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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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Alter.58 事情聴取

【今回の今北産業】

・凍結少女はつよい。

・フィオレッタが弱いだけ?

・ていうか、他のトーレッドにいるはずの異端核保持者は何処へ?

陽煌の節 8/20 20:30

シュヴァルツ諸侯同盟領 北の都市トーレッド

ハッグハグ・モット卿の城 グスティの部屋




時を同じくして、一息ついていたグスティ・ハンサムは、生け捕りにした少女を尋問していた。

彼女が地下水路にいた模造品少女とは違い、特に魔法を使ったりはしない一般アサシンであることは承知しているが、それゆえに彼女がなぜモット卿の命を狙ったのかまでは解っていなかった。


「いい加減話してくれても良いんじゃないか? 身柄の安全も、お金だって遊んで暮らせる額を出す。お互い悪い話じゃないと思うんだが」


自死を選ばなくなっただけ、彼女の心の整理がついたのだとホッと胸を撫でおろしながら、ハンサムは情報を求めていた。


「いらない」


十二~十五歳の少女はふてぶてしく、ハンサムの要求を突っぱねる。


先ほどは顔を見る余裕もなかったが、赤いローブの下から見える乳白色の肌は荒れて赤くなっており、栄養不足なのか、ボロボロの布切れの間からは浮いたあばら骨が見えた。


全身に肉はなく、ほとんど骨に皮が張り付いているような体をしていた。唇もカサカサで指の先に至っては血で黒く染まっている。


長かったのであろう金髪も部分的に禿げて、下から生えてきている髪は白くなっていた。


「ふぅん……とりあえずなんか、飯でも食うか」


「いらない。殺すなら殺せ」


部屋の棚を漁りながら、ハンサムは情報を自分から当てていくしかないようだと、彼女の行動を振り返る。暗殺技術から根回しまで、この一件に関わっているのは帝国だけでないのは明白だ。


「そう言うなって、酒のつまみぐらいなら俺の部屋にもある。チーズとハムならどっちが好きだ? 」


チラリと両方を見た後に眼を閉じる少女。まるで誘惑から己の理性を守っているようだった。


「好き嫌いも教えちゃダメだって教えられたのか? 」


「……! 」


次に耳まで塞ぎだした少女に、ハンサムは分かりやすい子だと少し安心する。


いずれ自らの口で語りそうであったため、彼もそれほど説得を急ぐこともなかった。


「お前さん、このまま捕まるワケにもいかないんだろ? 捕虜って扱いもご不満って感じだ」


「スキにすれば」


「捕虜で今モット卿に捕まったら、お前さん楽には死ねないぞ」


「望むところだ」


「まあそう言うなって。俺はお前さんらの事情も、少しだけ理解しているつもりだ。仲間の一人からは復讐の動機も教えて貰った。帝国兵のオッサンや模造品の少女も、お前さんの仲間なんだろう? 」


模造品の少女という言葉に、ピクリと反応を見せる少女。


「……だれが話した? 」


「雷を使う子。知り合いか? 」


「ウソだ」


死人に口なしと言わんばかりに、グスティ・ハンサムは嘘を並べた。


「自分達のような存在を生み出した者への復讐が目的なんだろ? 聞いてるよ」


「……アナタはだれ? 」


明らかに態度が変わった様子を見て、まだ警戒はしているものの、交渉の余地は十分にあるように思われた。


「……ハンサムと呼んでくれ。お嬢さんのお名前は? 」


自分の名前をもう少し、熟考した方が良かったかも知れないと、名乗りながら思うハンサム。


「私の方が年上なのにお嬢さんって……へん」


当然の感想に、ハンサムは頭を掻く。


「この姿はちょっと訳ありでね。実際の姿は二十代も後半なのよ」


「マセガキ……? 」


翻訳チートの故障を疑いつつ、ぼろ布少女の額にデコピンをする。


「名前を教えてくれないなら、君のことは金髪ホネホネドクロちゃんって呼ぶぞ」


そう言うと、ポカッと今度は少女がハンサムの頭を小突いた。


「アレクサンドル・イワノフ……皆私のこと、サーシャって呼ぶ」


ハンサムは棚にあったチーズとハムをサーシャに渡した後、自分も同じ物を食べて見せる。


「サーシャ……ね。とりあえずこれ食べな」


「毒が入っているかも知れないから、いらない」


「毒が入ってたら楽に死ねるぞ? 」


「……なら毒で死んでやる」


皿に乗せられたチーズとハムを手掴みで食べながら、「しょっぱい」と文句を垂れるサーシャに、ハンサムは苦笑する。


「悪いが最近は自炊も難しいんでね。外食が殆どなのさ」


「……子供のクセにへんなの」


棚に視線をやりながら少女はため息をつく。


「サーシャは暗殺部隊としてモット卿を殺しに来たんだろ? 」


「……」


眼も会わさずに、沈黙のままむしゃむしゃとチーズを食べるサーシャ。


「モット卿に恨みでもあったのか? 」


表情も変えずに、食事を続けるサーシャ。どうやらこれは違うらしい。


「誰かに命令されたんだな。それは帝国に? 」


ピクッと耳が動くが、大きな反応は見せない。食べた後の仕草やゴソゴソと三角座りをする様をつぶさに観察しても、どうやら違うようだった。


「命令されたのは帝国じゃないなら……同じ同盟から? 」


ピクピクッと耳が動いて、彼女は顔を俯かせた。どうやら同じシュヴァルツ諸侯同盟領の貴族から、モット卿は狙われたようだった。


しかしそうなるとおかしい。帝国が技術を盗む本泥棒の件と、モット卿が同盟領の刺客に襲われた事件、片方ずつならまだしも、両陣営に同日襲われるなんてことは余程不運か、仕組まれていないと起きたりしない。


前者ならお祓いを推奨するとして、後者の場合を考えるとモット卿には思った以上に敵が多いことになる。


もちろんそれは他人事ではない。トーレッドが襲われるということは、自分達にも降りかかる火の粉もあるということ。


「金銭には興味ないって、サーシャは言ってたな。君は自らの意志で動いているのか? それとも誰かに言われて動いているだけなのか? 」


ハンサムの言葉に、沈黙を続けるサーシャ。


名前以外には今のところ大した情報も吐かない彼女に、ハンサムは金銭以外の条件を提示することにした。


「話をしてくれるなら、欲しい物を用意するよ」


「きぞくの命」


「それ以外で。―――服とか興味あるか? サイズ合うか分からないけど、色々あるぞ」


一瞬興味を惹かれたようにサーシャは顔を上げたが、すぐに自分で自分にビンタをしてまた俯いた。


「ちょっと大人な化粧道具とかね。色々あるぞ」


実物を見せろと言うので、巫女様の部屋に一緒に行って化粧道具を借りパクしてくる。その廊下の途中で、不思議そうにサーシャは聞いた。


「なんでそんなの、もってるの?」


「身内がオシャレ好きだから、自然とそういうものもうちに多いんだ。話してくれるならいくつか持って行っていいぞ」


と、後から巫女様が聞いたら処刑確定の戯言を言うあたり、ハンサムも情報収集に熱が入っていた。この少女はこの事件の真相を握っている、そんな確信があったからだ。


「君は今回の事件、もし話してくれるなら君の身柄は俺が引き取ろう。モット卿に引き渡したりはしない。君の生活をサポートさせてほしいんだ。その代わりに君が大人から受けた酷いことを話してくれないか」


暗殺少女は少し考えた末に、「家族がいるから無理」と言った。


「パパとママが人質に取られているのか? 」


「ううん、皆一緒に働いてる」


「家族で暗殺任務を受けたのか? 」


「ちがうよ。みんなバラバラのおしごとをしてる」


彼女はポツポツと自信の素性について話し始めた。


自分なりに彼女の話を咀嚼し、解釈すると、サーシャの家族は五十人ほどいるらしく、孤児院から集められた少年少女で構成されているということが分かった。


彼女が言うには初めに『試験』で、異端核に適正があるかどうか割り振られ、そこから部門ごとに技能を習得し構成員として教育が施されていくとのこと。


そうして各地から集められた孤児によって集められた少年兵たち、それが彼女達の正体だった。彼女達は雇い主である同盟の貴族が、モット卿を陥れるため帝国と結託して、ということが今回の事件の全貌のようだった。


「そうか……家族といたいんだな。それなら、話をしてくれた礼もある。君の家族には説得から入ることにするよ」


「それとフェリシア、という女性について知っているかな?」


「知ってる。帝国のお姉さん」


「君の家族ではない?」


コクリとサーシャは頷いた。


次回:命の価値

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