Alter.43 報告
【本日十二回目の今北産業】
・グスティ達はそれぞれに名称が与えられることになった。
・グスティは中学生程度の身長に全員分裂した。
・グスティは固有の人格を複数持つ集合体となった。
「ぜんたーい、進め! 」
ピッピッと笛を吹きながら行進するグスティ達。扉の前につくまで、誰とも会わなかったが、誰かと会っていれば奇異の眼で見られたに違いない。
「コンコン、失礼します」と、ナイトが巫女様の眠る扉をノック。しばらくすると「どちら様でしょう」と外面用の巫女様の声が聞こえてくる。
「俺俺、俺だけど」
扉越しにそう言うと、扉の向こうからクソでかため息が聞こえてくる。
「…早朝からなんのよう? 」
「ご報告がありまして」
「こんな早朝から? 」
「出来れば、早く知っておいて貰いたく」
扉を開けた竜の巫女は既に身なりを整え終わっており、一人、夏の朝と共にモーニングティーを楽しまれている最中だった。
彼女はグスティ・ナイトに向け、そして視線を下に降ろして小さい少年少女に視線を映した。
「……誘拐? 」
「「「「「「「「なワケあるか」」」」」」」」
八人の声がハモる。
それにビクッと体を震わせて、巫女様は驚いたように少年少女達を見る。
「……洗脳、いえ…脅迫されているの? 」
本気で少年少女となったグスティを心配している竜の巫女に、グスティたちは脳内で会話し、代表してグスティ・ナイトに言って貰うことにした。
「全員俺なんだ。巫女様」
「……まったく意味が分からないけど、続けて? 」
「それがカクカクシカジカで」
分裂に至った経緯を説明する。
「……へぇ、つまりマヌケが小さくなって弱くなった変わりに、数だけ増えたってことね」
竜の巫女の言葉にグスティ達は「お~」と、賞賛の拍手を送った。
「流石の順応です。巫女様」とナイトが褒めた。
「なんだか分裂して頼りない感じになったわね」
「「「「「「「それって前の俺(私)が頼りになり過ぎたってこと? 」」」」」」」
キラキラとした目で見上げるグスティ達。
自分がまさか頼りにされていたとは知らず、ふとした言葉から洩れた隠れた信頼が浮き彫りとなったことで、グスティ達の巫女様に対する好感度が意図せぬ形で急上昇する。
しかし――、
「……今なら一人ぐらい消しても問題はなさそうね」
という耳を赤くした巫女様の言葉に、好感度は再度急降下し、恐怖するグスティ達。恐ろしさの余り全員が装甲チートを持ったグスティ・ハンサムの後ろに隠れた。
そんなか弱い存在となったグスティ達に竜の巫女はため息をつく。
「冗談よ。……まあ、見上げるより見下す方が気分は良いわね」
グスティ達からは普段は頭一つ分小さい巫女様が、今度は逆に頭一つ分大きく映った。
巫女様はその身長差に満足したのか、クラフトとビショップの頭を撫でて、微笑みを浮かべている。
「女の子の姿をしているけど、…アンタも男なワケ? 」
ふと巫女様は髪の長いビショップとクラフトに目線を向けて聞いた。
「私達は一応生物学上女ですぅ。記憶はグスティ・ウェンのモノを持っていますが、人格は別ものになっています……我々をどうするおつもりですかぁ? 巫女様」
ビショップが答えて、クラフトがビショップの腕を掴んで震える。グスティ達が全く別の人格ということが分かり、難しい顔をする巫女様。
今まで通りに接するのも何か違うようだと思い悩んでいるようだった。
「……なんだか前以上に厄介な存在になったわね、アンタ……いえ、アンタ達。元の人格に近いグスティはいないワケ? 」
巫女様の言葉に全員の視線がハンサムに集まるが、本人は口笛を吹いて「俺は偽物でーす」と言った。
すると、そんなグスティ達を見て、司令塔であるグスティ・コマンダーが前に出て進行役を買って出た。
「巫女様、今日から護衛に二人つくつもりだ。その護衛のアサシンとジョーカーだ。こき使ってやってくれたまえ」
パイプを咥えたグスティ・コマンダーが威厳を見せるため、少し偉そうに言う。
巫女様はその偉そうな態度が癇に障ったのか、グスティ・コマンダーは竜の右腕に捉えられ、アイアンクロ―を食らった。
「アイタタタタタッ! 」
悶絶するグスティ・コマンダーに不敵な笑みを浮かべる巫女様。
「アタシ、品性の他に言葉遣いと礼儀はしっかりするべきだと思うのよね」
巫女様のエメラルドグリーンの眼光が光り、グスティ達は震える。
「お、俺はコマンダーだ。だから他のグスティ達をまとめる必要があって…イタイタイイタイ! 」
「それがアタシにモノ頼む態度かって聞いてんだよ」
巫女様の目が朱色に変わり、グスティ・コマンダーを睨みつけた。
足がつかない状態で、コマンダーが必死の弁明を行うが、彼女はそれを無視する。彼の言い分はどうでも良く、態度に問題があったためだ。
それに気づかないコマンダーは白目を剥きながら体をブラブラさせ、他のグスティ達はオロオロとしながら、そんな残酷な光景を眺めることしか出来なかった。
そしてその光景を作り出した首謀者が笑みを浮かべて、コマンダーを掴んだまま他のグスティ達に話しかける。
「……お前達をまとめて呼ぶ名前がいるな。グスティーズ…グスティーズがいい。お前ら、グスティーズと呼んだら全員とんでこい。分かったか? 」
「は、放してあげてくださいぃ」
修道服をきたグスティ・ビショップが立ち向かうが、言葉だけで特に行動には移さない。他のグスティ達も「ヤメロォ」などと言っているが、行動に移すことはしなかった。
全員が次の標的になることを恐れた結果だった。
その様子に竜の巫女は鼻をフンッと鳴らして、右腕に掴んだグスティの顔を近づけてまじまじと見た。
「お前、コマンダーとかって言ったっけ。ハン……丁度いい、お前がアタシの言葉を伝えろ。分かったか? 」
「わ、分かったから放せ下さい……」
ミシミシと音を立てるコマンダーの頭蓋に、グスティーズは口を押えて戦慄する。始めの犠牲者がまさか身内によってもたらされるのではないかと、恐怖していた。
しかしそれは竜の巫女がポイッと放り投げたことによって回避され、コマンダーの下にはグスティーズが集まり労わった。
「「「「「「「大丈夫ですか俺(私)」」」」」」」
ビショップの癒しの霧チートで回復するコマンダーは頭を擦りながら、立ち上がる。そして全員に巫女様から受けた痛みの記憶を全員に共有した。
「「「「「「「アイタタタタタタ!?」」」」」」」
グスティーズは全員倒れ込み、頭を抱えながら呻く。ファントムペインが彼らの脳を痛みで支配していた。
「俺を助けなかった俺への罰だ」
ムスッとした表情で怒るグスティ・コマンダー。そんな彼らを呆れた目で見る竜の巫女は、額に手を当てて溜息をついた。瞳は元の綺麗なエメラルドグリーンに戻っていた。
「ほらアンタ達、バカやってないで、全員とりあえずどっかに座りなさい。人手が増えたのなら、出来る仕事も増えるはずでしょ。……それと全員分の椅子なんてないから、座れないグスティーズは立ってなさい」
こうして一気に人口密度が増えた巫女様の部屋で、彼女の支配下となったグスティーズに、新たな役割が与えられることになった。
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