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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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Alter.62 始まりの一人

【今回の今北産業】

・最初にやってきたのはアサシン。

・各場所から集まってきたグスティーズ。

・バラバラになっていたグスティーズ、謎の力で合体。



グスティ・ウェン、最初の一人の目覚めである。


グスティは高くなった背と、体の感覚を思い出すように肩を回す。そしてグスティはチートを管理するUIを表示させた。


すっと世界から自分だけ隔絶されるように、角膜に投影して映るその発光文字に目を通す。こうすることによって、自分はこの世界の人間ではないという『麻酔』を自分に注入する。そして自分の所持しているチートを確認した。


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【アナタが使えるチート】

・殺戮チート・装甲チート・増殖チート・拡縮チート・翻訳チート・上達チート・思考加速チート・雄っぱいチート・迷彩チート・運命の糸チート・癒しの霧チート・雄尻チート・インビジブルチート・迷彩チート・投擲チート・お菓子生成チート・分裂チート・演出チート ・工作チート・天の声チート

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「……運命の糸チート、有効化」


使用すると、外側に伸びていた赤い線が全て白色に変わっていた。白い線は良くも悪くもない色だ。

「インビジブルチート、迷彩チート、投擲チート、装甲チート、全て有効」

グスティは口で確認を取りながらチートを全て使用する。そしてナイトの乗ってきたゴーレムに乗りこむと、トーレッドを出発した。



結果から言えばグスティの予想は命中していた。


北では既に緊張状態が続いており、トーレッドの軍は敵の進軍を丘陵から観察しているような状況だった。指揮官たちは作戦室で怒号が響き渡る中、緊急で作戦を練っている。そんなところに一機のゴーレムがやってきたことで事態は急転を迎えた。


オールウィット隊のメンバーが一人来てくれたということで、グスティは歴戦の佐官達から歓迎され、すぐさま作戦会議室に招かれた。


「オールウィット隊の方が来てくれるとは有り難い。ぜひこの戦況を見て貴殿の意見が聞きたい」


入隊して間もない男に一体何を聞くというのか。グスティは指揮官たちの表情を見て、彼らの内心を推し量る。彼らの表情を見るに、純粋にグスティの意見を求めているワケではないことは間違いない。


グスティは周囲を見て、何かを察する。


一人だけカンカンに怒っている人間を見つけたのだ。彼こそはこの作戦の全体指揮を務める将官様である。この戦争の選択は彼に委ねられていると言っても過言ではない男だ。


男は尊大が人の革を被って動いているような男で、身振り一つから、自分の権威を示すことに余念がない人間だということが窺い知れた。


そしてその男がポジショントークで指揮官たちに、妙案を思いつくように喝を入れていたというのが、先ほどグスティが作戦会議室に入る前に聞いた怒声の正体だった。


だからグスティは指揮官全員がこの無能を黙らせるために自分を招いたのだと早々に理解し、しばらく悩むフリをして時間を指揮官たちに与えつつ、自分は毒にも薬にもならない意見を出して退散することにした。


「ふむ……そうですね」


敵の数は二千。その内の五十機はゴーレムが占めていた。それを見て、グスティは護身竜の村を制圧にきた時よりも少ないことに気がつく。


「本来いるはずの十分の一も敵兵がいません。伏兵の状況はどうです? 」


「伏兵の情報は入っていない。森の中に偵察を回したが、人っ子一人として見つかってはいないな」


指揮官の一人が情報を整理し、全員の共通認識を統一するように、少し声を張って全体に聞こえるように言った。


もしもテロと帝国軍が連携して行動しているのであれば、帝国軍はトーレッドを全力で落としに来るはず。


しかし蓋を開けてみれば、なぜか急いで準備しました、と言わんばかりの人数だ。


何か裏があると思いはしたが、残念ながらそれでもコチラの軍に勝算はない。


なにせコチラの常備軍の数は八百余りしかなく、ゴーレムも十機程度。数が圧倒的に足りない。佐官たちの頭を悩ませている最大の原因がこの数の差だ。


この戦いの全権を持つ将官殿はこの戦いを聖戦とし、二倍以上の兵力を相手に何とか五分以上の戦いをしようとしている。コレは論理的に考えれば、戦いにならないことは明白だが、その論理的思考というものを、誰もが持ち合わせているわけではないということも考えの中に入れておくべきだろう。


特に前でふんぞり返る将官は、右脳を十分に活用する傾向にあった。


なのでグスティはまず確認として将官に尋ねた。


「トーレッドに引き返し籠城戦という案は? 」


「貴様も佐官どもと同じ意見か!? 壁の壊れた城で籠城戦が出来るか!! 」


お歳をめした将官様の雷が落ちた。佐官たちは首を振る。いくら壁に穴が空いているとは言っても、丘陵の上にあるトーレッドを攻め込むのは難しい。


まともな思考回路をしていれば、それを理解することが出来るし、こんな場所で話している暇があるならば、即撤退が望ましいのだが、話しを聞くに、このおじいちゃん将官は、壁が壊れているという情報で頭が一杯になり、ここで倒すしかないと考えているようだった。


そしてその考えを真っ向から否定できる佐官もこの場にはいないため、何となくこのまま流れで真っ向勝負を仕掛ける時間を迎える……という最悪のシナリオを迎えようとしていた。


そうと分かればグスティもすぐに、適当なことを言って撤退する準備は出来ていた。


「偵察兵がいるということでしたので、森にいくらか兵を割き、側面から奇襲をかけられる体制を整えておけば、正面衝突の際に森から有利に展開できるかも知れません」


それっぽく適当に作戦を説明して、その後に考えられるパターンを幾つかピックアップして流れを説明する。全て他の佐官が既に考えていそうなことを、とても真面目に説明して、それで得られる成果についても説明する。


すると何をとち狂ったのか、将官はそれに拍手をして、グスティの案でいくと言い始める始末。


グスティは自身の耳を疑ったが、自分がこの作戦で行けば敵を殲滅できますと、適当に啖呵を切ったことも良くなかったと反省した。


普通であればこの素人の立てた作戦の杜撰さに眩暈がするはずだが、分かりやすさで言えばピカ一だったために、将官の心を打ってしまう。


グスティが自らのプレゼンテーション能力を侮っていた結果起きた悲劇である。


佐官達の絶望する表情に耐えかねて、“現場の指揮を見てくる”と言って天幕を脱出すると、グスティの口からは、あの場で誰もすることの許されていなかった溜息が漏れた。


佐官達の「俺達を置いて先に一人で楽になろうとしているヤツ」という視線を、忘れるために眼がしらを抑えた。上官に逆らうことが許されないのは承知の上だが、だからと言って諫言の一つも出来ないような部下なら彼も同罪である。


同じ陣営であっても仲間意識を持つことは難しかった。


「……何やってんだ俺は」


グスティが歩きだすと、すぐにまた将官の怒号が聞こえた。佐官達の沈黙を想像しながら、逃げるように兵士達の下へ出向く。


「……おいおい、どういうことだ? コレは」


……全員目の色が死んでいた。


戦う前から敗色濃厚といった具合で士気はゼロに近かった。このまま轢き殺されるのが関の山、というのが誰の眼からも明らかだった。


そんな状況を見てグスティは自身がどうするべきか考える。


ここにいる兵士達を全員見限り、トーレッドに帰還して、巫女様と村人を連れて逃げるという選択肢が第一候補に挙がる。


助けようかと思っていた兵士達だが、トーレッド隊以外がまともに機能していないのであれば、今後もトーレッドを守れるかどうかは怪しいところだ。


このまま手を貸して勝たせた所で、あの将官がまた戦場に出てきてしまうのなら、その時は巫女様やイナンナにも被害が及ぶかも知れない。


ならばいっそ完敗し、あの将官には敗軍の将として、ちゃんと死んで貰った方が今後のためであるとすら思った。


次回:夜間遊泳

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