ヒューマンエラーが事故発生の致命的原因になりうるというのは、航空機として設計上の欠陥ではないのか?(ネパールの事故を受けて)
2023年1月15日に発生したネパールの航空事故は痛ましい映像が次々と露わになっていくことで多くの者もショックを受けた事だろう。
筆者もその一人であり、まさか墜落事故直前までライブ配信している人間がいるとは想像もつかず、特に平凡極まりない機内のライブ映像から一転して悲劇に移り変わるのは逆に現実感を喪失しかねないのほどの衝撃であった。
21世紀も20年過ぎ、ライブ配信が誰でも手軽に行えるようになるほどネットワークが発達した現在、痛ましい衝撃映像の瞬間を世界の多くの人間がほぼ同時刻に共有できる状況となっているわけだが……
銃撃事件どころか航空機事故までありうるというのは、どこか頭の片隅において認識として留めておいていたとしても、普段から「ありうるだろうな」――などと考えられるものではなく、存在が公となっただけで相当なショックを受けたほどである。
本件に関しては外と内、双方の映像が撮影されているが、内部ではある状況から突然にして爆発炎上。
外から見た状況も同様であり、突然左に機体が傾き墜落に至ったことが推測されるような記録が映像として残されている。
さて、筆者がこれら一連の映像を見てすぐに頭に浮かんだことは1つ。
事故がヒューマンエラーにしろ、機体自体に問題が生じていたにしろ、本機においては一部のバリエーションを除き類似した墜落事故が極めて多すぎるということだ。
実は昨年11月にも事故機のATR72のベースととなったATR42が着陸失敗による事故を起こしているが、このATR42及びATR72は離着陸における事故が極めて多い機種である。(後述するが一部のバリエーションを除く)
ようは空中で問題が生じて墜落したというような事は無く、そちらの方面での信頼性は抜群である一方、これまでの事故記録の大半が離着陸時に発生しており、その原因の1つとして機体後部の設計による機体特性によって離着陸に難のある極めてデリケートな機体であることが指摘されている。
例えばATR72と世界でシェアを争っている競合機のDHC8については、操縦ミスに起因する墜落事故を2件起こしているが、どちらも極めて稚拙な操作ミスや判断ミス等のヒューマンエラーに起因する事故である。
確かにDHC8については数度胴体着陸を行う事故を日本を含めて起こしているし、空中でエンジンのタービンが破損する事故など、状況次第で取り返しのつかない重大事故につながったかもしれない重大インシデントも発生させてはいるものの、離着陸における事故においては胴体着陸を除けば発生しておらず、基本的に素直な操縦特性であるとされる。
本機の問題点があるとするとその故障率の高さであり、当時の全日空の社長が2007年の株主総会にて44件の故障があったことを報告しつつ、他の機種と比較して1桁多いと苦言を呈す程だった。(一般的な故障は多くても機種ごとに10件程度が普通で、1機種で10件を超えると多いというのが業界内での理解)
だがこの発言の裏にATR72が関与している事を知っている者はどれほどいるだろうか。
実は全日空がDHC8を採用した理由こそ、ATR72の事故率の高さや離着陸における事故の多さを加味してのものだった。
既に当時DHC8と熾烈な販売競争を行っていたATR72は世間では燃費が良いと言われるDHC8よりも機体価格が安く、一部部品がエアバス機と共通仕様である結果ランニングコストにも優れ、かつDHC8以上に勝る燃費性能で極めて経済性に優れているとの評価であった。
普通に考えればシェア率も若干ながら上であるATR72の方が経済性に優れているのだから経営者ならばこちらを採用したいと思うだろう。(運用数が多いという事はパイロット確保の面でも優位性がある)
だがATR72は既にDHC8の購入を検討した時点で複数回の墜落事故を起こしており、特にその頃は低温環境における着氷に起因したものが多く、当時はまだ調査中であったが最終的に米国にて重大な欠陥であると判断され改善命令が出されるほどの不安が生じていた他、人的要因によって生じた墜落事故においても離着陸時におけるちょっとしたヒューマンエラーが一気に墜落に繋がっていることが判明していたため、事態を重く見た全日空はより安全性を求め、経済性をやや犠牲にする形で信頼性があるとされたDHC8を選択したわけである。
結果から述べればDHC8は高い故障率ゆえに想像以上に収益性が悪く、JAS時代からの繋がりでATR42運用の実績のあった日本航空が後に導入したATR42-600及びATR72-600(事故機のATR72-500の改良型の次世代機)の方が故障率も低く未だに一歩間違えれば墜落したかもしれないというような重大インシデントを殆ど起こしていない事から、経営戦略としては失敗であったとのレッテルを張られているわけだが……
筆者は今回の事故を鑑みてもDHC8の選択は英断だったと思うわけだ。
こと事故率の高いATR42-500とATR72-500を見れば一目瞭然。
全日空が検討した頃に改良型のATR72-600は存在しなかったわけで、全日空に与えられた選択肢はATR72-500かDHC8-Q400だったのである。
その状況で事故率の高いATR72-500を採用しようと思えるかどうかである。
結果的にDHC8-Q400は胴体着陸事故を起こしたし、未だに故障率は高め。
しかし世界を見ても2010年以降に同型機の墜落は1件も無い。
シェア率から逆算した双方の重大インシデント比率を見ると確かにDHC8の方が高い。
けれども死亡事故を起こしていないという一点においては勝るのだ。
これが重要なのではないかと思う。
ちなみに余談だが日本航空が導入したATR42及びATR72の600シリーズは500シリーズとは別物と言って差し支えが無い。
報道等ではATR72型と一緒くたにされるのだが、こいつは冗談抜きで見た目が似ているだけの別の機体。
外観は殆ど変わっていないように見受けられるが、本機は新たに親会社となったエアバスによって大規模に中身が再設計され、エアバスの操縦システムを導入するなど先進的な試みがなされたものである。
エアバスの宣伝ではフライバイワイヤこそ搭載されていないがアビオニクスについてA380と同様のものを導入し、安全性を大幅に高めたとあるが、それだけじゃない。
他にも離着陸時において使用することを念頭にいれて導入されたブーストモードというのが搭載されており、状況次第でエンジン出力が片側5%、双方で10%引き上がるモードを標準搭載している他、座席等の機内の部材を軽量化し、最大離陸重量が増加している。(通常運用においては軽量化によりエンジン出力に余裕ができやすくなったと言える)
このブーストモードは従来機である500シリーズでは緊急時限定で短時間のみ使用可能な緊急時最大出力モードを常時使用可能としたもの。
500シリーズでは緊急時のみ使用可能とされた事から使用するにあたって特殊な操作設定が要求されたのだが、改良型のエンジンとエアバス社の優秀なアビオニクスによって自動で左右のエンジンの出力を最大で定格の5%ずつ上昇させられるようになっている。(緊急時においても従来通り、より簡便な所定の操作で手動にて常にブーストモードにできる他、かなりの時間ブーストモードを稼働できるとされる)
これにより離着陸時において万が一急降下しても復帰しやすくなった他、着陸復航がやりやすくなった。(ATR72-500にて着陸復航時における判断の遅れから墜落事故へと至ったことへの対策とも推測される)
また、左右エンジンの出力及びプロペラピッチを高精度に飛行中に微調整することで水平飛行時における、特に"低速時に発生しやすい胴体構造に起因する初期型から500シリーズまで共通の短所とされた横滑り現象"を皆無にさせた点は特筆すべき点である。
ちなみにこの横滑り現象の解消においてはエンジンだけでなく胴体構造の一部見直しによってもなされており、具体的に述べると垂直尾翼のラダー構造の一新、ラダー制御アビオニクスの一新、そして水平尾翼の内部構造含めた一新によって可能とした。
このため600シリーズについては水平尾翼の構造変更とエアバスのシステムによって"ディープストールの発生が極めて生じにくくなり、また仮に生じたとしても尾翼に頼らない形で早期に改善できる"――とされる。
ここまで述べればいかに別物であるのかおわかりいただけると思うのだが、しかしこれまでの説明を聞いて思う事が無いだろうか。
そう、裏を返せば初期型から500までのATR42やATR72というのは「低速での横滑り現象」を起こしうる独特の癖があり、かつ「ディープストール」が発生しやすい機体だった事になる。
なにしろATR72-600というのは導入を検討した日本航空向けにエアバスが発した宣伝文句が「尾翼構造の見直しとアビオニクスの改善により横滑り現象を解消」とあり、恐らくこれがDHC8を増備するかで迷った日本航空がATR72-600を導入した決め手と推測されるため、600シリーズとそれ以前とでは相当な違いがあるものと思われる。
実際問題ATR72-600は500以前のような機体特性に起因する墜落事故を起こしていない事からも信頼性の高さは証明されており、国外のパイロットの評価でも「初期型からATR72-500までの機体とATR72-600は見た目は殆ど同じだが、全く別の機体。600は真のリージョナルジェットの傑作機であり、500以前は離着陸がピーキーすぎてパイロット負担が極めて大きい経済性だけを優先させた旅客機」と述べる程。
一応述べるとATR72-600は既に2回墜落事故を起こしているが、前者はパイロットの完全な判断ミス及び操縦ミス、後者は左エンジンに問題があったものの無事であった右エンジン停止からの再始動を行ったために両エンジンが停止した状態で墜落したものであり、機体の信頼性を大幅に損なうような重大な欠陥に起因した墜落事故は起きていない。
その信頼性から途上国ですら600シリーズに乗り換える事例が相次いでいて、ドバイの航空会社では購入したばかりの500をすぐに手放して600に更新するぐらいなので本当に信頼性の面において別格なのだろう。(日本も例外ではなく天草エアラインがDHC8からATR42-600に更新したりしているが、ATR42-600やATR72-600は2010年頃を境に国内で増殖し続けている)
それこそ昨年3月に奄美空港で発生したATR42-600の滑走路逸脱事故も、着陸寸前に強い横風に流されて操縦困難に陥った際に機長と副機長による連携ミスがあり、ゴーアラウンドなどの措置が行われなかったために生じたヒューマンエラーに起因するインシデントと結論が下されたが、これが500だったなら逸脱どころではなかったのではないかと考えられるほどだ。
DHC8かATR72-500で迷った全日空も恐らくATR72-600がその頃にあったならば購入したのかもしれない。(というかこのままATR42-600とATR72-600の導入が国内で進めば全日空も採用するのでは?)
それが現在日本の空を飛ぶATR42-600及びATR72-600であり、今のところ国交省も国内便のATR42及びATR72の飛行停止措置などは行っていないわけである。
それにしたって「横滑り現象を解消」という宣伝文句が怖すぎる。
実は500シリーズ以前については、飛行中にエンジンが1機停止すると横滑り現象を起こし、そこからディープストールを起こして一気に左右にバンクしつつの急降下を起こしての墜落しかねない短所があった。
実際にしかねないどころかATR72-500型で墜落事故すら起こしているし、その繊細な特性を意識しすぎた結果なのか、第二エンジンが停止したにも関わらず第一エンジンごと再起動しようとして墜落した事故すらある。(単純な聞き違いとも言われるが事実関係は解明されず)
墜落事故のほぼすべてが離着陸時に発生している点から考えても離着陸時に難がある機体なのは間違いない。
今回の事故もそうだ。
映像を見れば空港付近にて突然左にバンクし、そこから一気に操縦不能に陥りながら墜落したことが確認できる。
ここから予想される原因は過去の事故のように滑走路を見誤りパイロットが急制動を行った結果ディープストールを起こして一気に左にバンクして機首下げからの墜落を起こしたか……
あるいは離着陸時に乱流を受けて水平尾翼が機能を喪失して横滑り現象を起こしたか……
機体の水平尾翼に故障が起きていたか、あるいは主翼側に故障が起きていて結果機首下げが生じており、それを解消しようとして機首を一気に上げすぎたか……
ともかく既に国外でも報道されている通り、何らかの原因からディープストールを起こし、横滑り現象からの急降下によって墜落したわけである。
事故原因は現在調査中であるが、過去の事故映像と照らし合わせてみても初期型から500シリーズまでのATR42やATR72はいつも似たような落ち方をする。
これはもう設計上の欠陥ではないだろうか。
元々、ATR72というのはT字尾翼のため、一般的な尾翼構造を持つ旅客機よりディープストールを起こしやすい構造ではある。
T字翼を採用している理由は2つ。
1つは水平及び垂直尾翼の配置をある種理想的とできるので特に水平尾翼の効果を増大されられるため。
T字翼では薄い垂直尾翼の上、あるいは垂直尾翼に内蔵される形で尾翼を搭載できることから水平尾翼を短くすることが出来るという長所がある。
他方で一般的な尾翼と同じ全長とすればその分、効力を増大させられ、得られる揚力も増大するので短距離離陸能力を付与できるなどメリットがある。
リージョナルジェットではより滑走路の短い空港で利用できることが求められる事から、離着陸性能は確保しておきたい。
しかし主翼側でそれを果たそうとすると重量増大に繋がる他、機体の抵抗も増える懸念がある。
重心位置も偏ってしまいかねず、余裕のない小型機であるリージョナルジェットでは合理的とは言えないかもしれない。(なお設計次第ではある)
それこそDHC8やATR72では多くの旅客機が装備する主翼の前縁フラップすら軽量化(に伴う構造強化)のためにオミットされているぐらいであるが、オミットしてもなお離陸性能を向上させられる長所があるわけである。
2つ目は燃費性能。
胴体に直結された水平尾翼というのは相応の抵抗となる。
これにより燃費や最高速度に影響受け、経済性をなるべく優先したいリージョナルジェットでは合理的では無い。
例えばDHC8やATR72はターボプロップ機では相当に快速な部類(DHC8の方が最高速度は上で巡航速度は650km/h以上)に入るが、これを成しえているのもT字翼としているからに他ならない。
ATR72ですら巡航速度は500km/hを越えており、YS-11などのそれまでのターボプロップ機が400km/h程度であったことを考えると100km/h~200km/hも速いわけだ。
さすがにジェット機に劣るがそれでもこれだけの快速性を有していれば回転率が上がるし乗客への負担も減る。
だがこの2つの長所に対して大きな短所が生じる。
それこそがディープストールを引き起こしやすいというもの。
過去には構造が複雑となり構造の複雑さに起因する不具合や整備不良からの故障により墜落というのもT字翼特有の短所とされたが、これらは昨今の技術力で大幅に解消されつつあり、T字翼特有の問題というとやはりディープストールになる。
ディープストールとは何かというと、急激な機首上げなどを起こした際に尾翼に向かう風の流れが主翼によって遮られ、結果的に尾翼が気流剥離を起こして急激な姿勢変更などを生じさせてしまうというもの。
これは機首上げだけに限らず、前を進む別の航空機によって生じた乱流を受ける事でも生じさせることがあり、過去墜落事故すら発生させている。
通常の胴体構造の場合、乱流が生じても機体の胴体構造によっていなしていける事からディープストールは生じにくく、かつ急激な機首上げを行っても尾翼配置が適切化されている事から気流が遮られるという事もないのでよほどのことが無い限り発生しにくい。
それこそ最新鋭機の787やA350なんかはエンジン性能の高さによりテスト飛行時に"自分のことを軍用ジェット戦闘機と勘違いしている旅客機"とも形容したくなるような急激な機首上げによる急上昇を見せつけたりなどしているが、T字翼の機体はとあるメーカーの機体を除いてこれが真似できないのだ。(A350のテスト飛行に至っては前縁フラップを出しながらの急旋回を行い、完全に自分を戦闘機か何かと勘違いしているような飛び方だったりするが、最新鋭の技術は360人乗り旅客機でこれを可能とした)
基本的に迎角25度以上はディープストールを起こしかけないので危険とされる。(一般的な構造の旅客機の場合は30度から警報が鳴るが、対策のされていないT字翼の航空機の場合は30度はディープストールを起こしかねない危険領域)
ゆえに離陸滑走距離は短くとも、その後に他のジェット旅客機が行うような急激な急上昇はしていかない事が多いと言うか、出来ないのだ。
急激に機首上げするほど危険であるためだ。
この弱点があるため、T字翼は一時期旅客機に積極導入されたが廃れ、近年ではリージョナルジェット等ででしか見られない特徴的構造となっている。(旅客機を除けば貨物機などでよく用いられる構造ではある)
中型機以上においては特に滑空性能や安定性が重視される事から、離陸性能の改善や燃費面での長所があったとしても短所の方が目立ちすぎて採用できないわけだ。(リアエンジンの機体が昨今のエンジン径増大の流れにより廃れたからという理由もなくはないが、安全性の方が重視されたため)
もちろん、航空機製造メーカーが何も対策を施さなかったわけではない。
前述のとおり、ATR72-600は各部の見直しで別物と呼ばれるほど信頼性が向上し、筆者は「報道でATR72と一緒くたにするんじゃなくATR72-500と600の違いをきちんと説明すべき」だと思う程であるし、他社のT字翼を採用する最新鋭リージョナルジェットの様子を見てもフライバイワイヤやCCV設計の導入、合わせてフラッペロンやスポイラー等の搭載による安定性の向上によって短所を大幅に解消している。
ホンダジェットのように最新鋭の流体力学と複合素材を用いる事で従来は不可能とされていた主翼から遠い位置により小型の水平尾翼を配置してディープストール対策とする事も行われているし、最新鋭機であればあるほどT字翼の水平尾翼は小型化され、より主翼からの影響を受けにくくしている様子が見受けられる。
また、これは特定の1社限定であるが、リアジェットのような方法での解決法もある。
リアジェットではかねてよりディープストール対策のため、機体の後部にイルカのヒレのごとく固定翼を配置している。
このフィンは当初こそ水平尾翼が効力を失った際に機首を自然に機首下げに戻すための構造であったのだが、実は最新鋭のリアジェット75ではこの固定翼が大幅に大型化され、後部のみであるがさながら複葉機のごとき状態となっていたりする。
一見して抵抗が増大してしまい意味が無いように思えるのだが、なんと従来機よりも機体後部の抵抗は減っているのだという。
なぜなら、従来はあくまで機首下げのために取り付けられていたフィンは最新鋭機では水平安定飛行のための構造に改められたからだ。
最新鋭の流体力学をフル活用したことによりより小型化した水平尾翼は、なんと驚くべきことに他の航空機と異なり動翼としての効力を最大限発揮するような構造及び翼断面形状等にされ、水平安定飛行のために働くのは機体下部のフィンであり、文字通り役割分担を果たす事で無駄を無くした。
一見してこれではディープストール対策とならないように思うが、そこに長年蓄積したノウハウがあったのである。
リアジェットは綴りは異なるがメーカー名の呼び名のごとくジェットエンジンを胴体後部に搭載しているのだが、このエンジン配置により実は急激な機首上げ時にジェット噴流が固定翼たるフィンにぶつかることで一定以上のダウンフォースを生じさせている事に気づいたのだ。
だからこれまで以上にジェット噴流を受け止められるようフィンを大型化しつつ、あえて機首下げモーメントを生じさせない取付角とした。
こうすることで水平飛行時の空気抵抗を抑えつつ、いざディープストールが発生してもこれまで通り後部のフィンは機首下げのために働くようにしたのである。
結果最新のリアジェット75は燃費性能を確保しつつもかなりの迎角での離着陸が可能であり、軍用機並の急旋回すら出来る。
ネット上でもその運動性の高さを表す動画がアップロードされているが、ここまで可能なビジネスジェットも早々無い。
元々軍用機としての採用も見越しての仕様らしく、求められる運動性や安定性を確保しつつ最適な構造を模索した結果あのようになったようだ。
こういった一連の努力を各社が行い、最新鋭機では安全性が確保されている一方、未だに短所が明確な航空機が世界の空を飛んでいるのが現実なわけである。
それこそ737MAXの頃にも触れたが、パイロット不足やら何やらに起因し、航空会社が古い機体あるいは古い機体にちょっと手ほどきしたような機体を運用するがゆえだ。
例えばATR72については現在完全に胴体構造等一新した新型機の開発が行われているが、これはエアバスの思想に基づくもの。
A380の技術を投入して大幅に信頼性を格上げしても、根本的な部分において弱点を抱える機体をエアバスは生産し続ける気はないのだ。
600シリーズは人気商品ゆえにしばらくは生産が続くとされるが、600シリーズにおいてスティック方式ではないもののエアバスの多くの機体と同じスイッチ配置にし、操作方法も統一したのには理由がある。
次世代機への迅速な転換が可能なようにするためだ。
エアバスは何もただ信頼性を上げたわけではなく、親会社となった時点で経営戦略をきちんと立てていた。
だから600シリーズは当面の間生産するものの新型機の登場と共に生産を打ち切ると主張している。
新型機はATR42及び72が持つ経済性を引き継ぐとされるが、さらに信頼性を底上げしたものになるという。
つまりエアバスは元よりATR42及び72を長生きさせるつもりは無いということだ。
また、500シリーズ以前を導入しているメーカーにリーズナブルな価格で乗り換えを行えるような600シリーズのバリュー価格も提示しており、500シリーズ以前を駆逐する構えを見せてすらいる。
筆者が思うのは、それを企業努力だけでやらせるべきなのかということである。
そろそろ世界各国が動いてもいいんじゃないですか。
いい加減、古い設計の航空機やめませんか。
エンジン片方が停止したら横滑りするって、車で例えたらエンスト起こしたら左右どちらかの前輪にブレーキがかかってどうなるかわからないって事でしょう。
車で例えても怖すぎる短所なのにより安全が求められる航空機でそれってどうなんですか。
最新鋭になればなるほど高い運動性と飛行安定性を持つより流体力学に即した胴体構造になるのに、なぜ流体力学的に劣る、下手したら半世紀前の機体に手心を加えただけのものを最新と言い張って売り続けなければならないんですか。
600シリーズを出すとき、胴体構造は基本見直さないとエアバスが発表したため、実は一部の有識者内で不安が生じて結構な批判が国外にてなされていた。
エアバスは尾翼は見直すと述べ、結果見直した尾翼と最新アビオニクスによってATR42とATR72はほぼ生まれ変わったと過言ではないほど化けたが、それでも根本的な解消には至らないということで一から新造しようとしている。
一気にやらなかったのは、いきなりやると航空会社の反発を生むと判断したため。
なので第一段階として737MAXで触れたように機種転換が容易となるエアバス系のシステムへと変更し、パイロット確保が容易になるようにしつつ、既存のATRのパイロットが600シリーズを運用することでエアバス系の旅客機への転換が楽になるよう道筋を作り、その逆も可能とすることでパイロット不足への対応としつつ土台作りに励んだ。
本来は最初から一気にやっても良かったが、そうすると顧客が競合他社の機体へと逃げる不安があったので慎重な姿勢をとった。
いかに航空会社がパイロット確保に苦労しているかわかるが、結果的に一気にすべての諸問題を片付けられるほど信頼性の高いリージョナルジェット誕生までに相応の期間が空く事になってしまった。
もし世界的にきちんとした流れを生み出せるならこうはならなかったんじゃないですかね。
例えばATR42と72は1980年代当時としては信頼性も保証されていたのかもしれないが、判断基準は当時のままでいいんですか?
最低限600シリーズと同じぐらいの信頼性が無いなら飛行停止措置とかすべきなんじゃないですか。
同じことは古い機種にも言えるが、そろそろ本気で条約か何か制定するか、より厳しい安全基準にしてもいいんじゃないですか。
先進国は独自基準で事故率を引き下げ、日本国では墜落事故をここ数十年発生させていないが、向かいたい場所に日本の航空会社が運用している便があるわけではない。
やはりどこかで楔を打つべきだと思う。
明確に墜落事故に繋がりかねない短所があると述べられる航空機の運用はやめよう。
そして古すぎる設計の機体について無駄に少々手を加えただけの後継機を生み出すのも、飛行許可を出すのもやめよう。
ともかく、今回の件で筆者が伝えたいのは、2つ。
1つは日本国のATR42及びATR72はここ数年で何度も墜落している500型とは別物であるという事。
エアバスのおかげで見た目は殆ど変わらず生まれ変わった信頼性の高いリージョナルジェット。
ゆえにATR72だからとかATR42だからってそこまで不安視しなくても大丈夫。
ここはきちんと報道すべきだし情報共有すべき。
2つ目は、一から新たに設計した最新鋭機の安全性の高さを考えると、30年以上も前の、それも墜落事故に繋がりかねない操縦性に難のあるような古い機体は葬り去るような流れを生み出せないかということを伝えたいし、最新鋭機の安全性についてもっと把握してほしい。
それこそ787の滑空性能なんてグライダーに匹敵するぐらいだし、そもそもエンジンの信頼性も段違い。
A350もそこに追随するが、滑空性能こそ劣るものの信頼性においては最新鋭機として十分なポテンシャルを持つ。
この領域に達しない機体は今後20年の間に全て駆逐してほしいし、消費者も格安航空ばかり目を向けず、選択してほしいと思う。
ちなみに筆者は航空機を用いなければならない場合は機種を選ぶようにしており、ここ数年は777か787かA350にしか乗ってない。
未だに国内に多い767等は徹底的に避けるようにしている。
というか基本的には陸で移動する。
航空機の方が鉄道やバスより事故比率が低いと言われても、やっぱ覚悟がいる。
今回の事故のようなライブ映像記録を見たら猶更。
787テストフライト(高迎角上昇)
https://youtu.be/vzr313wSY_Y
777とA350のテストフライト(同上)
https://youtu.be/0ElFcm058BM
リアジェットの急旋回
https://www.youtube.com/shorts/9amre2hPyA0
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