39話
「フ〜レ〜イ〜」
声にも怒りが孕んでいる。
あ、もしかして!
「アレクシスも、狩りたかった?ごめん全部倒しちゃった!」
「違う!先ずはなんで先に行ったの!講習中なんだから指示に従って!し、か、も、森を壊しちゃうし……どうするのこれ?」
周囲を見ると森の中に綺麗なサークルが出来ている。
あ、直らないんだった!どうしようか?……出来ちゃったものは仕方ないよね!
「あはは、ごめん。あ、」
謝罪をしているとボキッと音を立てて剣が折中心かられる。
あ、壊れちゃった。ってヤバ!勇者凄い怒ってるじゃん。ど、どうしよう?
なんとも言えない変な空気が流れる。そんな中、男がお礼を話す。
「あーこんなタイミングで礼を言うのもおかしいと思うが、済まない助かった。」
ハッとした顔で、勇者が男をみる。
怒りすぎて忘れてたね!まぁ僕も忘れてたんだけどね!
「大丈夫!それより怪我はない?」
「ああ、怪我は軽傷だ。武器も無事みたいだし大丈夫だ。」
「ところでどうしてこんな無茶を?」
「ああ、初めは2匹だったんだが、遠吠えを上げられた途端に数が増えてな。ッ!?逃げろ!」
男が指さした方に目を向けると、死んだはずのウルフが生きていた。体が直りつつ周りのウルフを吸収して一つのスライムになる。
「!?僕が時間を稼ぐ!2人はギルドマスターにユニーク種の存在を伝えて!」
「わかった!行くぞ、嬢ちゃん!」
「何で?一人で戻ってて、アレは僕の獲物だよ。」
「「はあ!?」」
2人して驚くが、無視をしてスライムに拳を叩き込みながらとステータスを見る。拳がふれた瞬間2人から悲鳴が上がるが無視をする。
トラップスライム、RANK_B ︙10000 MP200/500
スライム系の上位種。生物、無機物全てに擬態出来る。酸性が強く簡単に人が溶ける。
うーん物理無効かな?殴ってもダメージ無いみたいだし。
勇者が心配し近付いてくる。
「大丈夫?!手溶けてない?」
「酸耐性あるから平気かな?でも倒し方考えてるところだよ。」
勇者が、はぁ、とため息をつき、二本のショートソードを腰から抜きながらボソリとスキルを発動する。
「悪を赦さない心」
2本のショートソードが白く温かな光を出す。ショートソードを光らせると神速の如き速さでスライムに斬りかかり表面が半分以上斬れる。斬れた場所から溶けていく。徐々に全身が溶けて水を残して消えてなくなった。
物理無効じゃないの?何か溶けてくね。どんな能力なんだろうね?
「魔石がスライムは魔法がないと倒せないんだ。あるタイプは魔石を破壊すれば良いんだけどね。じゃあ帰ろうか」
獣人は報告のために先に帰ったが他に居ないかの確認で2人で残ることになった。スライムとの戦いで気になったことがあったため、質問攻めにする。
「ねぇ!何のスキルなの?!何でスライムがとけたの?」
「うーん、秘密かな?」
秘密と聞いた瞬間に体を地面につけて全力で駄々をこねる。
「教えて!教えて!」
「はぁ、わかったから、駄々をこねるのやめてよ……」
「わかった!早く教えて!」
流石に見てられなかったのか勇者が止める。
どんなスキルか、楽しみだね!名前はブレイブソウルだっけ?
「さっき使ったスキルは悪を赦さない心って言って人類以外、つまりモンスターに対して攻撃が当たれば即死する。でも制限もあって、初撃にしか乗らないから避けられたらおしまいで、次にスキルを使用しても一度発動した相手には効果が無くなる。でも抜け穴もあって2本剣を手に持てばチャンスは2回。手に持てれば初撃の回数も増やせるんだ。」
「いいの?そんなに詳しく説明しちゃって。」
勇者が、ジト目で睨んでくる。
「君が説明しろって言ったよね?しかも詳しく言わないとずっと聞くでしょ?」
「うん!」
凄いね!短時間しか一緒に居ないのによくわかってるね!
結局他に見つからずギルドに帰ることになった。まずギルドに着くと備品である大剣を壊したことをアーシャに説教された。その時点で勇者はギルドマスターの元に逃げていた。
クッ、逃げられたか。1人だけ説教?何でぇ?人を助けたのに。
「備品を壊すなんて……」
「あはは、ごめんなさい。」
素直に謝るが、アーシャにジト目で、
「いいですか?備品は皆で使うんです。無茶な使い方をしたら壊れるに決まってるでしょ?」
下を向き、鼠耳をしょんぼりさせる。ついでに尻尾も足の間に挟む。
「可愛い……ゴホン、騙されませんからね?」
「あはは、バレてた?大剣は弁償するね。あ、耐えられそうな武器を売ってる場所知らない?」
「弁償は大丈夫です。勇者様の証言で経年劣化と判断しましたから。武器屋は明日に案内しますね。」
「えっ?じゃあ怒られた理由は?」
「……秘密です。」
そう言うと、受付の奥の机に戻る。
えー怒られ損じゃんか!まぁ壊したのは事実だし、仕方ないかな?
説教も終わり、ギルドの仮眠室に入る。
とりあえず体洗いたいんだけど風呂の文化が無いからなぁ……まぁ仕方ないし拭くだけで我慢しよう
体を拭き着替えて寝る。服は近くの洗濯屋というお店に任せているため洗濯は溜まっては居ない。
じゃあお休みなさい!
ギルドマスター&勇者SIDE──
ギルドマスターと勇者が対面で紅茶を飲みながら話している。
「で、今日はどうだった?」
彼がヤバいことを知っているため、軽く笑いながら話しかけるギルドマスター。それにジト目で返す勇者。
「先ずは薬草に関しては文句無しで100点ですね。」
「ほう、そんなにか。」
「はい。慣れると僕の倍の速度で、採取してましたよ。」
「それは早いな。そのうち全部取り尽くしそうだな。」
2人共簡単に想像できたのか、黙って紅茶で喉を潤す。しばらくの間沈黙が流れるが、勇者が続きを話す。
「討伐に関しては60点ですかね。」
「?何故だ?普通に強いのにか?」
「ええ、先ずはダンジョン以外の森の破壊は基本的に禁止と伝えたのですが、普通に木ごと討伐してました。」
頭を抱えだすギルドマスター。そんなギルドマスターにトドメを刺すかのように続ける。
「しかも、さっき話していたユニーク種のスライムを素手で殴りました。」
「はぁ?!ヤバいな。頭と胃が痛くなってきた。」
「あ、僕も欲しいです……」
ゲッソリするギルドマスターと勇者。
「あと数日あるんですよね?」
「ああ、頑張ってくれ」
「でも所属している以上一番迷惑が、かかるのはギルドマスターですけどね……」
勇者の言葉のカウンターで机に突っ伏す。
彼らに平穏は訪れるのかそれは誰にもわからない。一つわかるのは、その会話を影から見ている鼠が居る限り訪れることは無いであろうと言うことだけである。




