表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/84

Alter.64 終息

【今回の今北産業】

・一度目の大量殺戮

・賽は投げられた

・彼はトーレッドに帰還した

陽煌の節 8/20 22:30

シュヴァルツ諸侯同盟領 北の都市トーレッド

  スラム街 収容区画








グスティはトーレッドに戻ってくると、戦いはゆっくりと収束に向かいつつあった。昼を過ぎた辺りから始まったテロは、気がつけばもうしっかりと空に星空が浮かぶほどに時間が過ぎている。


ゴーレムで街中を走れば、鎮火作業を終えた老兵士達がコチラに敬礼をして帰投を歓迎してくれた。


「ハハッ……お疲れ様です」


お互いにこの一件を乗り切ったことを喜び、敬礼を返す。そしてグスティは収容区画へ向かった。


収容区画ではさっそく竜の巫女とイナンナの二人が、椅子に縛られたフェリシアに尋問しているのが目につく。フェリシアは何も話す気はなさそうで、視線は右斜めを向いたまま、すんと沈黙を守っている。まるで我関せずとでも言うように、二人の問いかけに取り合おうともしない様子だった。


しかし、グスティのゴーレムを見つけると、「ようやく帰ってきたか」とでも言うような表情で、自ら縄を解いて立ち上がった。


グスティはゴーレムから降りると、近づいてきたフェリシアが、何発か顔面を殴られ、眼の辺りに青あざが浮かんでいることに気づく。


「……えらくベッピンさんにして貰ったんだな」


ヒョエーと、グスティはフェリシアの顔に癒しの霧を当てて治療する。フェリシアには手で顔を触れられたところからみるみる傷が治っていくのを見て、驚きを隠せないと言ったような表情で自分の顔を撫でて確認した。


「これで元の綺麗な顔だ。それでどうだった?二人は」


「怖いです」


「あぁ、怖かっただろうな。あの二人は怒らせると怖い女上位を常に独占している方々だ。それでもこの程度で済んでるなら、お前さんやっぱり世渡り上手なんだな」


「あれが手加減とでも?」


「巫女様にしちゃあ上出来だな……。赤子を相手にする時ぐらい優しくして貰ってるよ、お前は。十分に自分の価値を示したんだろう」


そんなことを言っていると、グスティの背後から腕が伸び、彼の頭を鷲掴みにした。


「くぅ~コレコレ」と思いつつ、軋むような音を立てるグスティの頭蓋。ツギハギ少女と戦った時以上の力で、竜の巫女はグスティを廃墟へ投げ込み、そしてその廃墟を全て更地にするかのような勢いで、グスティは吹き飛んだ。


そこからゾンビのように立ち上がると、まるでB級ゾンビホラーよろしく、手を前に出して「ウゥ……」と唸り声を上げながら巫女に抱き着こうとしたところを、イナンナに止められる。


「二人とも辞めないか。まだ周りに人がいるんだぞ。特にグスティ、お前はまだやるべき仕事が残っているだろうに、ナゼここで油を売っている?」


「いやぁ。なんかいつまでも重い空気と言うのもアレかと思ったのでつい。ああ、コチラ捕虜のフェリシア。しばらくウチで保護することになるんでよろしく」


「帝国兵を匿うって本気? 」


腕を組んでご不満な様子の巫女様。散々いたぶったうえに口も割らなかったフェリシアを快く思っていないようだった。


「いやぁ、結構この人有能なんですよ。巫女様。無能な見方より、有能な敵の方が傍に居て安心するでしょ? つまりそう言うことだ」


「今ので説明になっていると思うなら、いっぺん死んだ方が良いかも知れないわね」


「そうそう、彼女、一応死人扱いで頼みます」


「なんのために生かすの? まさか、絆されたわけじゃないでしょ? 」


「ハハッ、まさか」


火球を掌に作る巫女様。それは冗談でもなく、本気でグスティを焼き殺すのに十分な威力に思えたグスティは、急いで巫女様をなだめにかかった。


「もちろん冗談だ、全ては巫女様のため。当たり前じゃないですか。彼女は捕虜、つまり外交カードなんです。元はトーレッドを寸前まで追い詰めた首魁の一人ですから、彼女の帝国での価値は相当に高いはず……。もしかすると帝国に捕まったかも知れない護身竜の村の民との人質交換に、彼女は仕えるかも知れないんですよ。うわっ、コレは貴重だ、生かしておくしかない! ――巫女様もそう思うでしょ? 」


「よくもまあそんなにペラペラと、思いつきで話せるわね」


「思いつきじゃない、熟慮の末の答えだからこそですよ。もう俺は四六時中巫女様のことだけ考えて生きてますから」


「キモイとか超越してむしろ怖いわね」


「もちろん、私もです。巫女様」


シュバッと推参するイナンナ。二人の臣下を前に頭痛がする竜の巫女。緊急時との落差で風邪をひきそうだった。


「イナンナ、アンタまでおかしくなったらこれを収集つける人がいなくなるから、アンタだけはせめてまともでいてちょうだい? 」


「…すいません。ついグスティに当てられて…」


グスティは、やっと自分のいるべき場所に帰ってきたような気になりながら、残りの後始末に出かけることにした。元々長いは出来ぬ身、少しでも仲間達の元気な姿を見られたことが、彼にとって何よりの休息となった。


「フェリシア、また少し離れるけど。すぐに迎えにくる。仲良くとは言わないけど、それなりに敬意をもって巫女様には接するように頼むぞ」


「はい。私も殺されたくはないので」


フェリシアは巫女様をけん制するように見ながら、ゴーレムに乗りこむグスティにそう言った。



収容区画を出ると、グスティはそのまま兵舎の格納庫へ向かった。すでにゴーレムのほとんどは外から帰ってきており、格納庫に収められている。こっそりとその中へ戻ると、いつも自分がゴーレムを置いているお気に入りの場所へと足を進めた。



するとそこで、トーレッド隊が隠れてグスティを待っていた。


「わっ、危ない!格納中に後ろに出ないでくださいよ。踏みつぶしますよ?」


「モット卿が呼んでらっしゃる。俺たちはもうお叱りを受けた。あとはお前だけだ、グスティ」


オールウィット隊長はなぜか、腕と頭に包帯を巻いている。何かあったのだろうかと、グスティは降りながらそのことについて聞くか悩む。悩んだ末に、良いことはなさそうだと判断し、あえてその包帯には触れずに、モット卿の部屋に急いだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ