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世界を救う勇者なんですが役立たずを追放したら破滅するから全力で回避します。  作者: 大鳳
第二部 超越者打倒編

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株価大暴落の勇者とイケメン

「う〜ん……」

 長椅子に横になっていたヴィルが目を覚ますとそこは冒険者ギルドの一階ホールの一角だった。

「え〜と……俺は……」

 冒険者達で賑わう音と様子にヴィルは目線で周囲を確認するが、彼の思考は追い付いていなかった。何か物凄い打撃を受けた記憶はあるが……

「ん……?」

 不思議と頭に痛みは無い。物凄く痛かった気はするが、今はすっかり痛みが引いている。

「よっと……」

 起き上がろうとするヴィルの身体を誰かが抑えつける。乱暴ではないが静かな迫力のある力だった。

「ヴィルさん。しばらくほ大人しくしていて下さい。絶対安静以外許しませんからね?」

 頭上から聞こえてくる声にヴィルが身体を強張らせなからも自身が頭を預けている枕の柔らかさに心地良さを感じていた。

 温かな温もりと聞き覚えのある声……ヴィルの意識は一気に覚醒し身体を起こそうとするが

「まだ駄目です! じっとしていて下さい!」

 横に寝かされているヴィルの右耳にアリーナからの声が入ってきた。

(俺は……どうなって……?)

 目を右に左に動かしてみるが、見えるのはアリーナの膝枕に冒険者ギルドの壁。

 どうも隅っこの席で壁際に向かって寝かされている様だ。横向きで明かりも少なくアリーナの顔は見えない。


ーパアアァァー


「これで大丈夫です。治療は終わりです」

 神聖魔法の白い光が視線の端に見えたかと思ったら、アリーナからの声も聞こえてきた。大丈夫とは言うもののアリーナはヴィルを解放する様子が無い。

「アリーナ……? お、終わったんだよな?」

 横になっているヴィルだが、アリーナの両手が頭と肩に置かれヴィルが起き上がるのを拒んでいるかの様に制している。

「……ヴィルさん。人前で女性に抱きつかれてそのままなんて……不潔ですよ?」

 明らかに声のトーンが低いアリーナの指摘にヴィルは押し黙る。

「ヴィルさんは仮にも勇者なんですから。街の方々に与える印象というものがあります」

 アリーナからは注意の様なお小言の様な言葉が続けられていた。いつもと違う、不穏な空気にヴィルは固まったまま、唾を飲み込むのすら緊張して躊躇う有り様だった。

「それに、クレアさんにまで粗相をするなんて……後できちんと謝らなくちゃ駄目ですからね」

 パワハラを受けたのはヴィルの側なのだが……これには流石に反論したいところだが、やはり今のアリーナ相手には口を挟める空気が無い。

「な、なぁ……怒ってるのか?」

 怒ってる相手にする質問としては模範的な失敗例だが、針のむしろに等しい今のヴィルにはこの質問だけでも精一杯だった。だが……

「……怒ってなんかいません。でも、私が良くてもエルフィルさんが知ったらどう思うでしょうね」

「へ? なんでエルフィルが?」

 ヴィルにとっては青天の霹靂な名前が跳んできたせいかつい即答してしまった。

「そういうところです! もう終わりましたから起きて下さい!」


ーガバッ!ー


「おわっ!」

 膝枕の姿勢からアリーナがいきなり立ち上がった為ヴィルの頭はそのまま太腿から転げ落ち


ーガン!ー


「あだっ!」

 ヴィルの頭は床上に落下してしまった。若干油断していたのもあってか受け身以前の話となった。

 もっとも下半身は長椅子の上なので上半身が滑り落ちただけなので致命傷は免れたが……

 椅子と壁の間の小さな隙間に落ちたヴィルが起き上がろうと四苦八苦していると

「……ヴィルさん」

 アリーナが前屈みになって手を差し伸べてきてくれた。その手を取り上を見上げる格好になったヴィルの視界には

「おわっ!」

 アリーナのスカートの中が入ってしまった。一応、健康な成人男性であるヴィルは本能には逆らえずついつい視線が行ってしまう。そんな挙動不審なヴィルの様子に

「きゃあぁぁっ!」


ーガンッ!ー


「あだっ!」

 アリーナの悲鳴と共に引き上げ途中だった手を離されたヴィルは再び後頭部を石床に打ち付けた。

「ヴィルさん! 何してるんですか、こんな時に!」

 ヴィルの手を離したアリーナが慌てて後退りスカートの裾を両手で抑えている。

「もうヴィルさんなんか知りません! す、少しは反省して下さいね!」

 ギルドの壁と長椅子の間で痛みに悶えるヴィルを放置してアリーナは何処かへ行ってしまった。



「いてぇ……」

 何とか起き上がって頭を擦りながら長椅子に座っていたヴィルの元に

「お疲れ様です、ヴィルさん。一杯どうですか?」

 両手にエール入りの木製ジョッキを携えたアッシュが話し掛けてきた。

「ああ、悪ぃ」

「この度は大変お世話になりました」

 アッシュからジョッキを受け取ったヴィルは席に着いた彼と乾杯し酒を酌み交わす。

 イケメン二人が冒険者ギルドの片隅で酒を酌み交わす光景が珍しくない訳も無く……

「ちょっと〜、あそこの二人超イケメンじゃない〜?」

「私、どっちか誘ってきちゃおうかしら〜?」

「アンタなんか無理でしょ。ビヤ樽体型の分際で」

 女性冒険者の中でもロートルと呼ばれる年代のお嬢様方から密かにロックオンされるヴィルとアッシュの二人組であった。

 そんな中、ヴィルとアッシュの二人は取り留めのない世間話に花を咲かせていた「アッシュ……さんも、色々大変そうっすよね。パーティーが女の子ばっかだと」

 ヴィルも人の事は言えないが一対四と一対二では心的負担がやはり違う。

「いや〜、流石に慣れましたし一応皆で和気藹々とやれてますから」

 ハーレムパーティーをどうにか纏めて運用しているイケメンは流石に貫禄がある。一歩間違えば和気藹々どころか一触即発にすらなりかねないのだが……

「僕達は皆が同じ目的で集った仲間同士なんです。だから色恋なんてのは二の次なんですよ」

 そう話しジョッキを呷るアッシュからはよくあるハーレム系主人公の『やれやれ俺は恋愛には興味ないんだぜ〜。困ったな〜やれやれ』と吹聴するいやらしさが全く無い。

「同じ目的ってのは……?」

 特に他愛の無い世間話の一節だが、ヴィルは深掘りしてみる事にした。冒険者仲間なんてのは大体が営利目的、あくまで仕事上の繋がりというドライなものだ。

 所謂勇者パーティーと呼ばれているヴィル達だって、厳密に言えば仕事上の関係でしか無い。

 しかし、ヴィル達は仕事上の繋がりに命懸けで助け合い、同じ釜の飯を食うを繰り返してきた経緯がある。

 同じ苦境に直面し互いに助け合ってきたからこその時間が生み出した仲間意識は誰にでも生まれるものでは無い。

 しかし、経験時間こそ少なくても、年齢的に高校生位の年代のアッシュ達なら仕事の繋がり以上の何かをパーティー関係に見出せているのかもしれない……

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