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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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Alter.48 探索開始

【本日十六回目の今北産業】

・巫女様はシグマリアになれない。

・巫女様、ケルヒャー、フィオレッタ、ジョーカーの4人は地下水路へ。

・本来『魔法』は、異端核保持者がシグマリア状態でなければ使えないもの。

陽煌の節 8/20 18:00

シュヴァルツ諸侯同盟領 北の都市トーレッド

中央住宅街 地下水路 入口前




夕暮れ時、シグマリア隊のメンバーが続々と招集をかけられ、万全の対策で水路の封鎖が行われつつあった。


グスティ・ナイトも在籍するオールウィット隊も周辺警備に駆り出され、槍を持って周囲に避難誘導をしていた。


『フェル達がもしも地下水路を使って本を盗んでいるなら、城付近に秘密の抜け穴がある可能性が高い。グスティ・ハンサム、運命の糸チートを有効化して、城周辺を捜索しろ』


コマンダーが一足先に現場付近で、群衆に紛れながら指揮をとばす。広げた網に穴が無いように寝入りに出口を潰していっていた。


『あいよ。コマンダー殿。アサシン、そっちの状況はどうだ? 』


ハンサムがフェルの状況を聞くためにアサシンに話を投げた。するとフェルを尾行しているアサシンから疲労の溜まっている声が帰って来る。


『フェルは今シャワーを浴びて、整備士の服から私服に着替えている最中。このまま帰宅するまで監視するー』


『ビショップは離れた場所でベニス、クラフトと待機だ。怪我人や何かあった時に対応できるように準備をしていてくれ』


『怪我人ゼロでお願いしますぅ』


『貴族の持ち物を盗む泥棒は鞭打ち刑だ。どちらにせよ怪我人は出る』


ビショップの言葉にも真面目に返答するナイト。貴族の私兵が板についてきたようだと、コマンダーは笑みを浮かべる。


『各位聞いてくれ。今回の本泥棒、目的は本の売却じゃない。市場に本が出回っていないことも確認済みだ。愉快犯という可能性は限りなくゼロと考えた場合、別の陰謀がこの地下水路には巣くっている可能性が高い。警戒を怠るな。特にジョーカー』


コマンダーの言葉が脳に響き、眉をひそめるジョーカー。


『不服。グスティーズの中でワタクシが最強。異論はないはず』


『忘れたか、俺たちグスティーズは巫女様に干渉してはならない。目立つなと言っているんだ』


『不要な忠告。ワタクシならば、一瞬のうちに敵を殲滅出来る』


『敵の殲滅がお前に与えた命令ではない。巫女様の護衛、それがお前の仕事だ。本泥棒を捕まえることがお前の仕事ではないことを忘れるな』


『……』


沈黙の後、脳内会議からジョーカーが消える。分裂してから、自分の力を抑えていた理性のコントロールが難しくなっているようにコマンダーは感じていた。自分の力を誇示すれば足がつく。


足がつけば、今後の行動にフリに働く可能性がある。それはマズい。


溜息をつきつつ、コマンダーは群衆に紛れ、水路に走っていく竜の巫女とジョーカーを見送った。


地下水路の入り口は、夕方だというのに夏の熱さに湯気を上げて陽炎を立ち昇らせていた。その湯気も下水のせいか酷い臭いがする。とても人が立ち入る場所ではない。


ジョーカーは巫女様にハーブの香りがついたハンカチを手渡した。


「異臭がします。巫女様コチラをお使い下さい」


「そのハンカチ、アンタの分でしょ。自分で使いなさい。アタシは大丈夫だから」


「ワタクシにはお面があります。このお面の中はハーブが詰まっているため、臭いは気になりません」


ジョーカーは自分がつけている狐のお面をコンコンと叩くと、巫女様はハンカチを受け取り、鼻と口を覆った。


それから次第に外の光が届かない水路の奥へ進んでいくと、ランタンで明るく照らされた場所を三人は見つける。


現場指揮を執るオールウィット隊長と他数名のシグマリア隊のメンバーが、水路の奥で三人が来るのを待っていた。


「ケルヒャー二等兵にフィオレッタ軍曹だな。現在先行してシグマリア隊が本泥棒を捕まえに向かっている。お前達も後を追い、本泥棒捕獲に向かえ」


オールウィット隊長の指令で四人はさらに奥へと向かうが、ジョーカーはこの警戒態勢に疑問を持った。

『いくら貴族の持ち物を盗んだとはいえ、泥棒程度にシグマリア隊とオールウィット隊両方が出動するのは不可解。グスティーズ、これは異常です』


地下水路のジョーカーから地上のコマンダーへ、すぐさま情報が飛ぶ。


『了解。グスティ・ハンサム、運命の糸チートで危険な色の糸はないか探れ』


その要請をハンサムが受け取り、運命の糸チートを有効化すると、ジョーカーの言う通り、トーレッドの複数個所から赤い血の糸が無数に伸びているのを確認することが出来た。


『おいおいこりゃ、結構ヤバい状況かも知れないぜ。赤い糸っつーのは、誰かが死ぬ可能性のある未来だ。それが下水道とプラザ・デル・ソル、それに城からも出てる』


『一人で問題ないか』


『やれるだけやってみるさ』


元のグスティの人格を色濃く残しているグスティ・ハンサムは、アルカイックスマイルを浮かべて腕を回した。


『向かうのは城からで良いかい』


『ああ。下水道はジョーカーが対応できる。唯一穴があるのが城だ』


そう言いつつ、コマンダーはなぜ運命の糸チートが城に赤い糸を伸ばしているのか考えた。


一見無関係のように思えるモット卿の城に一体何があると言うのか。そう考えて行くうちに、思考は飛躍してある妄想をコマンダーに抱かせた。


(この本泥棒、もしや城で何か起こすための陽動なのでは……?)と。


この一週間まるで尻尾を出さなかった本泥棒が、今頃になって兵士達に発見されるような真似を、わざわざ取るとは思えなかった。コマンダーはトーレッドの地図を広げて、町の地図と地下水路の地図を重ね合わせる。


地下の雪解け水は初めに城に流れこみ、貴族であるハッグハグ・モット卿が一番に利用出来るようになっている。そして城付近に住む富裕層を中心に外側へと、水は落ちていき、地下水路を通って都の隅々にまで行き渡ると、遠方の川に排出されるという仕組みだ。


偉い人が綺麗な水を飲めるという、現代人のグスティからしてみれば意味不明の理屈だが、そうなっているのだから仕方がない。


『だから町の衛兵達は城周辺の水路を重点的に封鎖して、そこから範囲を狭めて網にかかっている本泥棒を追い詰めようとしている……うーん、この作戦はそもそもあっているのか?』


城が泥棒の被害にあったのだから、その周辺を厳重注意するというのは間違っていないと思う反面、そんなあからさまな場所を住み家にして活動を続けるなんて正気じゃない。絶対に有り得ないと思った。


そもそもそんな人通りの多い場所に繋がっているなら、もっと早く誰か発見者がいなければおかしい。


コマンダーは盗賊ギルドにあった暗渠の情景を思い返しながら、ふと水の流れを思い出す。


「ザー……ザー……水の勢いはかなりのものだった。―――水の勢い、複数人の犯行、消えた城の本、売られた痕跡のない市場…………外部に流れ出る水」


タラリとグスティ・コマンダーは自分の出した仮説に冷や汗を掻く。


『ジョーカー。その先に罠があるかも知れない。気を付けてくれ』


『ワナ?』 


『ああ。囮かも知れんと言うことだ。俺の仮説ではそこに本泥棒はいない』


『巫女様だけでも帰しますか? 』


『その必要はない…と言うか無理だろ。俺たちが彼女をどうこう出来るとは思わん。そんな物分かりの良い女なら、俺達も困らなかっただろうがな』


溜息混じりに脳内で呟くコマンダー。その呟きに全てのグスティ達がウンウンと頷いた。


そしてコマンダーはさらに言葉を続ける。


『だが、先に罠の情報はお伝えしておけ。いざと言う時に生存率が上がるだろう。彼女自ら首を突っ込んだとはいえ、死んで貰っては俺達も困る。作戦名は【肩透かし】だ。せいぜい異臭のする迷路を楽しんでこい』


『……了解』


そう言ってジョーカーは、嗅覚共有をコマンダーに押し付け、お面をずらして深呼吸をする。


『オェェェ……何をする! 』


いきなり群衆を歩いていたコマンダーに下水の臭いが脳天を貫き、パチパチと目を瞬かせるコマンダー。

嗅覚共有でジョーカーから送りつけられた物だと知り、憤慨する。


『ゴホッ……ゴホッゴホッ…………過度なポジショントークは制裁に値する』


冷静に咳き込むジョーカーに、コマンダーは大きなため息をついた。


『――ッチ、以後気を付ける』


コマンダーは「次同じことしたらただじゃおかねえからな」と、脳内ではなく口で呟きながら、なるべく高い場所へ移動し始めていた。


トーレッドで一番高い場所と言えば、トーレッドの時間を支配する鐘が鳴る教会だった。コマンダーは教会の裏手から鐘楼の中に入り、長い螺旋階段を上る。


そして上から景色を覗くと、そこからはトーレッドにある全てが俯瞰してみえた。


それと同時にアサシンから連絡が入る。


『フェルがトーレッドの外に向かっている。家が外側にあるにしてもケッコー遠く。これヘンじゃない? 』


『本泥棒は複数人という情報がある。フェルはもしかすると確認要員なのかも知れない』


『何の? 』


『本が外に流れるのを確認するためのだ』


『何のために』


『それはわからない。貿易商とでも繋がっていて、外部の行商に本を高値で売るルートを持っているのかも知れないし、あるいは……』


グスティと言う人間は自分相手だと言うのに意見を言うのを出し渋る、そんな人間だった。誰よりも自分自身が信用ならない。その自信だけはあった。


『あるいは?』


『すまんが、まだ情報が出揃っていない。精査した後に報告をする。アサシンは引き続きフェルの尾行に努めてくれ』


アサシンとの通信が終わり、視界を下界のトーレッドに戻すコマンダー。


(この都で本泥棒ではない何かが起きている、それを知っているのは恐らく自分だけではない。自分の他にもう一人、自陣営に真実を知る人間が……)


その疑念を晴らすべく、コマンダーはその人間に最も近いハンサムに通信を繋げた。


十二話投稿のはずが……十六話も出してしまった。

ストックはまだあるのですが、一旦ここで。

また数週間後に、お会いしましょう。




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