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ほのかという魔法少女

最終決戦前のことである。ミッキュとほのかは家の屋根の上にいた。2人にとっての出会いの場であり、いつも2人で話をした場所でもある。喧嘩もしたし、仲直りもこの場所だ。たまにおやつを食べたり、他の魔法少女たちと一緒に星を眺めたりもした思い出の場所である。

「ねぇミッキュ この戦いが終わったらあなたはどうするの」

「自分の国に帰るッキュ」

どこか遠くを見る目で森の妖精は言った。懐かしいと言うわけではなく、どこか落胆した声だった。あきらめの言葉であった。

「そんなに嫌なら帰らなくてもいいんじゃないの」

「これだから能天気は困るッキュ。魔法生物には魔法生物の掟があるッキュ。それに魔法少女の掟もあるし、いつまでも一緒にはいられないッキュ。天馬のこと忘れたくないっキュよね」

「う〜ん。たしかに。ミッキュ と天馬さんを選べって言われたら、当然天馬さんとるけど。」

「わかってたッキュほのかはそんなやつだっキュ」

「でも、どっちが大切かって言うと、ミッキュ のことも大切だよ。」

「ほ、ほのか〜!!!」


「ねぇ、ミッキュ 、最後になるかもしれないから教えて」

「ん?なにっキュ?」







「悪いけどほのか、この記憶は消すッキュよ」

「大丈夫。明日はよろしく」

「君のパートナーになれたこと、誇りに思うッキュ」


「ハハッ」

静かな笑い声で魔法老婆はほのかを打ちはらう。所詮ぬいぐるみ、たとえ森の主の力を持っていたとしても、それを使う方法を知らなければ、布切れ、である。魔法を使わずとも、拳で叩けば簡単にふっとぶ。何度も何度も走り駆け出し吹っ飛ばされる。諦めずに何度も何度も。その戦力差はありとぞうのようなものだった。

「おい、アホっこ。悪いが、私も予定が詰まってる。申し訳ないがお遊びはしまいだ。」

倒れた魔法少女たちを一瞥し、ため息をつく。

「久々に骨のある奴らが現れて私を楽しませてくれると思ったのに。とんだ期待はずれだった。魔法で強化した動物たちで悪の組織を作って、お前たちを鍛えたり、古代魔法少女の封印を解いて、ライバルを作ったりしたのに。これならば、古代魔法少女を皆殺しにする必要なかったなぁ。後の世で私の遊び相手になってもらえると思ったのに。せいぜいよしこぐらいだった。あいつはあいつで出会ったときにはもう20歳を超えていた。あと少し若ければ私とも対等以上にやりあえたのに、出会った時期が悪すぎた。せっかく子供を産ませてやったのに、そいつらは雑魚。期待はずれだったわ。」

魔力が拳に集まっていく。ゆっくりとほのかに近づく。

「ほのか、お前には正直期待していたんだぜ。空間移動なんて魔法本来はない。魔法の家系があるわけでもないお前が、ここまでやれたのは、なぜだろうなぁ。私の計画では、今ここにいるのは魔法少女としてのお前だった。いつものように、ピンチになればさらなる力で乗り越えていくそんな奇跡を何度も起こしているお前に期待した。だが私がバカだった。」

体を掴み、持ち上げる。

「けほっ、全部あんたの手のひらの上だったってこと」

「はははっ、さよならだ、恋に夢見る小娘よ」


走馬灯が浮かびあがる。



この街にいた6人の魔法少女のうち、ほのかだけは普通の少女だった。ソフィアは魔法国出身、さきは古代魔法少女の直系の巫女の家系、カレンは魔法で財を成した大財閥の令嬢、ほのかはサキュバスのクオーター、かおりは魔法老婆の子孫。魔法少女の戦いに巻き込まれ、魔法少女となったのはほのかだけだった。彼女の得た魔法は空間移動。ここではないどこかに行きたいと言う願いから生まれた魔法である。しかし、最終決戦が終わった後、2人の魔法少女から魔法が渡された。前例がないわけではなかった。でも、ほのかはその力を100%使うことができた。本来、魔法の継承は、秘密にしていた魔法の構造レシピを渡すことのため、使う術者の才能により効果は継承者よりも格段に衰えるはずだった。コピーの魔法を持つソフィアでさえ、70%が限界だ。トレースの魔法はそのままを再現する力のため応用が効かない。

その違和感に気がついた2人の魔法少女は真実にたどり着く前に、戦いから排除された。当然、ほのかよりも後に魔法少女になった者たちは気づく事はなかった。

ほのかが魔法少女になった時、親友が自分の思い人に告白し、ふられたことにショックを受けていた。自分の幼なじみの姿を忘れる事はできなかった。遠い存在になってほしくなかった。自分だけがそこに取り残されているような気持ちになった。忘れたくない、忘れて欲しくないそんな強い思いからほのかは魔法少女になったのである。

ほのかの魔法の本質は記憶である。空間移動の魔法は、自分の行ったことのある場所、見たことのある場所にしか使えない。それも記憶である。2人の魔法少女の魔法を100%使うことができたのも記憶の力である。ミッキュ の使う記憶を消す魔法に抵抗性があるのも、記憶の魔法の力である。


あの夜、私は気づいてしまったのだ、自分の力に

もう一つの真実に


「結局のところ暇つぶしにもならなかった。がっかりだぜ」

魔法老婆は貫いたぬいぐるみをうちすてる。


時間凍結タイム

やっぱりいまなら、ミッキュ の体の魔力がある。ミッキュ の助力なしに魔法を使える。かおりちゃんの魔法で魔法老婆の動きを止める。

おそらく長くは持たない。

私の魔法は記憶メモリー。魔法は解釈を重ね、理解を深めると、変化する。

空間移動ワープ

全員を一箇所に集める。

「慈悲のヒール

さくらちゃんの魔法で治療を行う。だけど、応急処置が精一杯だ。

「ほのか」

「みんなは休んでッホ。今からあの人ぶっ倒してくるッホ」


憑依ダウンロード

さきちゃんの魔法でよしこさんの魂を体にやどす。


「力を・・・貸してください」

目を閉じて魂と対話する。


「・・・ソフィアが魔法少女、なんで、よくも魔法老婆め。よくも魔法生物め。・・・」

「・・・ソフィアちゃんはソフィアちゃんの夢を叶える為に魔法少女になったんです。だれかのせいではないんです。」

「・・・ソフィアの夢?・・・」

「・・・ソフィアちゃんを助けるためにも、力を貸してください。他のみんなも・・・」

夢半ばで散っていった魔法少女達の魂にも語りかける。



ゆっくりと目を開ける。

創造クリエイト

よしこさん達の記憶を読んで彼女たちの全盛期の時の魔法服と杖を作り出す。

「一人一人の記憶を読んで、魂を分ける。混在するから、一番強い感情に飲み込まれるんだ。あなた達が一番あなた達らしかった姿に!記憶メモリー!!!」


「結局のところ暇つぶしにもならなかった。がっかりだぜ」

魔法老婆は貫いたぬいぐるみをうちすてる。


時間凍結タイム

やっぱりいまなら、ミッキュ の体の魔力がある。ミッキュ の助力なしに魔法を使える。かおりちゃんの魔法で魔法老婆の動きを止める。

おそらく長くは持たない。

私の魔法は記憶メモリー。魔法は解釈を重ね、理解を深めると、変化する。

空間移動ワープ

全員を一箇所に集める。

「慈悲のヒール

さくらちゃんの魔法で治療を行う。だけど、応急処置が精一杯だ。

「ほのか」

「みんなは休んでッホ。今からあの人ぶっ倒してくるッホ」


憑依ダウンロード

さきちゃんの魔法でよしこさんの魂を体にやどす。


「力を・・・貸してください」

目を閉じて魂と対話する。


「・・・ソフィアが魔法少女、なんで、よくも魔法老婆め。よくも魔法生物め。・・・」

「・・・ソフィアちゃんはソフィアちゃんの夢を叶える為に魔法少女になったんです。だれかのせいではないんです。」

「・・・ソフィアの夢?・・・」

「・・・ソフィアちゃんを助けるためにも、力を貸してください。他のみんなも・・・」

夢半ばで散っていった魔法少女達の魂にも語りかける。



ゆっくりと目を開ける。

創造クリエイト

よしこさん達の記憶を読んで彼女たちの全盛期の時の魔法服と杖を作り出す。

「一人一人の記憶を読んで、魂を分ける。混在するから、一番強い感情に飲み込まれるんだ。あなた達が一番あなた達らしかった姿に!記憶メモリー!!!」


ほのかに憑依していた魔法少女の魂が解放され、創造によって作られた魔法服に袖を通していく。

光り輝く魔法少女たちがほのかたちを囲んで行く。


あとは


思いっきり、息を吸い込み叫ぶ。

「すぅ〜っ。ミ〜〜〜ッキュ !!!!!!!」

私がミッキュ の魔力を使えたように。ミッキュ も私の魔法が使えるはずだ。だったら、空間移動を使い、この状況を管理者として見に来ないはずはない。


「・・・」

魔人少女姿の私が腕を組んで仁王立ちをしていた。私を見下ろす。

「・・・ミッキュ 、私は思い出したッホ。」

「いいのか?二度目はないぞ」

魔人少女にミッキュ がなったとき言っていたことは、ミッキュ の真実に気づいたとき、嘘だと分かった。魔人少女になれば、ほのかの肉体はミッキュ の膨大な魔力で守られる。ミッキュ の肉体は不死身だ。私の魂も保護される。ミッキュ は魔法老婆が動くことを予感していたのだ。結果として、裏目に出てしまい、私たちが渦中に飛び込むことになってしまった

「・・・分かってる。だから、かがんで」

その額に、そっとキスをした。


私が魔法少女になった時、世界のバランスは大きく崩れ、様々な現象が天変地異が日常茶飯事に起こっていた。都には妖怪がはびこり、飢饉や疫病が蔓延していた。都がそんな状態だったから、都よりも離れた村など、目も当てられぬ状態だった。私はいけにえとして森の中に放置された。目隠しをされ手足の自由を奪われ箱に入れられ2日が経った。腹は減り、喉が渇き、意識が朦朧とする中、聞こえてくるのは、腹をすかした化け物どもの声だった。日増しに大きくなる、外の声、ガタガタと揺れ軋む箱、最後の瞬間、私が強く願ったのは、死への恐怖ではなく、村のみんなへの恨み事でもなく、ただただ強さが欲しかった。何もかも塗りつぶすような圧倒的な力が欲しかった。

「私はここにいる。」

それを示したかった。

「・・・娘よ。魔法少女にならないか」

風を感じ、崩れた箱の外から聞こえてきたのは、尊大な声だった。


あれから数百年。世界を救い続けたが、満たされることはなかった。いつしか自分をとめてくれるものを探すようになっていた。その頃には私にかなうものはいなくなっていた。


期待していた遊びも、横槍がはいり、興醒めしてしまった。誰か!誰か!!誰か・・・!!!私を!!



「私を見ろ!!弾けるハートは恋の味!!魔法少女ほのか!!」

打ち捨てたはずの妖精は消え、かわりに魔法少女が目の前に立っていた。あれはミッキュ の膨大な魔力を持った魔人少女ではない。塵芥、数多いる非力な魔法少女の一人だ。何故。一瞬の間に何が。

「私が!私たちが!!あんたを超えてやる!!恋する乙女をなめんなよ!!!」


くぅぅっ久しぶりの名乗りだ!!


「ほのか!天馬からの預かりものだ」

ミッキュ は黒い箱をほのかに放り投げる。わっとっと。ミッキュ は緑色の鹿の姿をしていた。雄大に広がる角は大木の幹を思わせた。魔人少女として、解放された魔力をそのままに、本来の姿に変わっていた。


中に入っていたのは、木で彫られていた指輪だった。

「これは?」

「私が生み出した魔除けの木から削り出して、天馬が魔力と魔法を込めた指輪だ。」

指輪を指にはめる。サイズはピッタリだった。

「お前をきっと守ってくれる。」

その木の指輪の香りは、昔てんちゃんと遊んだあの山を思い出させた。それだけではなく、天馬さんの優しさや温もりを魔力を通じて感じた。力が勇気が湧いてくる。


ミッキュ はゆっくりと魔法老婆に近づく

「・・・ミッキュ 。」

「久しぶりだな。さちよ」

「次は・・・その子なのか」

ミッキュ はこちらを一瞥したが、すぐに魔法老婆を向いた。

「いいや、違う。お前のようにはさせない。いや、お前たちのようには、させない。」

静かに語りかける。

「すまないと思っている。」

周りを取り囲む魔法少女の魂たちに向けて、頭を下げた。

「・・・そうか」

山高帽に一瞬隠れたその表情は見えなかったが、顔をあげた時には、凶悪な笑みを浮かべていた。


「ははははははっ!天上天下唯我独尊!!世界をかける史上最強の魔法少女!さちよ様だ!!」

幾千万もの魔法陣が展開される。空気が揺れて大地が震える。

「魔法少女ほのか!!先輩として、胸を貸してやるよ!!!はははははっ!」


「覚悟しなっ大先輩!!私はあなたのことを忘れないっ!!」



さちよさんとの戦いは長くは続かなかった。

私の記憶メモリーは当然、さちよさんにも有効だ。1対1万では歯が立たないが、一万対一万プラス1では私の勝ちだ。当然普段の私だったら、魔力不足で、さちよさんの魔法陣を一つコピーしたら、たちまちバテて瞬殺されていたことだろう。先人の魔法少女たちが力を貸してくれたおかげである。

「・・・はははははは!私はここにいる!!」

すべての魔力を出し尽くしたさちよさんはそのまま消えていった。


魔法老婆の暮らした森は壊滅したが、ミッキュ によると、魔法国が修復するらしい。また事件の調査のために、彼女のログハウスはまるごと押収された。

ド派手に血を流していたさきちゃんは、致命傷にはなっておらず、カレンの屋敷で休んでいる。ほかのみんなは怪我の手当てをして、それぞれの家路についた。今度は力を貸してくれた魔法少女たちを弔うためのお墓を作るために集まる予定だ。


そして、今・・・




「・・・」

「・・・」

私と天馬さんはデートをしています。

私と天馬さんはデートをしています。

って会話が早くも続かないし!!!

あああこんなことなら!こんなことなら!

「・・・ほのか」

「えっ!えっとなにかな」

今日はあの指輪のお礼ということで、天馬さんをピクニックに誘ったのだ。戦いが終わったあと意識が朦朧としてるなかで、ハイになってしまい大胆な行動をとっていた。場所は思い出の昔遊んだ山に来ていた。

「・・・いつ気づいたの?」

「・・・」

天照天馬という人間はいない。

天照天馬は魔法生物マジカルである。

つまり

「・・・ミッキュ 。お願いしたでしょ。天照天馬として、今日は、いてって」

雰囲気ぶち壊してくれちゃって。

ミッキュ の世を偲ぶ人の姿が天照天馬なのである。正確に言えば、魔法少女を生み出すために、魔法少女となる人間の好みのタイプとして作られた人間である。

魔法国の考えた人の恋心を、弄ぶ最低の計画ではある。ただ、完全な同一人物ではなく、人格は別にあるため、普段は眠っているらしい。ミッキュ と天照天馬が同時に存在することはない。

「まぁ、でも今回は助かったよ。私の初恋の相手が天馬さんでミッキュ でさ」

「ほのか・・・何を言っても無駄かもしれないが、天照天馬は君のことを大切に思っている。たとえ、人間ではなくても、私と同じかそれ以上に」

「好きな気持ちって・・・色々あるんだよ。」

その額に口づけをする。

「うししししし、やーい赤くなった」


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