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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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57/84

Alter.55 圧倒

【今日の今北産業】

・地下水路で相対する異端核保持者とその失敗作たち。

・失敗作の名前は模造品レプリカ、同盟の作り出した生物兵器だ。

・竜の巫女とツギハギ少女の戦いが勃発!

自分の自慢であったパンチを押し返されたことは、ツギハギ少女にとって想定外のピンチだった。

身を削る魔法など使わずとも、敵の一人ぐらい問題なく倒すことが出来るだろうと少女は踏んでいたのだが、実際に相手取ることになったのは想定を超えた化物。


まともな攻撃はまるで効果が無いようで、先ほど自らの巨椀がクリーンヒットしたはずの顔面は、陥没は愚か、かすり傷一つついていない。


あれが本当に人の皮膚なのかと、ツギハギ少女の顔に恐怖が滲む。計画では、異端核保持者を足止めする役割を任されたが、彼女が本気で動いた時、自分が止められるビジョンが思い浮かばなかった。


「バケモノ…」


「冗談でしょ」


ツギハギ少女の言葉に失笑を禁じ得ない竜の巫女は、ゆっくりと獲物を狙う肉食獣のように詰め寄る。


それにツギハギ少女は全力を持って応じるほかに勝利の道は残されていないのだが、それに応じることはあくまでも現状維持を続けるということ。しかしそれはいずれ訪れる終わりを先延ばしにしているに過ぎない。だがそれで充分だった。彼女には今しばらくの時間が必要だった。


ひたすら手数で押し続け、反撃の隙を与えないほどにパンチを浴びせることが、むしろ最大の防御と考え、ひたすらに拳の雨を降らせるツギハギ少女。


しかしその戦い方にはハッキリとした限界があった。


後方に跳んで、息切れを起こすツギハギ少女に竜の巫女が、煉獄を映すかのような真紅に染まった瞳で笑みを向ける。それは怒りではなかった。しかし彼女の内にある何かを目覚めさせたのは間違いなかった。


「終わり? 」


瞳以外は平然として、攻撃を終えた彼女に竜の巫女は詰め寄ってくる。


あれほど攻撃をしたにも関わらず無傷というのは何かの冗談か。少女は今までに感じた事のない恐怖を体験していた。実験の後に手に入れたこの剛力を振るえば、巨岩は砕け、敵は宙を舞うのが当たり前だった。


――だというのに効かないアレは一体なに?


答えの分からないツギハギ少女は、恐怖に駆られ、最後の頼みの綱であり切り札である魔法を使うことを決意する。体を蝕むエーテルをその身に循環させながら、彼女は恨みがましく魔法の名を告げた。


「≪腕力(ヴィスブラキ)≫!」


指の先から肩にかけて燃えるような痛みと共に噴き出る蒸気。赤い両腕でツギハギ少女は巫女様にただ一発、これで最後と、全力の一撃をお見舞いした。


「うわああああああ!!! 死ねええええ!! 」


両腕による真上からの叩きつけが、巫女様の全身に深くのしかかる。


「……チッ」


巫女様は右手でそれを退けようとするが、初めて自分の膂力以上の何かが上から襲い掛かる感覚に、明確な嫌悪感を覚えた。そう、この感覚は以前森で戦ったあの人魚少女の時も感じた、エーテルを伴う攻撃の感触だ。


巫女様は先ほど攻撃を受けた右腕の状態を確認すると、僅かに鱗がめくれているのが分かった。あの日、森の中で出会った異端核保持者以来の傷に、彼女は闘争本能の躍動を感じずにはいられない。


「魔法とかって言ったかしら……それなら私を傷つけられるのね。ふぅん…………そう」


左手に光球を作り出す巫女様。その光に映し出された彼女は嫣然(えんぜん)と微笑んでいた。北の森で人魚少女に不覚を取った答えを今見つけたかもしれない。そう思うと、嬉しさの余り空を飛びたい気持ちだった。


「貴女は大切なことを私に気づかせてくれたわ。これはそのお礼、受け取ってくれるわね」


光球をひょいと地下水路の天井に向けて放つ。曲線を描き緩やかに飛んでいくそれを少女が目で追っていると、次の瞬間には光の球は炸裂し、轟音と共に地下水路に太陽を連れてきた。


「キャッ!? 」


ツギハギ少女はその余りの眩さに目を瞑る。そんな隙を竜の巫女に与えるべきではなかった。すぐさま空中に彼女は舞うと翼を広げて滑空し、風切り音と共に背後に回りこんだ。


視覚と聴覚を奪われたツギハギ少女は一瞬のうちに起きた出来事に、頭の整理が追い付く暇もない。気づけば首根っこを掴まれ、壁面に押し当てられていた。


そしてそのまま竜の右腕で不気味に揺らめくオレンジ色の炎を集約させていく。このままその手の炎で焼き尽くすのかと思われたその時。


「離せ…! 」


押し付けられたツギハギ少女が、最後の抵抗をするかのように、命を削り≪腕力(ヴィスブラキ)≫を行使すると、重ね掛けされた魔法によって強化された膂力で、逆に巫女様を壁に押し当てることに成功する。


「形勢逆転…! 」


ツギハギ少女が拳を握りしめて、巫女様を殴殺しようと拳を振り上げたところに、巫女様の竜の右腕が押し当てられた。


彼女は先ほどからオレンジ色の炎を燃やし、何かをしていた。この期に及んで無駄なことをしていたとは考えられない。ツギハギ少女は危険を察知して、高温になっている状態で押し当てられていた竜の巫女の右手を払い除けた。


「触らないで!」


「あらそう。受け取って貰えないのが残念だわ」


掌が離れた瞬間、空気が一瞬にして燃え、轟音と共に大爆発が起こった。炎が地下水路を赤く染めあげ、周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。巫女様はその右手の衝撃に耐えるように、足に力を入れた。


水路の波立ちが収まると、巫女様は(すす)で汚れた血生臭い手を払い、灰でやられた喉で咳払いする。この爆発は彼女も想定外の規模だったらしい。


「ケホッケホッ……この技はお蔵入りね。調整が難しいわ」


巫女様は顔布付き帽子とローブを再び装着すると、翼と尻尾をローブの中に隠し、仲間の下へ向かった。



次回:贋作

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