82話
「交渉決裂だね!」
「……誰のせいだと思ってんだ。はぁ、どうするんだこのままだとゼフィリア王国との戦争になるな」
「へぇー今まで居た国ってゼフィリアっていうんだ。知らなかったよ。でも気にあいらないものは気に入らないよね。」
カイが頭を抱えるが気づかないふりをするフレデリック。逃げ始めている軍の中から1人の男が襲いかかってくる。
「じょ、ジョル様!!貴様よくもジョル様を!!」
「主を守れないなんて残念な従者だね!君も同じところに送ってあげるよ!」
切りかかってきたアモスの剣を叩き切り両足を切り落とす。足の付根を押さえているアモスの傷口を火属性の魔法で塞ぐ。
「あああああああああ、うぐぅ……ま、まだだ」
足を焼かれたアモスが玉のような汗をかきながらフレデリックを睨め殺す。
「で、どうやって戦うつもりなのかな?君はこの後仲間が死んでいくのを這いつくばって見てると良いよ。さっきも仲間が死んでもでてこなかったんだから誤差でしょ?」
「ふざけるな!!殺すなら殺せ!!」
「君は殺す価値もないから僕は殺すつもりはないよ。」
なんか、面倒くさくなっちゃった。全部食べちゃおうか!そしたら掃除しなくて済みそうだしね!
「今から鬼ごっこをしようか。僕が10数えるから僕から逃げれたら生き残れるよ。もし捕まったら死んでもらうけどね。」
フレデリックが逃げる兵士たちに告げる。希望の見えた兵士たちがバラバラに逃げ始める。
「い~ち、に〜い、さ〜ん……じゅ〜う。よし皆いくよ!」
「「キュー!(了解!)」」
大量の鼠型の分身が逃げていく人を生きたまま喰らい尽くしていく。
「ヒッ、やめ──」
「助け──」
「こっちにくるな!死にたく──」
鼠の波が人を飲みこみたびに声が消える。鼠の波が過ぎ去るとそこには何も残っていなかった。
「全員逃げ切れなかったね。」
「わ、私は悪夢を見てるのか?ひ、人が鼠の波に……あ、あははは。夢だ。きっと目が冷めたらいつもと変わらない日常が、」
「あ、まだ生きてたんだ。うーん、これは逃げ切れたってことでいいのかな?おめでとう、君が勝者だよ!」
「やりすぎだ。馬鹿。」
「あ、いて。カイ、叩くなんて酷いよ。」
フレデリックの頭をチョップしながら窘める。何も残っていない戦場を感情を殺した瞳で見ながらカイがフレデリックに尋ねる。
「で、この後どうするんだ?確実にゼフィリア王国と敵対する。……アンタの事だ、何も考えて無いだろうが一応聞いておく。」
「よくわかってるね!まぁひたすら殺し続けてもあきらめるまで戦争をしても良いし、これをゼフィリアに連れて行って無理やり条約結ばせてもいいよね。」
ため息をつき呆れるカイ。
「はぁ、条約なんか信用できない。向こうには戦争を仕掛ける理由もあるしな。」
「理由?なんかあったっけ?」
「……まず、1つ目は国が変わる前とはいえ、戦争を仕掛けている。2つ目は今の惨状だな。生き残りが1人しか居ないからな。報復戦争が始まってもおかしくない。」
うーん、どうしようかな?……まぁ、なるようにしかならないよね!
???SIDE──
数日前、西に向かって人助けをしながら歩み続ける青年が居た。
「ありがとうねぇ。何も無い村だけどゆっくりしていっておくれ。」
「いえいえ、気にしないでください。まだ僕は歩みを止めるわけにはいかないんです。」
モンスターが畑を荒らしているとギルドで聞いた青年がモンスターを退治して素材を村に寄付したのである。
(まだ僕は弱い。きっとまだ彼には追いつけない。)
彼が歩き出すと青年の戦いを見ていた少年がキラキラ年た目で青年に尋ねる。
「ねぇ、兄ちゃん!どうしたらそんなに強く慣れるの?」
「そうだね。お母さんのご飯を残さず食べて、体を鍛えたからかな?」
「嘘だー。そんなんで強くなるんだったらお父さんはもっと強いはずだもん!」
正直な少年の言葉に後ろで聞いていた父親らしき人物がうなだれている。
「そういうことは思っていても言った駄目だよ。傷つく人がいるからね。そうだね……なら毎日木の棒を振ってみるのはどうかな?」
「わかった!お父さーん木の棒ないー?」
どうすれば良いのか満足したのか父親の方に向かって走っていく。
(僕にもこんな時期があったのかな?)
「では、旅の途中なので僕はこれで。」
「ええ、本当にありがとうございます。次寄った時はぜひ泊まっていってください。」
「機会があればぜひ。」
村人に見送られながらさらに西に歩みだす青年。青年が歩き出すと鎧を着た集団が東に進んでいくのとすれ違う。
(何かあったのかな?あっちにはフレイが居るよね。……心配だ。絶対なにかまずいことが起きてる気がする……)
西に行くのを止め東に向かう青年。青年の予想通りフレデリックが戦争を起こしているのであった。




