37話
しばらくの間沈黙が流れ、ギルドマスターが口を開く。
「すまなかった。まさかな、捨てられたとは聞いていたがそんな経験まで……」
「気にしなくていいよ。結構前だから。それに今の生活が楽しいからね!」
ギルドマスターの言葉に後悔の色が見えるが軽く答える。それが逆に気丈に振る舞っているように見えたようで、2人とも自分の発言を後悔する。
ヤバいよ!どうしようかな?どう空気をかえようか?
ギルドマスターが空気と話題を変えるために口を開く。
「話は変わるんだが、明日から勇者も一緒に行動するからそれを講習代わりにしてくれ。」
「うん。わかったよ。あと、これ解体頼みたいんだけど、コカトリスの羽はあげるよ。」
ギルドマスターに提案すると首を振る
「いや金は払う。」
「うーん、じゃあ成果が出たらでいいよ?どう治すかは僕もわからないもん。あ、数が必要なら後で取りに行こうか?」
「……それは有り難いがとりあえず成果が出てからだな。」
「うん僕の方でも試してみるよ。要件は終わった?」
「いやまだ、一つ残ってるな。ギルドカードを出来れば更新して欲しい。」
理由が分からず、首を傾げる。
「なんでぇ?」
「はぁ、石化無効は代用できないだろ。」
代わりに答えるマイケル。
「そう言うことだ。看破や浄化は数がいるが、石化無効は少ないと言うか居ないからな。」
「まぁ良いよ。」
ギルドカードをギルドマスターに手渡す。
面倒になったら身分を捨てるしいっかな。それに最悪地図から国が無くなるだけだしね。
「さて、俺の方は終わりだな。そろそろ門番の仕事に戻らせてもらう。」
「ああ、じゃあな。石化の解除方法がわかったら、話しに行く。」
「そうしてくれ。」
マイケルの方を見ると、先ほどの顔とは違い何処か嬉しそうだった。
「じゃあ僕も解体場に行くね。」
返事が来る前に部屋を出て解体場に向かう。解体場に着くと気付いた人から並んでいる順番を譲り目を合わせない。
何でだろうね?アレかな?ルーカスとの決闘の話がかなり出回ってるのかな?
はぁとため息をつくとライアンが近付いてくる。
「おう、どうした、じょ─坊主」
「今嬢ちゃんって言おうとしたよね?」
「気の所為だ。気の所為。それよりなんだ、それを解体すればいいのか?」
「うん。羽はギルドに渡して。」
「羽を?矢にしか使わないだろ?」
「ちょっと耳を貸して。」
「ん?ああ、わかった。」
屈んで耳をフレデリックの顔の高さに合わせる。
「実は石化をこれの羽で治せるらしいんだよね。」
「?!?!」
びっくりして叫びそうになるのを手で押さえるライアン。
「マジで言ってんのか?」
「割とマジなんだよね。だからできるだけ内緒でお願い。そう言えばさ、皆石化解除できるって聞くと嬉しそうにするんだけどなんかあったの?」
「そうか……坊主は知らないか。アレは今から10年以上も前の話だ。俺達が森のダンジョンと呼んでいるダンジョンから魔物が溢れたんだ、だがその最溢れたモンスターはトカゲのような魔物が多くて多くの死者を出した。」
うーんなかなか重いなぁ。僕は嘘が重いけど事実が重いのは嫌だなぁ
「だが、一番被害を出したのはトカゲじゃねぇ。鶏だ──ちょっと待て!もしかして、」
「うん!その鶏だよ?」
頭を抱えて、座り込むライアン。ブツブツとコイツ頭のネジ抜けてるんじゃないか?と失礼なことを言っている。
「聞こえてるんだけどー」
「悪いな、わざとだ。それよりまさか石化させる奴で石化が治るとはな……」
「僕も治せるのは分かってるんだけど、治し方まではわからないんだよね」
「そうか……だがそれだけでも新しい一歩だ」
頭を乱暴に撫でてくる。ゴツゴツとした硬い掌だったが、凄く温かかった。
何かこの町の人いい人が多すぎるよね……ルーカスは知ーらない。
「じゃあよろしくね。羽はギルド、肉は僕が食べるから。あ、あと骨も残しといて。」
「わかったが、何故骨を?」
「うーん色々試したいからかな?」
「まぁ、わかった。」
苦笑いしながら返事をするライアン。
焼いたら骨も味変わりそうじゃない?鶏ガラは面倒いし何より時間がかかるからなぁ……齧るのが最強だね!
──三十分後
「終わったぞ。本来は料金を取るんだが、ギルドに羽を降ろすみたいだからタダでいいぞ。」
「ありがとう!」
部位ごとに解体された肉をギルドで使う採取用の袋に詰めるふりをして、収納の中に入れる。収納に入れ終えたら直ぐに解体場を出て仮眠室に向かう。寝る前に体を濡れたタオルで擦る。鼠の時は気にしていなかったが、かなり汚れが出てくる。
良かった、そのまま寝なくて。気付いたら臭くなりそうだもんね!じゃあ清潔(?)になった所でお休みなさい!
???SIDE──
人間のバラバラ死体の側から離れ祭壇に膝つき胸の前で祈るように手を組むと、白衣を着たくまの濃い女が狂気的に微笑む。
「さて、そろそろ始めようかな。……私たちが世界をひっくり返すからもう少し待っていて下さい■■■様。」
誰かが見ていたら見惚れていたであろう光景だが、見ているのは恐怖で死んでいった人々の瞳と人間の体のパーツを無理やり動物に縫い付けて作られた肉片のような醜い見た目の生物が複数体。
「ねぇ?君たちも嬉しいだろ?私に使われてさ。大丈夫死ねなくなってるから安心して。」
優しく自分の子供に話しかけるながら複数ある内の頭を撫でる。
「コロシテ、シニタイ、ユルシテ、ユルサナイ、イタクシナイデ、タスケテ、ナンデワタシダケ、コロス、コロスコロスコロスコロスコロス……」
女の言葉に反応し同じ言葉を繰り返す複数の頭。その瞳全てに憎悪と絶望の色が見える。
「大丈夫。もう少ししたら外に行けるからね。ああ!楽しみだ。どんなこの町の人は断末魔を聞かせてくれるのかな?」
話がかみ合わないまま、近くの部屋に入っていく。女が入るってから絶叫が絶えず聞こえてくる。
──見つめたら吸い込まれてしまうような深淵のような黒い二つの瞳がそんな地獄のような光景を見つめている。
へぇ~、こうやってキメラは作られていたんだね。……頭おかしいんじゃないのかな?でもこれを殺したらつまんなくなるし、報告だけにしようか。犠牲になった皆ごめんね?最後に僕を楽しませてね?
──厄災は選ぶ。やりたいように犠牲を気にせず全てを喰らう。例えそれが神々でも──




