ! 慰謝料くらい払って貰わねぇとなぁ!」

 アリーナの様な華奢で小柄な女の子とぶつかって骨折は無理があるが、男達はあくまで被害者の立場を崩さない。

「い、慰謝料って……」

 普通に考えればイチャモンなのは明白なのだが、こういった事態が初めてなアリーナは真面目に受け取り過ぎてしまっていた。

「さっさとよこしゃ良いんだよ! おらぁ!」

 男達の中の一人が勢いよくアリーナに手を伸ばしてきた。財布でも強引に奪い取ろうとでもいうのだろう。だが


ーバシイィン!ー


「おわっ!」

 突如、緑色に光る防壁が現れ男の伸ばした手を弾く。手を弾かれた男は手を押さえ痛がる素振りをする。

「なんだコイツ! 魔法か!」

「もう頭来たぞ! ふん縛って奴隷商に売っ払ってやるよ!」

「取り押さえろ!」

「このガキ!」

 男達が一斉にアリーナに襲い掛かってきた。しかし


ーバシイィン!ー


「ぐわっ!」

「おわあっ!」

「いでっ!」

 またも男達はアリーナに触れる事も叶わず、緑色の防壁に阻まれて弾き返された。

「ご、ごめんなさい!」


ータッタッタッ……ー


 男達からの攻撃が未遂に終わったアリーナは一目散にその場から駆け出した。

「に、逃げたぞ!」

「追え! 逃がすな!」

「このクソガキがぁ!」

 逃げ出したアリーナの背後から男達の怒号が追いかけてくる。

「はぁっ……はぁっ……!」

 アリーナは再び人波を掻き分け、とにかく男達から離れようという一心で走り続けるのだった。



「はあっ! はあっ!」

無我夢中で大通りを駆けていたアリーナは男達を巻くために横路に入り、いつしか人気の無い王都の裏通りへと迷い込んでしまっていた。

 肩で大きく息をする自分に気が付いた頃には、すっかり道に迷ってしまっていた。しかし

「あの人達は……追ってきてない……みたいですね」

 耳を澄ませても誰かが追ってくる様な物音は聞こえなかった。

「……これ、凄い物だったんですね」

 アリーナはふと自身が右手薬指に嵌めているドワーフ製のリングに視線を落とした。

 ゴブリンに襲われた時は何も無かったが……今回は敵の攻撃をしっかり防いでくれていた。

「ヴィルさん……」

 ヴィルがくれた指輪に指を添えたアリーナが一人、彼を思い起こしていると

「アリーナ・ルミナスフォールだな?」

 いつの間にか彼女の眼の前に黒いフード付きのマントを着た男が立っていた。

「だ、誰ですか……?」

 アリーナは相手を警戒しながら錫杖を両手で握る。そんな彼女が一歩二歩と黒マントの男から距離を空けていると


ーガバッ!ー


「きゃっ!」

 突然、アリーナの視界が黒い何かで塞がれ顔を覆われた。

(う、後ろに誰か……!)

 何かの魔法か薬品か、アリーナの意識は急速に失われていく。


ーカランカラン!ー


(う……この匂いは……?)

 力の抜けダラリとなったアリーナの両手からは錫杖が地面へと抜け落ちていった。

「今回はうまくいったわね。何度もお仕事失敗する訳にいかないものねぇ」

(う……ヴィ……ルさ……)

 背後から聞こえてきたのは野太い男性の声だった。オネエ言葉に聞き覚えはあったが、その時にはアリーナの意識は消えてしまっていた。

「しかし、ようやく見つけられたな。魔王城から一体何処に消えていたんだ?」

「さあな。とにかく我々の仕事はこれで終わりだ。後はこいつを帝国に運べば……」

 黒マントの男達が捕らえたアリーナを抱え上げて、仕事の段取りを打ち合わせていると

「ワンッワンッ!」

 路地の向こうから犬らしき何かが吠える音と何かが近付いてくる音が聞こえてきた。

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