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2.独り暮らしが長いと独り言が多くなるアレ

 森の中心。そこだけぽっかりと開けた空間が出来た場所。

 そんな日当たりの良い場所に有るのが、小さいけど趣のある建物。私のハウスです。


「はい私帰宅! ただまー!」


 ドアをバーンッ! 足元に散らばってる私物をドーンッ! ええい邪魔だ邪魔だ! 誰だこんなに家の中を散らかしたのは!? ……はい私です! 下手人は私でした! いえぇええいっ!!

 私は家の奥へズンズン進む。

 目指すは場所は一つ! それを視る目は二つ!


「先ずはお風呂! さあさあ綺麗にするよ~、超綺麗にするよ~」


 お風呂場へ突貫! ……ふっ、柔な扉だ。また壊れやがった。風呂場の扉は家の扉の中では最弱。扉界の面汚しよ。


「ついでに私もお風呂にしよーっと。時短時短」


 奴隷ちゃんの汚い布きれをポーンと脱がす。ふーむ、こうして見ると奴隷ちゃんは10歳をちょっと超えたぐらいかな? 欠食で発育不良だからわかりにくいけど間違ってはいないはず。

 私も服をポーンと脱ぎながら。奴隷ちゃんの体を隅々まで診てマズい傷や病気があるかどうか確認する。……うん、無い! 良かった良かった。


 そして女の子2人がすっぽんぽん。

 扉が無いから覗きたい放題だね! もし覗きがいたら御代を頂くよ! 今なら大特価、貴方の両目の眼球で結構だよ! いやー安いね安いね! 安さが爆発だよ!


「えーと、……浴槽にお湯貯めてる間にシャワーでばばっと流しちゃおうか。―――『フィア・ウィンク・スエーン・アクゥ・ホウト』」


 えいやっと魔法を行使してタンクに貯めてた水を温める。クリッとハンドルを捻ってお湯を出す。……う~ん気持ち良い温度。


「しゃわしゃわしゃわ~っとね~♪ はいお客さん痒いところはございませんかー?」


 奴隷ちゃんの頭の上から足の先までぱしゃぱしゃとお湯で濯ぐ。みるみる綺麗になっていくね。なんだか面白い。

 わしゃわしゃっと洗って……はい終了! ビューティフォー!


「は~い、じゃあ体を乾かそうね~。―――『ウィド・ウィンク・グラーデ・フィア・ホウト』」


 私と奴隷ちゃんを中心に温風がびゅ~っと吹き荒れる。

 よし乾いた! ……しかしこれ手っ取り早いのは良いけど髪がボサボサになりおる……ま、イイや! 手櫛で適当に整えてっと。

 着替えは何処に仕舞ってたかな~? う~ん、どれもこれもこの子には大きいなぁ。……これも適当でイイや。何にしてもさっきのボロよりはマシマシ。


「ベッドは此方になりまーす。よいしょー」


 ドライフルーツとかご飯の食べこぼしが散見した気がするけど気の所為だったぜ! 布団をバサッとしたら無くなったからね!

 そうして奴隷ちゃんをベッドに寝かせる。

 しっかしあれだけ騒がしくしてたのに全然目を覚まさないなこの子。根が図太いのかな? 見たところそこまで容態は悪く無さそうだけどな~。それだけ疲れてるのかな?


「……取り敢えず栄養補給も兼ねてこの私謹製のお薬飲ませとこー。……確かこの辺に捨てっ、置いてたのが……有った! じゃじゃ~ん! 『元気にナ~ル“竜殺し”』ぃ~!」


 説明しよう! 『元気にナ~ル“竜殺し”』とは! これを飲めばあら不思議! 貧弱な坊やな君も立ち所に怖ーい竜を気合いと根性と、あと勇気とか愛とかもろもろの力で「ブッ殺」できる元気百倍超戦士になれる薬なのだ!


「はーいイッキ! イッキ! イッキ!」

「むぐっ―――……ガボ!? ガボガボ!?」


 ありゃ? 一気に流しすぎて咽せちゃった?。……てへ☆ 失敗失敗てへりんこ♡


「ゲホッゲホッ!? 何? 何がゲェエッホ!? ウエエエッ!?」


 ……oh……えづき過ぎて女の子がしちゃいけないお顔になってるよ。

 でも目が覚めたみたい。やっぱり私の薬は効果抜群ね! 殆ど吐かれちゃったけどちょっと吸収されただけでこの効き目!


「おはよう。目覚めはいかが?」

「ゲホッゲホッゲホッ……ぅぅ……え?」


 あ、こっち見た。

 うーむ黒髪黒目って珍しいねー、稀少だよ。


「だ、誰っ? ……ここは何処っ?」


 おおビビってるビビってる。はい怖くない怖くないよー。ベッド脇に有ったイスに腰掛け両手を合せて無害アピール。小首を傾げるのがポイント。


「私はヘルベリス。そしてここは私のお家よ。森の中で貴女が倒れているのを見付けたからお招きしたの」

「そ、そうだったんですか。……」


 おや、腑に落ちない顔をしてるね。何か気になることでも?


「その……ヘルベリスさんは、私を助けてくれたんですか?」

「ん? うん、そだよー。だってあんな所で寝てたら危ないからねー」

「……ありがとうございました」


 ……おお。他にもっと聞きたいことが有ろうに、この子まずはお礼を言ってくれたね。育った環境は悪そうなのに随分と良い子ではないか。


「いえいえお気になさらずー。それにもっと楽にしてもいいよ~? そんな緊張なんかしないで」

「……ありがとうございます」


 あれま、警戒されてる。……まあそれもしょうがないかなー。


「気になる?」

「え?」

「私が何者なのか。気になってるでしょ?」

「…………」


 この子は『何か』から逃げてきた。その逃げ場所にこんな森を選んだのは『危険』だから。

 自分を追ってくる『何か』が尻込みするぐらいの『危険』が存在する場所。それがこの森。

 そんな森で居を構えている私のことが気にならないはずがない。奴隷ちゃんは私の言葉に戸惑いを見せながらもコクリと頷く。

 神妙な空気。


「では教えてしんぜよう!」

「っ!?」


 イスからバッ! と立ち上がり、颯爽と決めポーズ! 

 神妙な空気? 死んだわ。


「私は『魔女』! この森の奥深くに住み着く魔女なのです!」

「――――――」


 私が口にした「魔女」という言葉に奴隷ちゃんは目を見開いて驚きの表情を浮かべる。……何で驚いたのか何となーくわかるけど面倒臭いので無視するのだ!


「そして! そんな森に住む魔女である私から貴女へ大事な報告がありまぁす!」


 奴隷ちゃんの肩にポンッと手を置き、童女のような(年を考えろ? ヘルちゃんわかんな~い♡)無垢な笑顔で言葉を続ける。


「貴女―――今日からうちの子だから」

「…………へ?」

「よろしね!」


 You(ユー)うちの子になっちゃいなよ! これ決定事項ね!

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