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20.ソックス! ソックス!

明けましておめでとうございます

本年が皆様にとってよい年でありますように

 ―――メイちゃんを拾って20日経った。


「どう? メイちゃん」

「…………」


 私はメイちゃんを大きな姿見の前に立たせている。


「鏡。見るの初めて?」

「……! ……!」


 メイちゃんはブンブンと頭を縦に振る。

 ふっふっふっふ。どうかね? どうかね? ビックリした? 


「体。すっかり元気になったでしょ」

「……はい」


 鏡に映る女の子。やつれて痛ましかった姿はそこには無い。

 メイちゃんは鏡に映る自分を見ながら不思議そうに顔を撫でる。


「手脚や体は普通に見れるけど、こうして自分の全体を見るとまた違うでしょ」

「はい」


 ボサボサで伸ばしっぱなしだった黒髪は艶を取り戻し、ロングで毛先を整えて一本の三つ編みにして前に垂らしている。

 欠食による栄養不足でやつれ荒れ果てていた体は肉付きが良くなり、肌には潤いと張りが生まれ白く輝いている。

 着ている服は華美な物を好まないメイちゃんの趣味で、質素だけど清潔感のある衣服に袖を通している。

 それらの姿をメイちゃんは黒い瞳でしっかりと確認する。

 うんうん。良いよ良いよ! 今のメイちゃんは何処からどう見ても美少女だよ!


「どうどうどう? えっへっへ~」

「……嬉しそうですね、ヘルベリス様」


 嬉しそう? そんなの当たり前じゃん!


「だってメイちゃん可愛いんだもーん!」

「わっ」


 後ろからハグして頭に頬擦りする。お~よしよしよし。


「すっごい可愛いよー☆ メイちゃんもそう思うでしょ? 『あれ? 私って可愛い?』って思わなかった?」

「……そ、そんなことは」

「謙遜しない謙遜しなーい。メイちゃんは可愛い女の子なんだよ」


 頭の上に手を乗せる。


「背もちょっと伸びたんじゃない?」

「……それは早くないでしょうか」

「そんなことないよー。メイちゃんぐらいの年の子は日々成長してるんだから。ぐんぐん背が伸びてくよ」

「そうなんですか」

「うん! お薬で体の中の弱ってた部分もちゃーんと回復したからね。これでメイちゃんは立派な健康優良児だよ☆」


 苦くて美味しくないお薬、毎日頑張って飲んでたもんね。偉い偉い。……まあ本人は全く苦にしてなかったけどね! メイちゃんパネェっす、マジ半端ネェっす!


「私、元気になりましたか?」

「うんうん。私が言うんだから間違いない」

「そうですか……」


 メイちゃんがくるりと振り返る。


「……ヘルベリス様」

「なーに?」


 どうしたの? そんな神妙な顔して。


「掃除をしましょう」

「……おっふ」


 忘れてなかったのね……おそうじぃ。


 ――――――


 汚れてもいい服に着替えた私とメイちゃん。

 ほっかむり姿のメイちゃんもダサ可愛いよ!


「先ずは家の中に有る物を全て出してしまいましょう」

「……全部?」

「全部です」

「…………」


 足の踏み場もろくに無い家の中を見渡す。


「……日を改めて後日にするっていうのは~」

「……? 何か言いましたか?」


 なんと! メイちゃん早速運び出しを始めてる!

 行動が早い! やると決めた瞬間に行動が終わっているぐらい早い!


「重い物は私が運びます!」

「ありがとうございます。……どうして畏まってるんですか?」


 私は取り敢えず足元に転がってた『1/1スケール総純金製「私」裸婦像』を肩に担ぐ。


「……何ですかそれ」

「私の像」

「……何でそんな物が」

「えっとね~『自分を型取りして銅像作ったら面白くね?』って思い立ってね~。それで銅製にするよりももっと煌びやかなのが良いな~って金にしたの」


 自分を型取りするのすんごい難しかったよー。真っ裸になってから粘土をこうギュッと押し付けてね。出来た型を硬化処理して最期に中へ溶かした金を流し込んで―――


「すごいラクガキされてますね。誰かに書かれたのですか?」


 ……メイちゃんは像を指差してそう言う。

 ラクガキ。

 ちょび髭。ぐるぐるほっぺ。第三の目。乳首に星。バキバキに割れた腹筋。


「……つい出来心で」

「まさかの自分。……何故か履かせている靴下も?」


 金の裸婦像。それが完成した後に身に付けさせた物。


「……その太股丈靴下(サイハイソックス)は魔女界隈のフェティシズム的にとても重要なのです」

「ふぇてぃ?」

「端的に言って……萌え、です」

「余計にわかりません」


 何と言いますか、こう、……胸キュン出来る要素? 魔女のトレンド?


「すごく……えっちです」


 ぶっちゃけ興奮する。


「…………」

「…………」


 何か言ってくれると精神的に助かります。


「……私が」

「うにゅ?」


 うごご……変な声出た。


「私が履いたら……喜んでくれますか?」

「……なんと」


 え? 履いてくれるの?


「是非お願いします」

「わ、わかりました」


 わーい。


「ちなみに目の前で着替えてくれたらもっと喜びます」

「め、目の前でですか?」

「イエスイエスイエス」


 さあさあ早く早く! 着てこその服だよ! 徐々に靴下に包まれるおみ足を私に見せておくれい!


「そんなに、見られると……恥ずかしいです」


 サイハイソックスを履きやすくする為かメイちゃんは下の服を脱いで『ワオン』……おん?


 ―――はいちょっとそこ通りますよ~―――


 ……そう言わんばかりにデカ犬が私とメイちゃんの間を通過していった。


「…………」

『ハッハッハッハ』

「あ、ヘルベリス様。着れましたよ」


 メイちゃんは既に靴下を着用して下の服を履いてしまっていた。……着替えの瞬間? 結果を残して吹き飛んだ。


 ―――ボギャアア!!!


「ヘルベリス様!? どうして急に像を蹴り砕いたんですか!?」


 私は膝蹴りでボギャアア!!した『1/1スケール総純金製「私」裸婦像』の残骸を虚しい気持ちで見下ろす。


「……誰も悪くない。強いて言うなら私が悪かったから、かな」


 デカ犬よ、命拾いしたな。私がメイちゃんの長靴下姿に若干満足してなかったら貴様が蹴りの餌食に―――


『……ァホ?』

「今阿呆って言った? 言ったなこの犬ぅうっ」


 よーし、間抜け面を晒すお前の頭にこの金ぴかのオブジェをブッ刺してやる☆


「へ、ヘルベリス様!? 尖った物を人に向けては駄目です!?」

「HA☆NA☆SE!! 私は私の悪口に対して断固抗議するッッ!!」


 背後から抱き付いてきたメイちゃんの制止を振り切りデカ犬へ制裁を下さんと私は進撃する。

 フゥーッハッハッハッハ!! 頭に金色のお尻がある面白怪獣にしてやるー!! おならしたら鼻が良いお前はさぞかし苦しむだろうよ!!

 ムァアアッドサイエンティストな私の発想に恐れ戦くがいいッッ!!


「―――止めんかド阿呆」

「ゴールドッ!?」


 側頭部に黄金の手刀が叩き落とされる。


「うごごごご……」

「だ、大丈夫ですか?」


 メイちゃんに労れながら私は急に暴力を振るってきた下手人に涙が浮かぶ目を向ける。


「で、デンデン? なぜここに」

「……はぁ……お前は本当に何処に居ても変わらんな」


 魔女服を改造した軍服姿が特徴的な人物。デンデンは呆れたような顔で私を見ていた。

 ……その肩に担いでる私のゴールデンアームはトンカチじゃねえぞ? 手放すがよい。

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