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三話:魔法の鏡

『ある国に、見た目は美しいけれどワガママで、自分勝手で、冷酷無慈悲な人でなしの意地悪な王子様がいました。

 王子様は自分の暮らしを豊かにするために国民からお金を巻き上げたり、国民への意地悪として人々の生活に必要な狩や漁。さらには冬を越すために必要な薪を作ることを邪魔しました。

 国の人々は王子様のやることを大変不満に思いましが、逆らったら何をされるかわからず、泣く泣くただひたすらに耐えておりました。

 そしてある時のことです。

 ひとりの心優しい魔女が王子様の元を訪れました。

 魔法の力を持つ魔女は、力のない人々の代わりに王子様に反対を訴えたのです。

 しかし王子様は聞く耳を持たず魔女を捕らえました。

 そして、あろう事に次の日には

「魔女をこの国から追放する!」

 その言葉に心優しい魔女は怒り、魔法を使い王子様に呪いをかけました。

 すると、呪いによって美しい王子様の姿はみるみると醜いバケモノへと姿を変えていきました。

 王子様だけではありません。王子様のワガママを止められなかった城に使える人間もみんなバケモノへと姿を変えてしまいました。

 魔女は言いました。

「人の心がわからない愚かな王子よ。その心に似合う姿に身を落とすがいい」

 王子様は魔女に呪いを解くように言いますが、解くハズもありません。

 しかし心優しい魔女は希望として世界をうつし出す魔法の鏡と氷でできた一輪の薔薇を王子様に渡しました。

 魔女は最後に言いました。

「その鏡はどんなものも映し出す魔法の鏡です。それで貴方がいかに愚かなことをしていたのか知るといいでしょう。そして、氷の薔薇は貴方自身。もし貴方が自分の行いを反省し、人を愛し代わりに愛されたのならば、この薔薇は溶けて貴方の呪いは解けるでしょう」

 そう言い残し魔女は姿を消しました。

 でも一体誰が、こんな王子様を愛してくれると言うのでしょう。

 そうして王子様は今でも、自分の行いを悔いて嘆いているのです』



 アンジェリカが話し終わるとそれを聞いていたディアナは小さく拍手をしていた。

 彼女の話し方はとても上手で俺も拍手をしたかったが猫じゃないとバレると大変なので心の中でそっと拍手した。

 ブラボー!

「この辺りじゃ有名な物語よ。ちいさい時に寝る前にお話しをせがむとよくおばあさんがお話ししてくれたんだけど、聞いたことない? ないわね。アンタ、そういうの知らなそうだし。アンタの横で誰かが寝物語を読んでる姿とか想像できないわ」

「そうね、知らないわね。あと、いくら幼くても眠る時に自分以外の人間が側にいるなんて……考えるだけで、ゾッとしてしまうからしてもらったことないわ」

「……まぁ、アンタはそういうヤツよね」

 アンジェリカは呆れた目でディアナを見つめた。

「確かにこの物語には、私が条件に書いた魔法の鏡が出てくるみたいね。でも結局おとぎ話でしょ? 実際に存在しないのなら何も問題ないわ」

「それがね、この物語は実際にあった話をモチーフにしてるみたいなのよね?」

 その言葉に余裕の笑みを浮かべていたディアナの顔が真剣になった。

「アンジェリカ。お願い、その話もっと詳しく聞かせてちょうだい」

「しっ仕方ないわね! あのね……」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


「もし本当に行ったなら、お土産にそこにしかないって言う青い薔薇を摘んできてちょうだいね!」


 アンジェリカが帰るとディアナはすぐに出かける準備を始めた。

 大きな肩掛けの鞄に食料やランプ、タオルに小さなナイフなど旅に出る様な一式を鞄に大急ぎで詰めていった。

「本当に行くつもりなんですか? あの話が本当だとしても魔法の鏡があるかなんてわからないんですよ」

「でもあったら大変じゃない。特にあの王子様がこの話を知ったら必ず探させるに決まっているでしょ。だったらその前に探し出さないと」

 アンジェリカの話では、あの物語のモデルとなった街は実在するらしい。なんでも、もう滅んでしまった街らしいのだがこの村から山2つばかし越えた所にあるそうで……。

「オレはないと思いますよー。いまどき魔法アイテムなんてどれも偽物だったり既に壊れて使えない物ばっかりですよ」

 魔法アイテムはとても貴重だ。

 作れるような魔法使いや魔女も最近では滅多に見ないし、作り方を残している訳でもないから容易に作れない。

 神様や精霊から与えられた物なんかは、用がなくなると何処かに消えてしまう物がほとんどだ。

 猫妖精のオレが言うのもおかしな話だが、そんなもんはおとぎ話の類いだ。

「ないならないで構わないけど、あるかも知れないなら確認しないと安心して眠れないわ」

 そう話すディアナの表情は不安というよりも期待に満ちた目をしていた。

「本心は?」

「滅んでそのままの国なんて人がいなさそうでいいなって」

「いやいや! そう言うところは危ない連中の隠れ家とかになってたりして危ないですよ!?」

 こう言うところで世間知らずのお嬢様だなと再認識してしまう。

「それもそうね。だったら……あぁ、護身用にアレも持っていきましょう」

 部屋にあった棚の上に置かれていた埃を被った木箱を鞄に入れた。

「一応聞いておきますけど、その箱は一体?」

「? 決まっているじゃない、爆弾よ」

 ディアナはニッコリと微笑んだ。

読んでいただきありがとうございます。 

童話っぽく書いたけどいかがだったでしょうか……。

次回は魔法の鏡を探しに行きます


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