ゴブリンに拾われ集落に連れられました
僕、マビト・クウキはある日、他のクラスメイト達と共に異世界に飛ばされてしまう
そこで僕達は国王に魔王を倒すための勇者になるよう命じられスキル玉というアイテムで様々な能力を得るも僕一人だけが多すぎるという理由で森に捨てられてしまう
そんな捨てられた僕を森の中で拾ってくれたのは何とほとんどのファンタジー系では悪役とされるゴブリンだったんだ。
「おい、こんな奴を連れてきたのが親分に知られたらお仕置きどころじゃないぞ!?」
「何かあっても俺達は関係ないからな!?」
二匹のゴブリンがそう言うと
「わかってる。この件に関しては俺が責任とるからお前らに迷惑はかけないからよ」
僕を連れていこうと言ったゴブリンがそう言った。
ちなみに僕の耳にはゴブリン達は普通に会話しているように聞こえるのだが
他の人の耳には
『ゲギャギャッ!』
としか聞こえないらしい
また逆に僕達が普通に話している言葉はゴブリン達には何を言っているのかわからない言語になっている。
僕がゴブリン達の会話を理解し、話ができるのは国王が僕を追放する直前に渡したスキル『魔物言語通訳』のおかげであった。
国王はこのスキルを魔物に食われそうになるなかで食べられる直前の会話を理解する外れスキルだと思っていたようだがスキルを理解できないとはやはりあの国王は無能だったらしい。
僕がそう思っている間に
「着いたぞ」
僕を連れてきたゴブリンがそう言うと
僕が連れてこられたのは20~30人近いゴブリンが住む集落的な場所であった。
ゴブリンもモンスターとはいえ集落を作るんだな
「とりあえずお前はここにいな」
と言われ僕は縛られたまま茂みに隠された。
何でもゴブリンは冒険者から見れば討伐の対象であるため人間を恨むゴブリンは多く、もし僕が見つかってしまうと殺されかねないし、そんな僕を連れてきたゴブリンも無事ではすまされないそうだ。
「言っておくがお前を連れてきたのは取引を確認するためだ。俺達の言葉がわかるならあいつの言葉もわかるかもしれないからな」
あいつとは誰のことだろう?
僕がそう思っていると
「おい、あいつが来たぞ!」
集落にいる他のゴブリン達が騒ぎだした。
「もう来たか、早速お前の出番だぜ」
僕は拘束から解かれたものの、訳もわからないままゴブリンに連れられていった。
そして集落にいるほとんどのゴブリン達が集まっている場所には
バァンッ!!
ゴブリンの3倍以上はある大きな体をした一匹のモンスター・オーガがいた。
「これはこれは、お早いお着きのようで」
この集落の長らしき老いたゴブリンがそう言うと
「挨拶なんてどうでもいい!とっとと品を出しな!」
オーガは怒鳴りながらそう言った。
ゴブリン達はオーガの迫力に驚いていたのだが
「ふぅ、何を言ってるのかわからないが相変わらず恐ろしい奴だよな」
「しっ!聞こえたら殺されるぞ」
そんなゴブリン達の会話が聞こえてきた。
やはり僕の耳には普通に会話しているように聞こえるオーガの言葉もゴブリン達には何を言っているのかわからないらしい
しかしどうやらオーガにはゴブリンの言葉がわかるようであった。
「これが今回の品です」
そう言うとゴブリン達は袋一杯の木の実やキノコをオーガに差し出した。
どうやら貢ぎ物らしい
後で聞いた話によるとこの付近には冒険者の他にも強力なモンスターがおり、最下級とされるゴブリンにとっては恐怖の毎日が続いている。
それを守るためにオーガはゴブリン達に貢ぎ物を要求する代わりに様々な脅威から守っているそうだ。
すると
「おいお前、あのオーガは何て言ってる?」
僕をここに連れてきたゴブリンがそう言うと
「えぇと┅」
僕はオーガの言葉をそのまま口に出した。
「あぁ、確かに受け取ったぜ」
ここまでは普通の取引の会話なのだが
「しかしバカな奴らだ。これっぽっちじゃオーガが動く分けねぇのに無駄と知らずに働きやがって、まぁこいつらのような雑魚にオーガの言葉がわかるわけないから利用し放題だ。集めたものは俺がしっかり消費してやるからよ」
と言うオーガの言葉が聞こえてきた。
つまりこのオーガは貢ぎ物を他のオーガに渡さずに自分の物にしていたのだ。
これははっきりいって横領だ。
今の会話をゴブリンに伝えると
「何だって!あの野郎め!」
ゴブリンは怒った様子でオーガの方に飛び出していき
「待ちやがれこの野郎!」
オーガに向けて叫んだのだった。
何やら大変なことが起きそうな感じだな