Alter.19 土塊逃走劇part2
///豪華三本立て 二本目////
・ゴーレム乗りのシュネル登場。
・シュネルはお喋りなゴーレム乗り。
・竜の巫女とグスティに新たなピンチ。
思考加速チートを起動し、グスティは瞬時に状況を分析し、対策を練る。怒りで心臓が沸騰しそうになりながらも、その頭脳は不気味なほどに冷静だった。視界にUIが展開され、使用可能なチート能力が一覧表示される。
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【アナタが使えるチート】
・殺戮チート・装甲チート・増殖チート・拡縮チート・上達チート・思考加速チート
・迷彩チート・運命の糸チート・雄っぱいチート
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パターン1:殺戮チートによるコックピット強襲
ゴーレムを飛び出し、殺戮チートで敵のコックピットを直接狙う。しかし、一度降りれば敵に距離を取られる危険性があり、不採用。
パターン2:装甲チートによる肉壁
自らが装甲チートで攻撃を受け止める肉壁となる。敵の素早い攻撃予測が必要だが、思考加速チートがあれば対処可能。自分が盾となり、竜の巫女に反撃の機会を与える。
パターン3:迷彩チートと拡縮チートの併用
迷彩チートで透明なマントを生成し、それを拡縮チートで巨大化させる。チートの範囲拡大を試したことがなく、一発勝負で未知の領域に挑むのはあまりにリスキー。不採用。
パターン4:上達チートによる操縦技術の模倣
上達チートを用い、竜の巫女の操縦技術を即座に数十時間分習得する。身体へのフィードバックがどれほどのものか不確かながら、他の二人が動けない以上、リスクを負えるのは自分だけだと割り切る。
熟考の末、グスティはパターン2を採用。一瞬だけ思考加速チートを解除し、竜の巫女に作戦を簡潔に伝えた。
「……冗談言ってる場合じゃないのよ」
消耗で閉じかかっている目を無理に開き、息を切らしながら竜の巫女はグスティに問い質す。
「俺も博打だ。代案が無いなら、一緒に動いてくれ」
「最悪の提案ね……! 」
グスティはコックピットから身を乗り出し、そのままゴーレムの側面に張り付いた。その奇行を目撃した敵の男は、一瞬唖然としたようだった。
「な…何してやがる…頭逝かれちまったか…?」
グスティのチート能力を知らなければ、それはただ斬られるのを待つ無謀な肉壁に過ぎない。若者が、操縦桿を握る女を守るため、自らの身を挺して攻撃から守ろうとしている――シュネルの目には、そう映った。
「気分が悪いったらねえぜっ……たく。だが俺様の前に立った以上、どんな状態であろうと殺すのがプロってもんだ。その命、貰ってくゼ」
シュネルはハルバードを振り上げ、グスティごと縦に両断せんと、兜割りを目論む。
急降下する巨大なハルバードの着弾点を、グスティは思考加速チートで正確に予測する。手の角度、位置。まるで予知能力者のように、彼は先回りして移動し、味方のゴーレムとハルバードの間に身を滑り込ませた。
思考加速された世界で、ハルバードの切っ先に立つグスティを見て、シュネルが思わず顔を顰める様子がスローモーションで目に映る。彼は、グスティが肉塊と化す瞬間を見たくなかったのだろう。無意識に顔を逸らしていた。
しかし、次の瞬間。グスティの装甲チートによって、バキッという鈍い音と共に、ハルバードの刃が逆に大きく欠けた。
そして「ギィリリリリリィン!」と耳障りな金属音が響き渡る勢いのまま、ハルバードは横に大きく逸れ、武器を握っていたシュネルのゴーレムがバランスを崩す。
「ごちゃごちゃ煩いヤツ…!」
その一瞬を見逃さなかった竜の巫女は、残された力を振り絞ってゴーレムを突進させた。バランスを崩して倒れた敵機を置き去りにし、ひたすら前へと走り続ける。
「オラァー!待ちなさいよ!お前たちー!コラー!」
距離は離れても、通信機からは依然としてシュネルの怒鳴り声が響き続ける。
竜の巫女は我慢の限界だったのか、思わず拳を突き上げて通信機を壊そうとした。その腕を、まるで予測していたかのようにコックピットに滑り込んだグスティが、すんでのところで制止する。
「止めんな」
「この通信機には価値がある。壊すのは勘弁してくれ」
「…チッ」
そうして遠ざかっていくグスティたちの背中を、シュネルは茫然と見送りながら、自身の身に何が起きたのか、必死に整理していた。
「……なんだ今のヌルっとした違和感は?…不思議な力に阻まれたような…いや、しかし音は何かゴーレムじゃない異質な金属に当てられたような……ハァ!?てか、ノーカンだろうがよ!!!今のは!?」
倒れたゴーレムの中から、シュネルの叫び声が虚しく響き渡った。
次回:土塊逃走劇part3




