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殺戮のメサイア  作者: 星島新吾
第一章前編:護身竜の村奪還作戦【逃亡編】

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Alter.27 シグマリアの力

【今回の今北産業】


・ゾンビ。

・顔面凶器。

・ファッキンマゾ。



指導員としてガルシア少尉が立ち会う中、対異端核保持者(ルグズコアホルダー)に対する訓練がついに始まった。


ガルシアはまず準備として、右太ももに手をかざし、異端核の力を引き出した。その瞬間、彼女の軍服は別の衣装へとフォルムチェンジを遂げる。


現れたのは、白を基調にエメラルドグリーンの水玉が散りばめられたビキニタイプの水着だった。


グスティは真面目な顔を保っているつもりだったが、笑ってはいけない場面で、つい鼻に皺が寄り、思わず顔を背けてしまう。


「どうかしましたか、グスティさん」


澄んだ声が、彼の耳に届く。「いえ。…その、初めて見たものですから」


ガルシアは頭上に疑問符を浮かべ、他の隊員に状況を尋ねた。オールウィット隊長がグスティの入隊経緯を説明すると、少尉は納得したように頷き、初歩的な説明をグスティに語り始めた。


「あぁ……田舎育ちですか。それでは異端核保持者の纏衣(シグマリア)を見るのは初めてなのですね。了解しました」


トゲのある言い方でコホンと、少女のささやかな胸を張って、ガルシア少尉は得意げに咳払いをする。


「説明と言っても、我々異端核保持者はそのコアとシンクロし、力を引き出すことでこの姿に変わります。異端核によって生み出されるこの装備、これをシグマリアと呼びます」


まるで教科書をそのまま暗唱しているかのような説明に、大人たちは感嘆の息を漏らす。その後も、自分たちより階級が上の少女の教鞭に、大人たちが真剣にメモを取るという、この世界ではごく自然な光景が広がっていた。


纏衣(シグマリア)は異端核の意志によってその形を大きく変え、またシンクロ率に応じてその見た目も変わることが立証されています」


その話を聞きながら、グスティは、かつて自分が殺してしまった人魚少女も、また貝殻のビキニで戦っていたことを思い出していた。


纏衣(シグマリア)の装備は基本的に、その上下になることが多いのでしょうか?」


その問いに、ガルシア少尉は首を振る。


「先ほどもお伝えしたように、纏衣(シグマリア)は異端核の意志を反映したものです。中には前張りだけのものや、逆に全て体に密着するタイプの纏衣(シグマリア)も存在します。私の装備が一般だという認識は捨ててください」


恥じらいもなく纏衣(シグマリア)について説明を終えるガルシア少尉。


説明を終え、満足げなガルシア少尉とは対照的に、ニプレスやボディスーツ型の纏衣(シグマリア)もあると聞いて、グスティは思わず頭を抱えた。


戦場でそんな相手と出会ったら、集中力が途切れて倒されてしまいそうだ。


もしかしたら、それが狙いではないかとすら邪推する。


油断を誘い、シグマリアを着る者を守るという、異端核たちによる匠の技があるのかもしれない――彼は謎の勘繰りを加速させ、ついには口に出してしまった。


「その…ガルシア少尉の恰好が涼しそうなのは、どんな意図があると思われますか」


質問は明らかにセクハラ染みていたが、今のグスティには、そんなことを気にする余裕はなかった。しかしここは、ビキニで戦うのが当たり前の世界。セクハラで訴えられることなど皆無である。


「いい質問ですね、グスティさん。私の考えはこうです。主にエーテルを体表で吸収する効率を上げるという目的と、排熱。その二つが考えられます。纏衣(シグマリア)を装備しての高速戦闘では常に大量の汗をかきますから、この装備はそれを最適に拭うことに重点を置いて作られているのでしょう」


自信ありげに、堂々と説明するガルシア少尉。彼女は、この説にかなりの自信を持っているようだった。


それを聞いたグスティは、やはり防御面を危惧した。そんな格好で高速戦闘をするのなら、飛び散る石の破片や砂粒などで肌がボロボロになることは間違いない。


乙女の柔肌が血塗れ祭りになる前に、異端核たちは当然その対策を取っているはずだ。一体、そこにはどんな創意工夫があるのだろうか? 彼はその疑問をガルシア少尉に投げかけた。


纏衣(シグマリア)はこう見えて、高純度のエーテルで体を包み込むように保護されています。攻撃を受け負傷した場合でも、エーテルを循環させる機構が体に残っている限り、体は再生し続けるのですよ」


そう言って、ガルシアは実際にナイフで指を軽く切り、瞬く間に再生していく様を見せてくれた。


「痛くないんですか?」と尋ねるグスティに、ガルシア少尉は笑顔で、「慣れるとそれほど痛みも感じません」と答える。


竜の巫女が人魚少女に腹を貫かれても平然としていたのは、彼女のエーテルが尽きていなかったからだ。その事実が判明し、グスティは安堵の息を漏らす。しかし、さらに「エーテルとは何ぞや」という新たな疑問が生まれ、彼の頭はパンクしそうになった。


「エーテルというのは、世界に流れる不可視のエネルギーのことです。我々異端核保持者はそれに接続し、利用することで魔法を使うことができるんです」


ガルシア少尉は笑顔を崩さず、「エーテルについては何となくの理解で大丈夫ですよ」と曖昧な説明しかしなかった。これは、「エーテルの利用者にしか分からないだろう」という、軽い偏見が彼女の中にあったためだった。


情報の嵐を整理しつつ、「エーテルという便利粒子があるぐらいに思っておこう」と、グスティは思考の整理を終えた。


そうしてやっと部隊が揃い、お次は対異端核保持者(ルグズコアホルダー)纏衣(シグマリア)対策に移る。


本来ここから始まるはずだった訓練に時間をかけてしまい、申し訳ないという気持ちになりつつ、グスティは後ろで黙って待っていてくれた他の隊員たちに振り返った。


「あれ…? サウスゴールドとセイジュがいないな……?」


きょろきょろと辺りを探していると、格納庫の方向が騒がしい。グラウンドからゴーレムが並ぶ格納庫まで走ってみれば、二人が既にゴーレムに乗り込み、準備運動を始めているのが目に入った。


「二人とも、勝手な搭乗はマズいんじゃないか?」


軍服のポケットに手を突っ込み、適当に二人を止めようと声をかける。罰はいずれ下るだろうが、その前に少しでも自分への被害を減らそうという魂胆だった。


「フハハハッ。暇だったからな。仕方あるまい」


サウスゴールドは武器を振り回しながら、いくつかの武道の型らしきものを披露する。一方セイジュは、

「コックピットの中は暑くてええぞ。ワシを蒸し殺そうとする匠の粋な計らいを感じる…」

と、コックピットの中をサウナの代わりにして暑さを楽しんでいた。


当然、そんな二人を見たガルシア少尉はくすくすと笑い、オールウィット隊長の顔は青から赤へと劇的に変わる。


グスティはこっそり耳を塞いだ。


「最後まで! 傾聴せんか! この! 大馬鹿者ども!」


オールウィット隊長の雷が落ちる。


その怒声にビビリ散らかし、二人は大急ぎでゴーレムから降りて整列をした。


オールウィット隊長の留飲はそれでも下がらず、たまたま耳を塞いでいたグスティが隣にいた時には、それはもう目を輝かせ、笑みを浮かべた。


「なぜ耳を塞いでいるんだ貴様!」


三人分のゲンコツを食らい、グスティの頭には三段重ねのたんこぶアイスクリームができあがる。


「理不尽だ!?」


それを見て、サウスゴールドとセイジュはゲラゲラと笑い転げる。


「悪いな、代わりに受けてもらって! 次は五段を作ってもらうといい!」


「カカッ。ワシが傷ついたら嫁が泣くからのぉ。すまんの、グスティ」


サウスゴールドの爆笑に、笑い返しながらもグスティの怒りのゲージは静かにぶっ壊れていく。セイジュはセイジュで、グスティの頭にできたたんこぶを羨ましそうに見つめており、それも彼は気に食わなかった。


何とかしてこいつらに軽い仕返しができないか、グスティが考え始めたその時、別の方向から鉄槌が下る。


「ふふっ、では私が二人は処罰しなければなりませんね」


ガルシア少尉の穏やかな口調とは裏腹に、恐ろしい言葉が聞こえてくる。二人の「えっ?」という表情の後、プラズマが彼女の腕から二人に向けて放たれた。


「「ウギャアアアアアアアア!」」


二人はバリバリと稲妻に撃たれたかのように黒焦げになり、口から黒い煙を上げる。


ガルシア少尉はにっこりと笑って、帯電した手を払い、外に電気を逃がした。


「さて、静かになったところでお話を続けさせていただきますね」


にっこり笑って、何事もなかったかのように話を始めるガルシア少尉。地面にはまだ黒煙を上げて、尻を出して痺れている二人の馬鹿が横たわっていた。

次回:やられ役

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