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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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Alter.52トーレッド隊、発進!

【今日の今北産業】

・アサシンが鍵を盗んだ。

・アサシンがエーテルポッドに穴を空けた。

・アサシンが積荷に細工を施した。

銀色の四足がトーレッドのレンガ舗装の道を疾走し、やがて地面の色はレンガから土に変わっていく。四機のゴーレムがフェリシアの影を追っていた。


「キサマァ~、ゾンビ一兵卒の癖に妙な情報網があるのだなぁ? 」


オールウィット隊のサウスゴールドはゴーレムの中から通信機で、前を走るグスティ・ナイトに言った。警備中にナイトが”ゴーレムで暴れるのに良い機会がある”と唆して連行してきたからか、コックピットの中の彼はとても浮足だっていた。筋金入りの戦闘狂である。


「本泥棒が帝国から差し向けられた間諜というのは本当か? 」


隊長機の中でオールウィット隊長が、操縦桿を片手で操作しながら聞いた。

オールウィット隊長には全てを話し、地下水路から引っ張ってきたのがつい先ほど。上官の命令無しに動くことはできないため、彼が率先して動いてくれたことにはグスティーズ全員、頭の下がる思いだった。


「まず間違いないかと。数キロ先に敵がいます……もうそろそろ見えてくると思います」


「ワシらの相手は帝国か。知らんかったぁ……」


セイジュは水分補給をしながら、通信機越しに呟く。

彼には事情を説明する時間が惜しかったため、何も言わずに格納庫まで連れ込んだが、やはりそれで問題なかったらしい。


ナイトを含め四機、これだけのゴーレムを無断で動かすことは十分処罰の対象になる。だとしても、ナイトには向かうべき場所があった。


『見つけ次第攻撃を開始しろ!! 壁を破壊されれば、帝国のゴーレムに都が蹂躙されることになる』


コマンダーの声が脳内に響く。いつもより緊張感のある声にナイトも気が引き締まる。


『分かってる。……そろそろ見えてくる頃だろうぜ。また後で連絡を入れる』


ナイトはコマンダーとの脳内会話を切り、前方に意識を集中させた。


先行しているサウスゴールドとオールウィット隊長は周囲を見渡しながら、敵が走っているという郊外を探す。目的はただ一つ、本泥棒の殲滅だ。


そして猟犬たちが餌を探し回っているうちに、一番初めにそれを嗅覚で捉えたのは、やはり最も野生に近い男、サウスゴールドだった。


「見つけた! 見つけたぞ!! フッハッハッハッハッ!! 重そうな筒を運んでいるではないか!! 」


サウスゴールドがご機嫌にコックピットの中でミニドラムを叩きながら、距離を詰めるように操縦桿を強く足で倒した。


「――相手は大砲を持つ隊長機を含むゴーレム八機、多勢に無勢とは言わないでくださいよ」


ナイトの言葉に、オールウィット隊長は「訓練の成果を見せる時だ。動きからして敵もそこそこの練度はあると見ていいが……一撃でもくらってみろ。貴様ら明日の訓練は地獄を見ると思え」と不気味に笑った。






一方で、敵を後方から発見したフェリシアたちは、ゴーレムを進ませながらどこの隊か確認を取っていた。


内部工作によって敵の強力な駒であるシグマリア隊と、オールウィット隊を陽動組に押し付けている現状、反転して攻勢に入る好機でもあるからだ。


しかし味方からの報告は予想外に絶望的な内容だった。


「あの、髑髏の腕章は……オールウィット隊です! 」


「なぜここに!? 」


有り得ない報告に耳を疑う。勘のいいトーレッドの衛兵がコチラの動きに気づき、機転を利かせて追ってきたのだというのなら話はまだ分かる。


しかしオールウィット隊とはどういうことだ。それはつまり、警備の任を離れてわざわざ城壁周りに移動する理由があったということ。


――自分達の情報が洩れている?


――我々の仲間に裏切りモノが?


そんな不穏な考えがフェリシアの思考を鈍らせる。


大砲を抱えているフェリシアは、他のゴーレムよりも速度が出ない。このまま鈍った思考のままノロノロと進んでいては、次第に追いつかれ、破壊されるのが誰の目からも明らかだった。


フェリシアはどこかで戦いを仕掛けるか、仲間を切り捨て、自分だけでも城門へ向かう必要があった。


「数は!? 」


「ゴーレムは4機!フルメンバーではありません! 迎え撃ちますか? 」


問いかける仲間の声も抑制を欠いて上ずっている。


「指揮官が狼狽しちゃだめ…!! 」


フェリシアは細く筋肉質な太ももを抓って、操縦桿を握る手に力を入れる。


疑うのは後だ。後ろから追って来る相手はそんな迷いのある状態で対処できる相手ではない。


フェリシアは深呼吸して、熱気のこもるコックピットの中で額の汗を拭った。


トーレッドのオールウィット隊と言えば、一機でゴーレム十機分の働きをすると言われるエリート分隊だ。


帝国では”髑髏の腕章を見たら逃げるか自決するかを選べ”、と言われるほど危険視される彼らが四機。正面から戦って勝算があるとは思えなかった。


予想外のさらに予想外が重なり、完全に彼女の中の予定が狂っていた。目まぐるしく事態が悪化していく中でフェリシアは苦渋の決断を迫られる。


見方の命か、作戦か……二つに一つ。その選択は間違ってはいけない。


フェリシアは自分を護衛している男達や、陽動で今も戦っているであろう仲間達のことも考えた。


しかし、彼女は自分の仲間が百パーセント死ぬ選択と、少しでも生き残る可能性がある選択の二つを並べ、後者を選んでしまう。


作戦は中止出来ても、仲間の命は替えがきかない。その考えが彼女にその答えを吐かせた。


「作戦は……中止です。各自、バラバラに逃げて下さい。私が囮になって、オールウィット隊を引きつけます」


その通信をフェリシアと行動を共にしてきた仲間が聞くと、全員の笑い声が聞こえてきた。作戦を中止して仲間の命を優先するという指揮官を、お世辞にも名将ということは出来ないからだ。


彼女がこの指示をする前から、既にトーレッドでは彼女の命令で何人も死んでいる。同じ死人を出すならば、効率良く死人を出して作戦を成功させるのが指揮官の役割であり、その苦しい選択をするのが指揮官だ。


だから彼らは彼女を笑った。そして同時に尊敬もした。


「大将が殿(しんがり)なんて聞いたことないですぜ」


「フェリシア様、ここは我らにお任せ下さい! 」


「フェリシア様がいれば何度でも再起を図ることが出来ます。どうぞお逃げください!」


彼らの中には軍服を着ているものもいたが、そうでないゴロツキもいた。しかし、全員がフェリシアを逃がすことに意識が一つになっていたのは彼女の人徳がなした奇跡だろう。


彼らは大砲を持ったフェリシアを前に突き出すと、壁のように広がりオールウィット隊に向けて突撃して行った。勝算など皆無の無謀な特攻である。


「な!? 何をしているんですか!! やめてください! 」


突撃していくメンバーの中には、鍵を盗まれ、エーテルポッドに穴を空けられた者も含まれていた。


時間が立ってようやく自分達が敵の罠に陥っているという事実に気づき、悔しさでどうにかなりそうだったが、最後の抵抗として自分達の首領(フェリシア)だけでも逃がさなければと、目の前の敵に集中した。


           「「「「「「「ウォオオオオオオ!!! 」」」」」」」


七機のゴーレムが反転して、オールウィット隊に決死の戦いを挑む。ただ一人、全てを捧げてこのトーレッド攻略に打ち込んできた自分たちの首領(フェリシア)を逃がすために。


そんな彼らの背中を見てフェリシアは一瞬硬直したが、すぐに虚ろな瞳を前方に向けて走りだす。


何もかも上手くいかないが、それでも味方から受け継いだ命を無駄には出来ないと判断しての行動だった。


崩れ去ろうとした計画を仲間達が修正してくれたことにより、当初の計画とは大幅にズレたものの、多くの仲間とゴーレムを失いながら城壁に辿りついたフェリシア。


涙にぬれた操縦桿を握りしめ、彼女は大砲を構えた。


壁の上では、突然現れた帝国のゴーレムにてんやわんやするトーレッドの衛兵達の姿が映る。一発でも命中すればいい。それで半年は修繕に時間がかかる損害をトーレッドに与えることが出来る。


「くらえ……同盟!! 」


フェリシアはこの命よりも重い砲弾が装填された砲身を城壁に向け、導火線に火をつけた。


厚い城壁を破壊するために作られた、爆発よりも貫通力を優先させた特別性の砲弾が、トーレッドの平和に牙を剥く。


次の瞬間、ドゴンッ!! という轟音と共に発射された砲弾は、都の壁を押し倒すかのように着弾した。


メキメキメキと壁面には亀裂が走り、瓦解していく城壁。


開かれた侵略への道に、フェリシアは涙が浮かんだ。


「作戦は……成功です!! 」


そんな彼女の背後から、迫りくる影が一つあった……。









次回:決死隊

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