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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章中編:護身竜の村奪還作戦【本泥棒編】

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Alter.34 モット卿の招待

【3回目の今北産業】

・図書館での会話。

・グスティは面倒くさがり。

・図書館に不穏な影?

陽煌の節 8/14 10:00

シュヴァルツ諸侯同盟領 北の都市トーレッド

ハッグハグ・モット卿の城 客間




朝露が干上がる陽光がガラス窓から差し込む一室。腰ほどの長机の前に座る三人。誰もが別々の思惑の中、この席で会話をしていた。


中でもハッグハグ・モット卿は、皺の入った顔を歪ませながら言葉を紡いでいる。


「つきましては、竜の巫女様にも同じコチラをご使用して頂きたく思います」


「事前の説明じゃあ、その魔導小切手ってヤツ、危ない匂いしかしないのだけど? 」


竜の巫女は眉を潜ませた。




―――話しは1時間前に遡る―――


三人がイナンナの病室で食事をとっていると、突然の通達に食事の手が止まった。内容はハッグハグ・モット卿が竜の巫女に面会を求めているという旨の内容だ。


心当たりがあるのか、イナンナは「もう来たか…」と一人呟く。


「イナンナ、何か知っているの? 」


「ええ、恐らくですが囲い込みかと」


「占領された村の巫女を囲ってどうするわけ? 別の竜の生贄にでもする? 」


竜の巫女の珍しい冗談に、イナンナは少し笑みを浮かべて首を振った。


「いえ、政治的な役割ではなく、戦力的なお役目を巫女様に求めておられるのでしょう。彼らにとって異端核を持つ巫女様はそれだけで貴重な戦力ですからね。とかく巫女様は他には類のない無い完全に近い異端核をお持ちですから、早いところ話をつけて起きたいと言ったところでしょうか」


イナンナにそう言われて、竜の巫女は自身の胸に手を当てた。


彼女の中にある異端核(ルグズコア)。完成形間近と言われている竜の巫女の異端核(ルグズコア)

価値は彼女が想像するよりもずっと高い。


しかしそんな彼女達の会話にグスティは待ったをかけた。


「巫女様、こんな要請、とっととはねちまって構わないですか? 」


怪我が治ったと見るや、すぐに戦場に駆り出そうとさせるやり方に、グスティは少し憤りを感じていたのだ。


それについ最近まで自分が看病し続け、やっとの思いで元気な顔を見せた家族を、ハッグハグ・モット卿は戦争に連れて行こうとしているのだから、彼が怒るのも当然だった。


しかしそんなグスティをお節介と言わんばかりに、

「…チッ、無関任な事言ってんじゃねえよ。コレはアタシにしか出来ない仕事だろうが。黙ってろ、阿保」

と、赤い瞳孔がグスティを睨み、邪見に扱った。


「戦うことが怖くないのか? 」


「それとこれに何の関係があんだよ……」


食事を食べ終えて、竜の巫女は面会の支度を始めた。


そんな彼女の後姿に頭を悩ませつつ、グスティは自分の予定を確認する。残念なことに大きなノートにはびっしりと予定が書き込まれてあった。


今日も朝から訓練があり、午後には巡回、夕食の後には、護身竜の村の人々に配るお金の用意や、村の人間が仕事をするために必要な、地図や物資を購入する予定が、これ見よがしに詰まっている。


「巫女様一人で行かれるおつもりですか」


イナンナがリハビリ中であるため、このままでは巫女様一人でハッグハグ・モット卿の下へ行かなければならなくなる。


そう考えた彼の額には汗がツーっと落ちた。


「…ガキ扱いすんな。……二十歳は過ぎてんだぞ」


竜の巫女の言葉に、グスティは二十歳になったばっかりなんてまだ子供と大差ないぞ、と頭をかく。


誰にでもこの態度なら、きっと彼女はハッグハグ・モット卿に無礼なことをしでかす。そんな嫌な予感がしてならなかった。


「過ぎたばっかりでしょう? まだ全然ガキじゃないっすか。俺ちょっと職場に連絡とって来るんで待ってて下さい」


「ハァ? 余計なことすんじゃねえ……イケるっつったらいけるんだよ…イライラさせんな」


顔を隠す布が一体となった帽子を被り、鏡で衣装を確認する竜の巫女。


風が吹けば布がめくれて顔が見えてしまうが、室内を移動する巫女様にとって別にそれは問題ではない。外出して人と会う時は必須のマストアイテムである。


「巫女様」


「どうかした? イナンナ」


そしてイナンナから竜の巫女へ鋼の剣が手渡された。


「いざとなればそれで…」


グスティと同じくらい心配しているイナンナは、震える体で鋼の(ブロードソード)を抜刀して敵を斬り伏せるよう竜の巫女にジェスチャーを送る。


「揃いも揃ってアタシをなんだと思っているの? ……ったく」


竜の巫女はイナンナの鋼の(ブロードソード)を受け取り、一礼してからその鞘から刀身を抜く。

刃渡り60㎝の装飾が入った美しい剣だ。


食べ終わった皿に残されたスプーンで均等に剣を叩いて音を聞く。


キィーンと高い金属音が、どこを叩いてもよく響いた。


「状態は問題ないみたいね。…ありがとう、イナンナ」


腰に剣を収めると、竜の巫女は兵士に連れられて病室の扉を開いた。


「巫女様、どうか粗相の無いようにだけ…! 」


そう心配するグスティの腹に、竜の巫女は無言で剣を突き刺す。


「食ったばっかなのに…」


と、残して地面にグスティはうずくまった。そしてその間に、竜の巫女は顔隠しの布から少し笑みを浮かべて、イナンナに手を振った。


「行ってらっしゃいませ」


「ええ、行って来るわ。イナンナもリハビリ、頑張りなさいよね」


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