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模倣

作者: 横瀬 旭

 先日、あるネット小説が閲覧禁止になった。私は読んだことがないからその小説の内容は知らない。しかし、あらすじはなんとなく覚えている。


 人間が生きていく中での苦しみは、生きていることそのものだと考えた主人公の青年が、街に出て多くの人間を殺して死刑になる話。できる限り多くの人間を苦しみから解放して、国の死刑制度を利用して主人公本人も苦しみから解放されようという考えらしい。確か、かなりざっくりではあるがこの様な内容だった。


 この小説が世に出てから、小説を模倣した様な通り魔や殺人が増えた。主人公の思想を正しいと考えた読者による自殺もあった。


 検閲されて削除されたが、ネット上の掲示板や小説投稿サイトなどにこの小説はコピー&ペーストされ続けている。


動画投稿サイトも利用した。数年前によく見かけた文章と音楽を流すだけの動画を模倣して小説を載せた。


 コピペを繰り返して小説を載せ続けているのは作者だ。主人公と同じ思想を持っている作者は、自分が書いた小説を読んだ人が殺戮や自殺を起こすことを善い事だと思っていた。


 そして、その作者は私だ。読んだことはないが書いたことはある。酒を呷って殴るようにキーを叩いてネットに上げたら思わぬ反響を呼んだ。


マンションの八階でピロシキを食べながら安い酒を浴びるように呷り、東京の夜景を眺めながらにんまりと笑っている。


今も私が眺めている景色の中で殺人や自殺が起こっていると思うと、嬉しくてたまらない。


そして、いつ誰が私を楽にしてくれるのか、じっと待っている。


 こんなこと起こるわけないと思っているだろう。


なりかねないような所まで、この国は落ち込んでいるんだよ。

ドストエフスキー『罪と罰』みたいな、殺人を正当化するような思想を持った主人公の物語を書きたかったのですが、もちろん書けないのでその手の小説があったことにしました。


それから、わたくしごとですが新型コロナウイルスに感染しました。

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