バラッド(二匹ではなく二人の邂逅)
井の中に気付かぬ蛙を
見下し空を飛んでいるトンビも
実は宇宙の存在なんて
一ミリも知らなかったりする
余りにも単純な世界の蔑みの連鎖に
身を投じたくない僕は
イノチの理から外れた不死者になることを選んで
それで今も後悔し続けている
これでは命懸けで何かを為すことが
一度だって出来やしないではないか
混じり合って濁った他者の目線の湖に飛び込んでも
痛みだけが得られて 息を止めることは不可能だ
気づいたのはずっと後のことだった
暴風雨のような大不景気に体の芯を貫かれて
幽霊になったビル その屋上の縁のところに座り
童話に出てくるずる賢い狐のように太陽の威を借りて
早送りの具体化みたいにセカセカと歩く生者達を
じっくりと眺めていた
何かの傀儡であろうとも
生存の奴隷になるよりは幾分もましだ
羨望の眼差しになるのを必死で避けようとするが
本能には逆らえない
すると、ヒラヒラとした紙の音が聞こえた
配っているのは 誰だ?
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隣の芝生が青々としているのに目を奪われ
自らの庭の世話を忘れて花を枯らしてしまうのは
それは過去の私に言わせれば
単に愚かなことでしかなかった
気が付けば身近にある様々の種類の幸福を
増幅したいと思った私は
際限無く全てを拾い上げる不死者になることを選んで
それで今も後悔し続けている
地面に転がっているものをよく観察してみれば
不幸なものばかりではないか
仕方なく幸福だけを触ろうとウロウロ探し回っても
それは埋まっていて 手を汚さないことは不可能だ
気づいたのはずっと後のことだった
人々、あるいは活気という名の血液を失って
死体になった地下鉄 そのある一つの廃駅に潜み
姿を見られたくない座敷童子のように柱の裏に隠れて
秒針の本体みたいにコツコツと響く地上の足音に
じっと耳を澄ませていた
現実から逃れているのも
昔と今を比べて溜息をつくよりは何倍もましだ
自分を励まして元気になろうとするが
真実には逆らえない
すると、ガビガビした怒鳴り声が聞こえた
叫んでいるのは 誰だ?
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『誤った正義を正すのがまた別の正義であるように
間違った不死者を殺すのも また不死者なのだ』
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……私は、人の最後の善意を信じた
……僕は、人の底知れぬ怨恨を信じた
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…………。
今日は曇っている 何処がとは言わないが
相手は死んだ こちらは生き残った
今もなお選択に後悔してばかりだ
……僕。
僕は善人ではない。
ではなぜ、僕はナイフを使ったのだ?
なにも分からない。
僕は不死者だ……。僕は、これからも多分、死なない。




