#八 不忍池(四)
「人肉を出すような噂の立つ店に、人を連れて行くやつがいるか。それにあの店じゃ、俺も食ってただろ」
小波に言われても、コガネは首を横に振る。
「アニキって、どこまで信じていいかわかんねえんだよ。人の肉だって普通に食いそうだし」
「食うもんか、あんなまずい肉」
「食ってるじゃねえか!」
「冗談だ」
「そういうところが信用できねえんだって!」
激しく言い争う小波とコガネ。先程までの緊迫した空気が嘘のよう。
「なぁーに、むっししてるんでいすかあ」
ぐだぐだになってきたところで、幼粘鬼が声をあげる。
「ひとぉをよびっだしぃておぅいてい、ほたぁらかしってどゆことでいす」
「あー、じゃあ戻っていいや」
「おぅい!」
思わず叫ぶ幼粘鬼。その様子を指さして、小波がコガネに尋ねる。
「何を怒ってるんだろうな、アイツ」
「いや、そりゃ怒るだろ……」
コガネが呆れてる間に、幼粘鬼はさらに高く上昇する。月光を浴びて、鈍く光る裸身。
「もーぅおこたでいす。ゆーぅたちはからっだのぶらぁどをぜぃんぶぴゅっぴゅしてい、みーぃのでぃっなあになりやぁがっればいぃーんでいす」
「えっ、オイラも!?」
「あたぁりまえでいす」
言うが早いか、幼粘鬼はその口を人体ではありえない大きさにまで開いて、何かを吐き出した。
ごぼぼごぼごぼぼぼっ!
蛙の卵を思わせる、粘液状の泡が小波たちに降りかかる。慌ててよけると、周囲に腐臭が広がった。
「な、何なんだよアレ!?」
「知るか!」
叫びながら、小波は外套の懐から短銃を取り出す。




