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転生したけど俺だけゲームが違う。  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
二章

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第59話 会議おじさん



「いやー、コルンさんのご飯は美味しいのです! 食べる手が止まらないとは、まさにこのことなのですよ」

「あらあら、まるで一年以上も食事を待ちわびていたような勢いですね」

「はっはっは、言いすぎじゃない? ほんの二週間ぶりですよ、コルンさん」


 俺たちは食堂に移動して、軽食としゃれこんでいた。

 メニューはトウモロコシを混ぜ込んだパンケーキだ。この世界の食糧事情は、さほど悪くない……が、良いというわけでもない。精製済みの砂糖はそれなりに高価なので、ラティーシャちゃんに対するご褒美でもある。

 ……金級冒険者の財布なら、いつでも買えるだろうけどね。


 さて、五枚は積み上げられたパンケーキをぺろりとたいらげて、ラティーシャちゃんがフォークを振った。


「ぷふう。美味しかったのです、ごちそうさまでした。……では、世知辛いですが、仕事に戻りましょうか」

「だねェ。どの程度、聞いてる?」

「こっち側の街道整備を担当した冒険者の皆さんから、ある程度は」


 念のため、街道に『石灯篭』が設置されたことや、その効果範囲などを中心に、情報のすり合わせをおこなう。


〈ザルツオムは変わりない?〉

「ええ、いつも通りの外交お手紙攻勢なのです。減税とトウモロコシの無償配布で、市民生活は少しずつ改善されてきているのですが、経済はあまり活発ではないのです。テコ入れしていきませんと。……ケンゾーさん、ご提案はありますか?」

「うん。ひとまず、三つやりたいことがある」


 一本、人差し指を立てて、言う。


「まずひとつ。ファビの魂を鑑定できる道具があるかもしれないから、エルフの集落跡まで発掘に行きたい」

〈いのいちばんに言うことがそれ? 政治関係ないじゃん、為政者としての自覚が足りないなぁ〉


 そう言われると返す言葉もない。だが、意外にもラティーシャちゃんが俺に同意した。


「開拓や経済的には、たしかに急務ではないのです。が、いちばんに手を付けるならそこからだと、ボクは思うのですよ」

〈ラティーシャまで……〉

「ファビさんの事情が安定しないと、ケンゾーさんが政務に集中できませんから。政治の基本は身近なところを固めることなのです。なにより、ファビさんのことを大切に思っている証なのですよ」

〈……わかったよ。後回しでいいのにさ〉


 証だなんて言われると小恥ずかしいけれど、要するにそういうことだ。ファビは家族だ――ファミリーだ。ファミリーは大事だ。ドミニクも言ってた。ファビを後回しにはしない。


「じゃ、今日中に俺が判子を捺すべき書類をやっつけるとしようか。明日、俺とファビはまた開拓拠点に戻って、エルフ集落跡の発掘に向かう。護衛も連れて行くから、安心して。そのあいだ――ふたつめ」


 二本目の指を立てる。


「街道の安全が確保できたから、『大鍛冶城1』まで商人を呼び込んで、商売を始めたい。ラティーシャちゃんには、そっちをお願いしたいんだよねェ」


 撒き餌として、上質な魔石もたくさん持ち帰った。ティリクの森の恵みが外に出て来たぞ、と働きかけるわけだ。

 そして、やってきた商人たちは、まずザルツオムで様子見をするだろう。安全だと判断した商人は、開拓拠点に向かう。人間というやつは、生きているだけでコストが発生するものだ。ザルツオム、開拓拠点の双方で金が遣われることになる。

 外貨の獲得、インバウンド――多少なりとも、経済活動が活発になるといいのだが。


「ふぅむ。もちろん、やらせていただきますが……、コルンさんもまた、ケンゾーさんについて行ってもらいますから、またボクだけ置いてけぼりなのです。泣いちゃいそうなのです。寂しさと激務で」


 激務で、のほうに力が入っていたように思う。


「そう。だから、みっつめ。信頼できる文官を、最低でも二人は雇いたい。でも伝手がないから、ネオンプライム家に斡旋してもらえないかなって……」

「ああ、なるほど。それは確かに、ボクにしかできない仕事ですが……、いいのですか? ネオンプライムに借りを作ることになるのです」

「仕方ない。それ以上の利益で返すよ」

「あるいは、ボクを娶って帳消しにするか、なのです」


 いたずらっぽく言われる。このネタ、いつまで擦られるんだろう。

 というか、だ。


「あのねェ。仮に、おじさんがラティーシャちゃんとそういう仲になるとしたら、むしろ、きっちり利益で返してからじゃないと、駄目だと思うんだけど」

「おや。その心はなんなのです?」

「そうじゃないと、ご両親に面と向かって『娘さんをください』って言えないし、胸を張って『この娘が俺の嫁です』って言えない気がするんだよねェ。……仮にの話だよ?」


 ラティーシャちゃんが、わざとらしく胸に手を当てた。


「きゅん。……今のはボクの心の音です」

「だから仮にの話だって」

〈きゅん。……今のはファビの心臓の音だよ〉

「ないだろ、心臓。――突っ込みづらいボケはやめてほしいなァ」

「きゅん。……今のはわたくしの(はら)の」

「あ、もういいです」


 ともあれ、やることは決まった。

 翌朝、俺たちはまた馬車に乗って、開拓拠点へと引き返したのである。


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