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作戦の失敗

「このまま村の反対側に移動してそっちに気を引かせれば……」

 村の中を建物の陰に隠れながらヴィル達とも正面入り口とも違う場所への移動を試みていたトマスだが、CQBなど訓練した事も無い彼がいつまでも見つからないはずも無く……

「うわっ!」


ーザザッ!ー


「なんだ、お前は!」

 建物の角を曲がろうとしたトマスは出合い頭に村の見回りをしていた魔族の兵士と鉢合わせをしてしまった。

「くそっ!」

 慌てて逃げ出すトマスだが彼は簡単に兵士に首根っこを掴まれ、あっさり囚われの見になってしまうのだった。



 その頃、教会の近くルナフィオラが確認出来る場所まで進出したヴィルとミノさんとミリジアの三人。

 彼等は様子を覗いながらエルフィルが外から矢を射掛けてオーガ達の気を引き始めるのを待っていた。

「俺は竜巻でオーガ達の最後尾を叩く。ミノさんはオーガ達を直接抑えてくれ。ミリジアはその隙に奴等の中心をファイアーストームで狙ってくれ」

 ヴィルの作戦は単純だった。エルフィルが敵の気を引いたらヴィルとミノさんが通りに踊り出しオーガ達の背後を突く。

 ミノさんがオーガ達を足止めしている間にミリジアの炎の竜巻で一網打尽にする作戦だ。

「それは分かったけど…あの魔族はどうすんの?」

 ミリジアが疑問をヴィルに尋ねると

「俺が竜巻を撃った後で魔族に斬り掛かる。うまくいけば不意をつけるハズだ」

 ルナフィオラは村の入り口を気にしており、背後から迫るヴィル達に気付くのは遅れるはず。

 どちらにしろ運次第にはなるが、奇襲な以上こちらに悪い材料は無い。そうしてヴィル達がエルフィルの陽動を待っていると……

「ルナフィオラ様、村の生き残りを捕らえました!」

 魔族の兵士が誰かを抱えて魔族の少女に報告をしている光景がヴィル達の目にも確認出来た。

(あの馬鹿! なんで捕まってやがんだ……!)

 魔族に捕らえられたのはアリーナと隠れているはずのトマスだった。捕らえられたのはトマスのみでありアリーナの姿は見えない。

「ちょっと、どうすんのよ……?」

 作戦が台無しになる事を危惧するミリジアだが……

「待て、まだ大丈夫だ。あいつらトマスを村の住人だと思ってる。俺達の事はバレてない」

 ヴィルが作戦変更の必要が無い事を感じたその時

「くそぅ離せ! 僕を捕まえたくらいで良い気になるなよ! ヴィル達がお前達をやっつけるんだからな!」

(バッカやろ! 余計な事口走りやがって……!)

 トマスの発言にルナフィオラに動揺が走る。

「なに? まさか既に村の中に……?」

 彼女は動揺しながも辺りを見回し少しでも情報を収集しようとしている。

「仕方ない、攻めるぞ! 手順は同じだ、行くぞ!」

 もう迷っている時間すら無いと判断したヴィルは通りに飛び出しながら

「ウインドストーム」


ーブアアアアッ!ー


 背中の長剣から生み出した竜巻は通りに密集していたオーガ隊の戦列最後尾に向かっていく。しかし

「ダークバリア!」


ーブウウウンー


 ルナフィオラが生み出した闇の防壁によりヴィルの竜巻は威力を減衰させられてしまった。


ーブオオオッ!ー


 それでも竜巻の一部がオーガ達に襲い掛かっていき多少のダメージは与えていた。

「ミノさん、頼んだ!」

 ヴィルはオーガ達の相手をミノさんに任せると、ルナフィオラに斬り掛かっていく。

「はあああっ!」


ーカキーン!ー


「やれやれ、こんなモノか」

 ヴィル達の接近に気付いていたルナフィオラは自身の伸ばした爪でヴィルの剣を難無く受け止め、いともなく受け流していく。

「オーガ達よ、その場から離れろ! 退避だ、急げ!」

 ルナフィオラは戦列を組んでいたオーガ達に退避を命じる。

どうやらヴィル達の後ろから発せられる魔力を発しているミリジアに気付いたのだろう。


ーゴオオオオオオオッ!ー


 その時天上まで伸びる赤い竜巻が現れ通りを一掃する様に触れるものを焼き吹き飛ばしていく。

 しかし、ルナフィオラの指示が間一髪早かったのか、オーガ達の一掃には至らなかった。

オーガ達は一目散、散り散りに逃げ出しており魔法によって倒された者も少なくなく、軍勢としての再編成は難しいだろう。

「うおおおおっ!」


ーズバアッ!


「ギャアアアアッ!」

 ミノさんが相対するオーガやトロールを一匹ずつ確実に屠っている。また


ーゴオオッ!ー


 ファイアーストームを放ったミリジアもそれで終わらずファイアーランスを唱えて各個撃破に当たっており、ヴィル自身は目の前の魔族の少女を相手にすれば良さそうだ。

「オーガ達は放っておけ、命令に従うものだけ集めて魔王城に退却させろ!」

 魔族の少女はヴィルを警戒しながら部下の魔族の兵士達に指示を飛ばしている。

「フッフッフ……勇者よ。中々やるではないか、我々の裏をかくとは……」

 両手の爪を伸ばした魔族の少女には見た感じ隙がなくヴィルとしても斬り掛かる隙が見られなかった。

「妾は魔王軍、四天王が一人ルナフィオラ。褒めてやるぞ、勇者……」

 そこまで語ったルナフィオラと名乗った魔族だが、何かを考える様にして何故か言い淀んでいる。

 一方のヴィルもルナフィオラの話に疑問を抱いていた。

(確か四天王は全員倒していたはず……だからこそ、俺達は魔王を倒しに行くって話だったんだよな……)

 ヴィルが長剣を構えながらルナフィオラに斬り掛かるタイミングを計っていると

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