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バラッド(二匹ではなく二人の邂逅)

作者: ライス中村
掲載日:2022/06/16


井の中に気付かぬ蛙を

見下し空を飛んでいるトンビも

実は宇宙の存在なんて

一ミリも知らなかったりする


余りにも単純な世界の蔑みの連鎖に

身を投じたくない僕は

イノチの理から外れた不死者になることを選んで

それで今も後悔し続けている

これでは命懸けで何かを為すことが

一度だって出来やしないではないか

混じり合って濁った他者の目線の湖に飛び込んでも

痛みだけが得られて 息を止めることは不可能だ

気づいたのはずっと後のことだった


暴風雨のような大不景気に体の芯を貫かれて

幽霊になったビル その屋上の縁のところに座り

童話に出てくるずる賢い狐のように太陽の威を借りて

早送りの具体化みたいにセカセカと歩く生者達を

じっくりと眺めていた


何かの傀儡であろうとも

生存の奴隷になるよりは幾分もましだ

羨望の眼差しになるのを必死で避けようとするが

本能には逆らえない

すると、ヒラヒラとした紙の音が聞こえた

配っているのは 誰だ?



__________________________



隣の芝生が青々としているのに目を奪われ

自らの庭の世話を忘れて花を枯らしてしまうのは

それは過去の私に言わせれば

単に愚かなことでしかなかった


気が付けば身近にある様々の種類の幸福を

増幅したいと思った私は

際限無く全てを拾い上げる不死者になることを選んで

それで今も後悔し続けている

地面に転がっているものをよく観察してみれば

不幸なものばかりではないか

仕方なく幸福だけを触ろうとウロウロ探し回っても

それは埋まっていて 手を汚さないことは不可能だ

気づいたのはずっと後のことだった


人々、あるいは活気という名の血液を失って

死体になった地下鉄 そのある一つの廃駅に潜み

姿を見られたくない座敷童子のように柱の裏に隠れて

秒針の本体みたいにコツコツと響く地上の足音に

じっと耳を澄ませていた


現実から逃れているのも

昔と今を比べて溜息をつくよりは何倍もましだ

自分を励まして元気になろうとするが

真実には逆らえない

すると、ガビガビした怒鳴り声が聞こえた

叫んでいるのは 誰だ?




__________________________



『誤った正義を正すのがまた別の正義であるように

間違った不死者を殺すのも また不死者なのだ』



__________________________


……私は、人の最後の善意を信じた

……僕は、人の底知れぬ怨恨を信じた


__________________________



…………。


今日は曇っている 何処がとは言わないが

相手は死んだ こちらは生き残った

今もなお選択に後悔してばかりだ




……僕。


僕は善人ではない。

ではなぜ、僕はナイフを使ったのだ?

なにも分からない。


僕は不死者だ……。僕は、これからも多分、死なない。





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