本日をもちまして会社を辞めさせて頂きます!
男3女1声劇台本になっております。
セリフの改変、性別変換は無しになっております。
アドリブに関しましてはその時の状況に合わせて他の演者さんの迷惑にならないようにお願い致します。
転載や自分が書いたなどの発言の一切を禁止します。
酒田 亮平 表では会社員、裏では街を守る正義のヒーロー…ではなく、ただの会社を辞めたくても辞められない会社員
田中 悟 亮平の会社の後輩。
清水 理恵 主人公達が行く事になる小料理屋の店主。
武田 信人 亮平と悟の先輩、ブラック精神を持つ部長。
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亮平「本日を持ちまして会社を辞めさせて頂きます!」
信人「何を馬鹿な事を言ってんだ!そもそも辞めてどうするつもりなんだ?」
亮平「いや…あの…それは…その…」
信人「何も考えずに辞めるなどと言ったのか!…はぁ全く、忙しい時に無駄な時間を取らせやがって…良いか?お前は与えられた仕事をこなしてれば良いんだ!」(辞表を破り捨てる)
亮平「申し訳ございませんでした
今一度考えを改めて出直します」
亮平「…(溜め息)今日こそは今日こそはと思ってついに言ったけどやっぱりこうなるよなぁ…」
悟「酒田先輩、酒田先輩」
亮平「ん?」
悟「ついに武田部長に言っちゃったんですね
会社辞めたいって」
亮平「あぁ、だけどやっぱり取り繕ってくれなかったよ」
悟「まぁ、そうですよね
そう簡単に辞めさせてはくれないですよ
なんせうちは所謂ブラックな会社ですからね」
亮平「ほんと、何でこんな会社に就職しちゃったかなぁ…『明るく、楽しく、個性を活かした会社』っていう社訓に惹かれて入社したんだけどなぁ」
悟「全くの逆ですもんね」
亮平「もう…死にたいなぁ、死ねばこんな仕事から解放されるのに」
悟「でも、うちの会社、天国まで追ってきそうですけどね…なぁんて」
亮平「あぁ…もう駄目だ
生きるも地獄、死ぬも地獄な人生だなんて、あぁ…もう…やる気が…」
亮平N「こうして俺は、会社から抜け出す事が出来ず、定年まで馬車馬の様に働かされて生涯を終えるのでした…
本日も会社を、辞める事が出来ませんでした…」
悟「いや、あの、酒田先輩、勝手に人生の幕を降ろさないで下さいよ」
亮平「だって…なぁ…?」
悟「そうだ先輩、今日仕事終わったら飲みに行きませんか?最近、良いお店を見つけたんですよ」
亮平「良いお店?もしかして…あっち系のお店か?」
悟「いやいや、小料理屋ですよ」
亮平「小料理屋?」
悟「そうなんですよ
その店主がほんとに綺麗な人で…あぁっ今から楽しみだなぁ」
亮平「おぉっ…良いねぇ…」
信人「おい、酒田!お前、さっき俺の時間を奪ったよなぁ」
亮平「武田部長!…いやまぁ…その、自分の意思を声に出したと言いますか…」
信人「理由はどうだって良いんだよ!
とにかく23時まで働いていけ!
仕事は沢山あるからな、それとタイムカードは切ってから作業に当たれよ?」
亮平「えっ、あっ、いや、それは…(武田の顔を見て)分かりました…」
悟「うわぁ…武田部長かなり怒ってますね…ほら、頭にツノ生えてるじゃないですか」
亮平「あー…確かにツノが見えるな。あれは悪魔のツノだな」
信人「おい、酒田…何が見えるって…?」
亮平「いえ!何でもありません!」
信人「ふんっ、どうだかな…それと田中」
悟「はいっ!」
信人「お前も酒田と残れ」
悟「了解しました!…もしかして?もしかしてですか?」
信人「あぁ、お前の想像通りだ
酒田の監視役として残れ
絶対に時間まで帰らすなよ?」
悟「把握しました!」
~武田捌ける~
悟「いや~不幸中の幸いですね
これで僕も先輩と一緒に残れるので待っている間、退屈しないですよ」
亮平「でも、悪かったな…俺のせいで」
悟「大丈夫ですよ」
亮平「でも…」
悟「先輩、後輩に謝ってたら示しがつかないですよ
ほら、胸張って下さい!」
亮平「分かったよ…よし、終わったらじゃんじゃん飲むぞ!」
悟「先輩その意気です!」
~仕事が終わって~
亮平「23時…はぁ…やっと終わった…」
悟「お疲れ様です先輩」
亮平「悪いな、手伝ってもらっちゃって」
悟「先輩と呑みに行くって言ったじゃないですか
だったらスッキリ終わらせちゃった方が気持ち良く呑めるってもんですよ」
亮平「そうだな、早速飲みに行くか!」
悟・亮平「「本日も残業、ありがとうございました(皮肉を込めて)」」
~道中~
亮平「それで、そのお店って何処にあるんだ?」
悟「意外と会社から近いんですよ」
亮平「へぇ~」
悟「会社から徒歩10分」
亮平「近っ⁉︎なんで知らなかったんだろうなぁ」
悟「まぁ、隠れ家みたいなお店ですからね」
亮平「よく見つけたな」
悟「友人から聞いたんですよ、ひっそりとやってるけど料理もお酒も美味しいお店があるって」
亮平「あぁ…クチコミってやつか」
悟「そうですそうです」
亮平「クチコミ程、信用のあるものはないよな、俄然楽しみになってきた」
悟「あっ、ここです!
亮平「ここ…?(辺りを見る)お店らしい看板もないが…」
悟「だから言ったじゃないですか、隠れ家みたいなお店だって」
亮平「みたいってか、まんま隠れ家だな!」
悟「まぁ行きましょうよ」(田中、ドアを開ける)
理恵「おかえりなさいませ、ご主人様」
悟「おわっ!今回はそう来ますか…ただいま帰ったぞ!…ははっ、なぁ〜んちゃって」
理恵「良いノリですね
実は最近メイド喫茶に行って参りまして」
悟「なるほど
でも、やるなら和服じゃなくてメイド服の方が良いと思うんですよチラッチラッ」
理恵「そしたら小料理屋じゃないじゃないですか」
悟「確かに!…って、先輩ぼーっとしてないで中入って来て下さいよ」
亮平「いや、悪い、ちょっとこの状況についていけてなくてな」
理恵「そういえばお客さん、見ない顔ですね」
亮平「えぇと、後輩に良いお店があると言われて」
悟「僕が連れて来ちゃいました!」
理恵「ふふっ、ありがとうございます」
悟「こちら店主の理恵さん」
理恵「ゆっくりして行って下さいね」
亮平「はい」
悟「とりあえず焼酎と適当におつまみになるものお願いしまーす!」
理恵「はい、直ぐにご用意しますね
お客さんは?」
亮平「あっ、じゃあ…同じのを」
理恵「はい、かしこまりました」
~焼酎とおつまみが出される
そして理恵は自分の分も用意する~
亮平「えっ、理恵さんも飲まれるんですか?」
理恵「だめですか?」
亮平「だめではないですけど…」
理恵「ふふっ私はお客さんと腹を割ってお話がしたいんですよ」
悟「こう見えて理恵さん、お酒めちゃくちゃ強いんですよ」
理恵「えぇ、ですから私の事はお気になさらずじゃんじゃん飲んで食べて下さい」
亮平「そう言うのなら…」
悟「では…良いですか?」
理恵「準備OKです」
亮平「ん?ん?」
悟「先輩、乾杯ですよ乾杯」
亮平「あぁ」
悟「では…本日の残業もお疲れ様でした!乾杯!」
亮平・悟・理恵「「「乾杯!」」」
悟「で、話は戻るんですがメイド喫茶どうでした!?」
理恵「あれはとても素晴らしいものですね
癖になります…あの〜…」
悟・理恵「「萌え萌えキュン!」」
亮平「息ぴったり!」
理恵「今度、メイド服着てみようかな…なぁんて」
悟「理恵さんのメイド服なら絶対に似合いますよ!ね、先輩!」
亮平「確かに、理恵さんなら似合いそう」
理恵「そんな、悟さんも先輩さんもそんなに煽てないで下さい…本気で着ちゃいますよ?」
悟「ウェルカムです!」
亮平「ちょっ、田中!」
理恵「うふふっ…あっ!」
亮平「どうされましたか?」
理恵「そういえば先輩さんのお名前をお聞きしてませんでしたね」
亮平「あぁ、自分は酒田亮平です」
理恵「亮平さんですね、お酒注ぎましょうか?」
亮平「あっ、じゃあお願いします」
理恵「かしこまりました」
亮平N)この後もたわいの無い話と共にお酒やつまみを楽しんだ
理恵さんはどうやら話すのも聞くのも上手で俺も自然と、知らず知らずに会話が弾んでいた…そして
亮平「あの…」
理恵「どうされましたか?」
亮平「いや…あの…その…」
理恵「亮平さんは大事な話をする時、考え込んじゃうタイプですか?」
亮平「ど、どうして分かったんですか⁉︎」
理恵「ふふっ…顔を見てれば分かりますよ
大丈夫です、ちゃんと話すまで待ってますから」
亮平「…(深呼吸)あの、実は俺、会社を辞めたいんです」
理恵「……辞めたくなるほど、嫌な事があったんですね」
亮平「はい、その…うちの会社は所謂ブラックでして、ほぼ毎日の様に何かしら理由をつけられ残業、最初の頃は残業手当も出してくれていたのですが、その残業手当も1年前から支払われなくなり…今日、部長に辞表を出したんです
…そしたら、『お前はなに馬鹿な事を言ってるんだ』と言われて取り繕ってくれませんでした」
理恵「確かに、それはお辛いですね」
亮平「だから…俺…これからどうすれば良いかなと思いまして…もう…嫌なんですよ…仕事も、部長も、そして会社も…」
理恵「お疲れ様です
ですが、私には亮平さんの悩みを取り除く事は出来ません
せめて愚痴を聞いたり、私がお話をして会社でのお辛い事を一時的に忘れさせる事しか出来ません」
亮平「そう…ですよね…」
理恵「お力になれず、申し訳ありません…ですが1つ、相手にハッキリと言う事も大切ですよ
私に話してくださった様に、自分の気持ちを素直に曝け出してみるんです
うまく言葉にできない時は事前に何を言うか紙に書いて暗記してみて下さい
そうすればきっと、良い事がありますよ」
亮平「理恵さん…」
悟「先輩、自分も微力ながらお伴しますよ!」
亮平「田中…!」
悟「僕も今の職場が嫌ですからね!」
亮平「今日はありがとうございました
料理もお酒も、そしてお話もどれも最高でした!」
理恵「ありがとうございます
決心…したんですね」
亮平「はい!」
理恵「私はこのお店で、亮平さんのご来店をお待ちしていますね」
亮平「待っていてください」
理恵「そうだ、今日のご勘定は結構です」
亮平「えっ!?」
理恵「その代わり、絶対報告に来て下さい」
亮平「分かりました!美味しかったです!」
~亮平お店を出る~
悟「先輩、絶対酔いが覚めてますよ」
理恵「まぁ、良いじゃないですか」
悟「…理恵さん、後は宜しくお願いしますね」
理恵「分かっていますよ
悟さ…いや、あんたも金、ちゃんと用意するんだよ」
悟「当たり前じゃないですか
僕は依頼人なんですから」
理恵「あんたがあたしに依頼するなんて珍しいと思ったら…まさか…ねぇ」
悟「僕だって、ペテン師である以前に1人の人間ですから」
理恵「そんなペテンも、あたしの前では無意味だって、知ってるだろ?」
悟「あははっ、これもまた、依頼ですから」
理恵「高島小学校5年2組、酒田 亮平、作品名、タ○コプター…ねぇ」(タ○コプターを取り出す)
悟「小学校の自由研究の作品にしてはよくできてますよね」(タ○コプターを見ながら)
理恵「よくできてる…というより本物にかなり近いもんだね、これ」
悟「本物は現実にはないですよ」
理恵「だからあんたの依頼人は彼を欲してるんだろ?」
悟「そうなんですよねー、あっ勘定は僕も無しって事で良いですか?」
理恵「ダメに決まってんだろ?」
悟「えー、でもー」
理恵「ダメ」
悟「じゃあ、後日で良いで…」
理恵「(遮るように)ダメって言ってんだろ、あぁっ!?」
悟「あ、はい、その、ちゃんと払います」
理恵「ふんっ、それで良いんだよ」
~次の日~
亮平N)ついにこの日がやって来た。
今回はとことん言ってやるって決めた。
言う事もちゃんと紙に書いて暗記してきた。これで問題ない。
俺は勇気を持って、部長に辞表を届け出す。
亮平「武田部長、私酒田 亮平は本日を持ちまして会社を辞めさせて頂きます」
信人「はぁ…今日もまたか…酒田
お前は何度馬鹿な事を言ったら気がすむんだ
…はぁ全く、忙しい時に無駄な時間を何度も何度も取らせやがって…良いか?もう1回だけ言うぞ?お前は与えられた仕事をこなしていれば良いんだ!分かったな?」
亮平「分かりません、そんな事…分かりませんよ…いや、分かってたまるか!」
信人「な、なんだとっ⁉︎」
亮平「私はそもそもこの会社の『明るく、楽しく、個性を活かした会社』という社訓に惹かれて入社しました」
信人「個性を活かす前にどれだけ会社の為に働けるのかを見極めるのは大事な事だ
だから、会社はお前に仕事を課したんだぞ」
亮平「何を言ってるんですか!武田部長が…いや、この会社がしてきた事は完全なる法律違反だ!
良いですか、知らないなら教えてあげます…憲法第5条、『精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意志に反して労働をさせてはいけない』と書かれています!
そう、俺は武田部長による精神的束縛を味わいました!」
信人「くっ…」
亮平「更に!俺は武田部長によってサービス残業を何日も何日もさせられました!
普通なら残業手当も出されて良いはずです。申請もしました
それにも関わらず一切支払われる様子が見受けられません!
一体どういう事なんですか!?」
信人「知らん知らん!全部お前の妄想だろ!」
亮平「妄想…?武田部長、それは本気で言ってるんですか?
この部署の皆が証人になってくれますよ?
それでも本当に、まだそんな事を言うんですか?」
信人「お前ら分かってるよなぁ…!これは全部、酒田のもうそ…」
~ここで電話が鳴る~
信人「はい、もしもし…えっ!マスコミが来てる!?いや、しかし…はい、はい、なっ…!でも社長、労働局には金を握らせてるって…えっ!?そうですか…はい…はい、分かりました」
~電話を切る~
信人「今、社長から連絡があった
もうすぐ労働局の連中がこっちに来るそうだ
マスコミの奴らも大量に押し寄せてるらしい
酒田、この会社はどの道これで大赤字を食らうだろう
…それでもお前は辞めると言うのか?」
亮平「…勿論です
俺は今まで言いたかった事が言えませんでしたから」
信人「そうか」
亮平「でも部長、あの頃言って下さった言葉、今でも憶えてるんですよ?」
信人「言葉…?俺は知らんぞ」
亮平「いいえ、武田部長は絶対に言いました
俺が小学生の時に言って下さった言葉です」
信人「憶えてないな…」
亮平「そうですか…そうでしょうね
『挑戦し続ければ不可能な事も可能になるだから絶対に諦めちゃいけないよ』って、だから俺、夏休みの自由研究結構頑張ったんですよ?」
信人「酒田…お前、あの時の…!
ははっ…はははっ…そっか、そうだったのか」
亮平「思い出してくれましたか?」
信人「あぁ…あぁ…思い出したよ
その言葉は、俺が新卒でこの会社に入社した頃の話じゃねぇか
この会社に入れた事が嬉しくて、偶然川辺で落ち込んでたお前を見掛けて、つい言った言葉だ」
亮平「そうだったんですね」
信人「なぁ…俺は戻れるか?」
亮平「大丈夫ですよ、俺に諦めない事を教えてくれた武田部長なら」
信人「そうか」
亮平「武田部長」
信人「…」
亮平「俺はこの会社に入って受けてきた武田部長の扱いをこれから一生、恨んでいくでしょう」
信人「あぁ、そうだろうな」
亮平「でも、武田部長が居なかったら、今の俺は居ません」
信人「…」
亮平「武田部長、刑務所で取り戻して下さい。あの頃の自分を」
信人「…あぁ、分かったよ」
亮平「俺はあの頃の武田部長と仕事がしたいです
だから、絶対に戻ってきて下さい」
信人「約束する
俺はあの頃の心を取り戻すとな」
亮平「最後に武田部長…」
信人「あぁ…分かってる」
亮平「本日をもちまして、会社を辞めさせて頂きます」
信人「今まですまなかった、ご苦労様」
~荷物を纏めて外に出る~
悟「いやぁ~先輩、無事に辞める事ができて良かったですね」
亮平「労働局の人達が動いてくれたなら、正直俺が辞めるなんて言わなくても良かったんだけどな」
悟「でも先輩、今の顔めちゃくちゃ清々しいですよ」
亮平「ははっ、そうだな!言いたい事が言えたからかな」
悟「あ、そうだ、今日はまだお昼ですけど、お酒飲みに行きませんか?」
亮平「奇遇だな、俺もそう思ってた所だ」
悟「実は近くに料理もお酒も美味しくて美人な店主が居るお店があるんですよ」
亮平「しかもそこは隠れ家風の小料理屋なんだよな」
悟「そうそう、それがここだとか」
亮平「じゃあ今日は、とことん飲むか!」
悟「はい!」
亮平「(扉を開けて)今から2名入れますか!」
理恵「いらっしゃいませ、お待ちしてましたよ」
亮平「本日をもちまして無事、仕事を辞める事ができました!」
ここまで演じてくださり、ありがとうございました。