14.デンデンに対して後日、エロい下着を送りつける
おっふ……デンデンに本気でお尻叩かれた……痛い。
もうっ! 今よりもお尻が腫れてパンツが余計にキツくなったらどうする気よー!! ―――あ、『余計』は余計だった! 今の無し! 脂肪ごと消え去れぇえええい!!
「―――へへー、コレが要望の品でございます。どうぞお納めくだしあ」
私は地面に額を付けるほど頭を下げてデンデンへ物品を捧げる。
「……おい馬鹿」
「むむむ、馬鹿って何よー。こうして頭を下げてるのに何が不満?」
「首ブリッジが頭を下げたことになるとでも?」
「ちゃんと腰より下に頭を下げてるわ!」
脳天と足裏だけでグッと反った体を支えながら上に突き出された腰をフリフリする。オ~ゥイエース魅惑の腰つき~。
ほらほら早く掲げた両手に乗せた物を受け取ってよー。この体勢で物を持ち続けるのって地味に辛いのよ?
「……はぁ……。済まないがメイ、ちょっと来てくれないか」
「何でしょう?」
私の隣で正座してくれていたメイちゃんをデンデンは呼んで立たせる。え~何々? ヘルちゃん気になっちゃう~☆
「そこに居たままではメイが危険だからな。―――やれチェロ」
「……了解。……『土よ、重く重なり全てを刺し貫く磔殺の牙となれ』」
ジャギギギギンッ!!
「ぬぅうううおおおおおっ!!?」
と、棘っ! 大量の棘がっ!? 私の腕ぐらいある太い棘……いやむしろ槍! それが無数に地面から生えてきたーっ!?
逃げ場無しッッ! この体勢を崩せば穴だらけになるぅうううう!?
「な、何のつもりだデンデンー!!?」
「―――さて、これが代価か。……ふむ、『禁断の血潮』か。悪くない品だ。……『特級危険指定他次元世界』に踏み込まねば手に入らない物であると考えなければな。―――宵闇を支配する鬼の神、その不死の肉体に流れる血液。その稀少さと価値は正に現代に生きる神話の体現。……で? どうやってこれを手に入れた? ん?」
…………。
「……ヘルベリス様。その、特級危険何やら? というのは?」
「え、え~っとぉ……迂闊にぃ入るとぉ危ない場所ぉ……かなぁ?」
ぬぎぎぎぎ……首がががが……足が攣りそそそそそそっ!?
デンデンは私が渡した小瓶をロールちゃんに預けると冷た~い目を向けてくる。ワォス、背筋が震えちゃう。二重の意味でっ!
「迂闊もクソもあるか。狙って行かないと存在すら認識出来ん場所だ。……出禁になっていた時に黙って行っただろお前」
「……ひゅ……ひゅ~♪……ひゅ~♪……にゃんのことかしらん?」
「下手! 誤魔化すのが下手!」
デンデンは大きな大きな溜息を吐くと頭を抱えて「こいつ本当の馬鹿……」なんて言う。ひっどーい。ヘルちゃん泣いちゃうぞ☆ あ、ちょ、ヤバいよヤバいよ、これはリアルにヤバい奴、背筋が悲鳴を上げてるぅ。
「……この小さな瓶一つ。……これで人間、貴女の生涯分の食費を賄うことが可能」
「生涯……これで?」
「……おつりの方が多いくらい」
「凄すぎて、よくわかりません」
「……不死の霊薬を作る素材の一つ。……つまりこれは服用した者を不老長寿に至らせる至宝」
「死ななくなるんですか?」
「……言い方が紛らわしかった。謝る。……あくまで不老長寿。殺し殺されれば、死ぬ。……真の不死は素養が必須」
「さっきギリードリフデン様は鬼の神様は不死だと言ってましたね」
「……ん。……鬼神……正確にはただの鬼の神という訳でも無いけど。……それは限りなく不死と呼べる存在」
……あ、あのー……私の惨状を無視して雑談はご無体では?
ほらほら見て見て、危ないよー? 空いちゃいけない所に穴が出来ちゃうよー? ほらーお尻の穴も増えちゃうよー。
「ほらさっさと吐け。どうやって入手した」
ズンッ! げふぅっ!?
「お腹っ! お腹を踏むのは止めろぉーっ!? 言います! 言いますから!」
だから足をどかしてくれると嬉しいな~って……駄目? このまま? ……そうですか……はい……わかりました。
「……あれはそう、―――鬱蒼とした森の中さえ明るく照らす暑い日だった。まさに灼熱の時。私はその」
「長い。要点だけ抜き出して言え」
「私、暇持て余す
異世界にレッツゴー
私「鬼さん血を頂戴」、鬼人「いいよー」でそれゲッチュ」
どうだ。三行で説明してやったぜ。
「……色々と突っ込みたい所はあるが、まあいい。それで納得しといてやる」
「ゆ、許してくれるぅ?」
「向こうの者達に迷惑は掛けていないだろうな?」
「誓って! 誓って迷惑は掛けて無いですぅ!」
「なら良いだろう」
お腹から足をどけてもらえた!
「ん~! ……せいっ! よっと! はっ!」
地面を蹴って頭上を飛び越すような高さのバック宙。そして空中で3回捻りをしてから華麗に着地☆ 100点!
私、生還! やったぜ。
「ふ~、危ない危ない。穴だらけになるかと……」
「ダイエットになるぞ」
「そうそう、肉抜きしたら軽くなる……って死ぬ!? 死んじゃうから流石に! そんな猟奇的なダイエットは嫌ー!? この鬼! 悪魔! 魔女!」
この外道め!
「……それが全部当て嵌まるのは私ではなくエプシロンだな」
「確かに」
悪魔のような魔女、魔女のような悪魔。そんな感じ。
「お前はそんな奴より慎みが無いがな」
「ぐっは!? 今日一番のダメージッ!」
うんこって呼称されるよりキツい!
……へこむ。
「……帰ろっかメイちゃん」
「だ、大丈夫ですかヘルベリス様?」
「へーき、へーき」
一時的に自分の立場がうんこ以下になっただけっすから。
「……お前は本当にエプシロンが苦手なようだな」
「だってあの子口悪いもん。顔を合せる度に言葉で殴ってくるのよ?」
「だからお前も大概だからな? 人に言えないからな?」
き、貴様ぁ~、私を何度うんこ以下にするつもりだ~。
「デンデンのアホ! 変態! あんたなんてドスケベな下着着てスクワットでもすればいいんだー!!」
「意味がわからん!?」
デンデンに精神的に汚された私はメイちゃんの手を引いて中庭からダッシュで逃亡する。
「コラ待て!? 勝手に行くんじゃない!?」
「あ~ばよ~、とっつぁ~ん!」
鬼の形相で追い掛けてくるデンデンを振り切る為、私はメイちゃんをお姫様抱っこして全速を出す。
「―――【起き抜けの太陽はウザい】」
フゥーッハッハッハッハ!! 逃走経路はさっき抜け出したときにマッピング済み! このままおさらばだーッ!
「また会いましょう!」
―――光となった私は『創造の館』を飛び出し、時空を越え、世界の壁を貫いた。
目指すは我が家一直線!