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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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Alter.53 決死隊

【今日の今北産業】

・フェリシア達の前にトーレッド最強のオールウィット隊が立ちはだかる。

・フェリシアがこのままでは追いつかれることを察して、全員でフェリシアが作戦を結構する時間を作ることに。

・フェリシアは城壁を破壊することに成功する。



「ん、なんか来たぞ」


サウスゴールドが敵の反転攻勢にミニドラムの手を止める。


味方と地形、それから戦場のスピード、テンポ、武器の構成、そういった情報を細かく頭に入れ、毎秒更新をかけていく。


「ほーん……自滅覚悟の特攻か。隊長、どうします? 」


サウスゴールドはそう敵の行動を評価した。そんな部下をオールウィットは叱咤する。


「窮鼠猫を噛むという言葉を知らんのか! こういう輩こそ我々が真に気を付けるべき相手だ」


そういうオールウィット隊長は、しかしどこか自分に言い聞かせるようで、どこか気だるげに辺りに伏兵がいないか確認を取る。


「じゃあ、どうするじゃ。優しゅうイイ子イイ子しちゃる余裕もないが。一瞬のうちに首と胴を切り離すんけぇ? 」


セイジュは大砲を構えながら言った。


「煩いぞファッキンマゾ。貴様がそんな舐めた装備で来なければもう少し俺達も楽出来るのだぞ。次からはやはり弓か、せめて弩を持ってこい」


サウスゴールドのゴーレムは、セイジュの持った大砲を指さして文句を言う。それに、嘲笑を持って応じるセイジュ。お互いに他の隊ではエースであるため、こだわりも強かった。


「おまえに分かって貰おうなんざおもっちょらん。この爆発の美学はワシにこそ相応しい。それよりもグスティ、今回はうまぁワシを使えよ? 」


それに応答するのは、なぜか訓練の後も指揮官を続けるグスティ・ナイトだった。


ガルシア少尉の戯れにも似た訓練が終わった後、元通り経験豊かなオールウィット隊長が指揮をと思い気や、”以外に悪くない”ということで、隊長から半ば押し付けられるような形で、グスティは指揮官の位置に立っていた。


「七機で広がり、面で圧力をかけてきたか。……隊長、集団で一カ所に穴を空ける作戦を提案します」


「包囲されるぞ? 」


「その前に突っ切れば、追う形を作れるかと」


自信なさげにナイトは通信越しに、オールウィット隊長に提案をする。


「なるほど……コチラが仕掛けるタイミングを選べるというワケか」


そう言って、オールウィット隊長は頷くと作戦を伝える。


そして最後に、

「七手で詰ませる。グスティは我々が空けた穴から先行して、逃げた大砲持ちを追え。前の雑兵は俺達が処理しておく」

と言ってのけた。


オールウィットの声には、隠しきれない余裕と嘲弄が感じられた。


彼はグスティに指揮を任せて以来、彼は重責から解放され、剣を振ることで充足感を得ていた。


誰よりも戦いに飢えている男が、指揮を部下に丸投げするのは仕方のないことだったのかもしれない。


そんな頼りになる隊長を持った仲間達は苦笑交じりに、

「「「「了解」」」」

と口にする。


そして先人を切ったのはもちろん槍を装備したサウスゴールドだった。


敵の練達した陣形は、一朝一夕で出来るものではないことは目に見て明らかだった。

しかし、敵のそんな努力に牙をむくのは非凡な才を持った男の一撃。


サウスゴールドが槍を振るう。閃光のように鋭く、空気を切り裂く音が響く。


広がる八機の中から、速度の落ちたゴーレムが狙われた。もちろん狙われたのはエーテルポットに穴が空き、液漏れしているゴーレムだ。


『いちぃいぃいぃいぃぃい!』その叫びと共に、彼の動きは舞うようにリズミカルに敵を捉え、疾風の如く貫ぬき去った。歌劇でも見ているかのように鮮やかな破壊に、敵までもがその雄姿に立ち尽くしてしまう。


貫かれたゴーレムからは液体エーテルが流れ落ち、まるで戦の涙が地に滴り落ちるよう。その涙は敗北の証か、それとも逃げた仲間に向けた安堵のものか。


「二じゃ」


セイジュが足を止めたゴーレム三機の中間に大砲を放つ。爆炎が上がり、鋼鉄の足を失ったゴーレムたちがバランスを崩す。


「「三」」


そのゴーレム達を庇おうと前に出た敵のゴーレムを、爆風の砂塵から現れた二つの死神が切り裂く。


砂煙から現れたのはオールウィット隊長とグスティ・ナイト、オールウィット隊の中核を担うベテランと新人のコンビだ。


四人が互いに次に取る行動を把握しているかのように動いていく。


オールウィット隊長は、剣を振るうたびに心の奥で燃え上がる興奮を感じていた。敵を切り裂く瞬間、その笑い声は戦場音楽となる。


「行け! グスティ!」


「サー・イエッサー! 」


切り開かれた道を突き進むグスティ・ナイト。それを逃がすまいと迫る敵の眼前には、オールウィット隊が立ちはだかった。


『四!』サウスゴールドの放つ心臓への一突きに空気が裂け、

『五!』轟音と共にゴーレムが崩れ落ちる、後方から睨みを利かせるセイジュの一撃。


その煙に紛れて『六!』とオールウィットが斬り込み、『七!』と、最後の一機にサウスゴールドが槍を突き刺そうとした瞬間。


最後の一機は武器を投げ捨て、その隙を突かれたサウスゴールドに自ら突進した。傍目から見れば、意味の分からぬ奇行。しかしそこには明確に帝国兵の意地があった。


「バァカなのかコイツは? 武器も持たず、組み稽古で俺に挑む気なのか? 」


サウスゴールドの呆れや戸惑いを含んだ声に、オールウィット隊長が警戒を促す。


「何かおかしい! そいつから離れろ! 」


「そんなことをせずとも、このスピードを出していればオーバーヒートでいずれ止まる。もって十秒といったところか」


サウスゴールドの言う通り、帝国兵が駆るゴーレムのコックピット内では、オーバーヒートを警告する異音が鳴り響いていた。しかしエンジンを全開に吹かせ、サウスゴールドを押し続ける帝国兵。


「エリート様には、無能の怖さはわかるまい! 」


彼はグスティ・アサシンの工作によって鍵を無くし、エーテルポッドの液漏れを許してしまったゴーレムの搭乗者だった。


サウスゴールド最大の誤算は、帝国兵のエーテルポッドに穴が空いていることだった。燃料が零れている状態でエンジンを吹かし続けると、故障し、最悪最後には爆発が起きる。


しかしそんなことが起こる前に対応するのがプロであって、わけてもそれを自爆という無様な行為に利用しようなどと考えが及ばないのがサウスゴールドという男だった。


この奇妙な運命が重なったことを帝国兵は心の底から喜んだ。


「冥途の土産に困ることはなさそうだぜ。ヘヘッ、くたばれ同盟のクズども……! 帝国に栄光あれー!! 」


敵の一人がサウスゴールドにしがみつき、赤く発光する。コックピットの中は全てエンジンの熱で溶解し、ゴーレムはついに止まらなくなる。人知れず爆破を待つ時限爆弾となった。


「は、放せ!! 見苦しいとは思わないのか!! 」


サウスゴールドは、組みつかれたまま爆破寸前のゴーレムを振り払うように槍を振ろうとするが、槍は懐に入られることを苦手とする武器、取っ組み合いには向かない装備だった。


ブスブスと煙を吹き、赤熱化したゴーレムの隙間からピーと危険な音を立てて洩れる。


そして少し、ゴーレムが膨らんだと思われたその時。


「この馬鹿もーん!! 」


間一髪、オールウィットの後ろ足がゴーレムを蹴り飛ばした。ゴーレム同士の距離が少し離れたかと思いきや、次の瞬間にはチュドーン、と周囲を巻き込む大爆発が起きた。


サウスゴールドとオールウィットは爆発に巻き込まれ、その大きな巨体が浮く。


「大丈夫か!? 」


セイジュの声が大爆発を起こした後の砂塵の中に飲み込まれた。そして砂煙が落ち着くと、二人はゴーレムの下半身を失った状態で見つかった。幸いにもコックピットが上半身に合ったため命は助かったものの、巻き込まれ方によっては両方死亡していた可能性すらあった。


「ばか者が……あれほど油断するなと言っただろう……」


「ハァ……ハァ……すまない」


オールウィット隊長の声と、今の一瞬で走馬灯を見ていたサウスゴールドの激しい息遣い。二機ともボロボロになりながらも、互いに生きていることを一旦は喜びあった。


「なーにしとるんじゃお前ら………まったく、ゴーレム二機も大破させよってからに。始末書もんの失態じゃ……」


セイジュはそう言いつつ、「悪運の強い奴らじゃのぉ」とケラケラ笑った。油断の代償が思った以上に高くついたサウスゴールド。


セイジュの笑い声を聞きながら、シートに体を預けて周囲を見渡し、他に敵がいない事を確認すると、頭を抱えて唸った。


「――ヌガァアアアア………!!! 」





次回:竜の巫女&ジョーカーVS???

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