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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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Alter.65 慰霊祭(前)

【今回の今北産業】

・テロから生き残った敵のフェルシア

・彼女は人質交換の材料

・それまでの身柄はグスティが預かるらしい

実収の節 9/1 13:00

シュヴァルツ諸侯同盟領 北の都市トーレッド

  プラザ・デル・ソル





ああ、やはりあの選択は間違いではなかったなと――グスティは眼下に広がる光景を眺め、過去を振り返っていた。


けたたましい太鼓の音色が、午後のプラザ・デル・ソルを埋め尽くす。それらは恐怖や悲しみを生み出すものではない。むしろその逆で、祝福と幸福を呼び込むために打ち鳴らされていた。


仮面や着ぐるみで仮装したトーレッドの人々が、傘や旗を手に、紙吹雪を飛ばしながら練り歩いている。


例年にも増して熱気が凄まじいと噂のトーレッド祭が、今まさに開催されていた。


今回は戦死者を弔う慰霊祭の役割も兼ねているからか、中には遺影を抱いて歩く未亡人の姿も見受けられる。葬式もままならない状況であるため、せめて賑やかに見送りたいという願いの下、この祭は行われているようだった。


グスティはそれを見て「不謹慎じゃね?」と思いつつも、文化の違いだろうと口を噤み、酒場の二階テラス席からその様子を眺めていた。


大きな猫を乗せた神輿や、豪華な装飾を身につけた象が闊歩する中、ひときわ人々の注目を集めるのは、巫女が中に収まっている巨大なドラゴンの神輿だ。今回の一件で一躍有名人となった竜の巫女は、今やトーレッドの英雄となっていた。


しかしそれは、彼女の存在を民衆が純粋に押し上げたというわけではない。無論、そのような声も一部の助けられた人々からは上がったものの、それはごく少数に過ぎない。竜の巫女が英雄として祀り上げられたのは、モット卿が荒れる内政を収めるために担ぎ出したに過ぎなかった。彼女は治安維持の象徴とするには、あまりにも都合が良かったのだ。


そして彼女はお人好しであるため、そんな利用されていることに気づいていても、かりそめの平穏を維持することにこだわり、その役を引き受けていた。


「キャー!巫女様~!こっちむいて~!」


だが、そんな人の親切を無下にするモット卿にも誤算があった。彼女が思った以上に人気者になってしまったことだ。


神輿が通りを進むたび、四方八方から彼女の献身を讃える民衆の声が聞こえてくる。そんな彼らの声に、竜の巫女は耳を傾けていた。それらがたとえ大きく尾ひれがついた特盛りの的外れな礼賛だとしても、民衆のためだと割り切って受け入れた。


その結果、彼女の神格化が加速した。今や彼女は英雄を越えた都の救世主であり、その魅力に憑りつかれた民衆が、一人また一人と信奉者として彼女の下に集い始めていた。


民衆の黄色い歓声が聞こえる。男よりも女の声の方が多いところが、少し気になるところではあるものの、竜の巫女のカリスマは、今や彼女を英雄として完全に逸脱した存在へと昇華させている。


彼らの頭には専用の『♡ザバーニャ様』と記された鉢巻きと、法被には『♡巫女様LOVE』の刺繍が施された特注の装備が行き渡っていた。


もちろんそれらは、イナンナ主導の下、グスティーズによって大量生産されたものだ。イナンナとグスティは、巫女が再びモット卿に利用されたと知るやいなや、すぐさま計画を練って反撃に打って出たのである。


結果、大量のファン獲得により、現在ではトーレッドで最も人気のある存在として、モット卿の地位を脅かすまでになった。過激派からは、トーレッドの統治は竜の巫女によって行われるべき、という声すら上がるほどに。


またしても何も知らない竜の巫女様(22)は、今回も周囲に振り回されているだけである。なぜこれほどまでに自分が人気なのか、もちろんその原因を仔細には理解していない。そういったことも受け入れられるのは、ある意味彼女の美徳の一つと言えた。


イナンナと二人で「今回は少しやり過ぎたか」と反省しつつも、「金貨五百枚の借りは返しただろう」と、むしろ少し清々しい気分でいたグスティ。


彼の胸ポケットの位置には、モット卿より賜った勲章と、それに覆いかぶさるように会員ナンバー000の巫女様ファンクラブのナンバープレートが、朝日にキラキラと輝いている。


信者の胸元には早い者順にナンバーが振られており、現在の会員数は三桁をゆうに越える中でのナンバー000には、金貨には代えられない価値があった。古参として――長蛇の列をなす新参者たちを見下ろしながら、グスティは酒を一口含んだ。


いつもよりも美味に感じられるのは、おそらく彼らのおかげだろう。


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