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#七十二 巌谷小波(一)
「どうだ、自分の銃で殺される気分は」
松陰は御伽創死の銃口を小波の頭に当てたまま勝ち誇る。だがそれでも小波は言い返す。
「アンタには撃てないよ」
「ふん、この状況で誰かが助けに来るのを期待しておるようだが、誰が来たとしても儂を止める前に貴様は撃たれる。助からん」
「それはどうかな。試してみなきゃわからねえぜ」
「ならば死ぬがいい!」
強気の小波にイラ立った松陰、絶叫と共に引き金を引く。
その刹那、松陰の手の中で御伽創死はポロポロと崩れ落ちた。
「!?」
「その銃は馬糞だよ」
動揺する松陰の後ろに、天井の煉瓦を突き破った小波が下り立つ。
「貉に化かされたな」
松陰が振り向くと、後ろの小波は右腕に紐で御伽創死をグルグルに縛りつけて固定し、撃った際の反動を最大限に殺した状態。
視線を前に戻せば、さっきまで小波だったコガネは貉の姿になって逃げ出し、外套だけが残される。
「儂の復讐が、こんなところで潰えるとは――!」
「そんなもん、テメエの頭ん中だけでやってろ」
小波は躊躇なく引き金を引いた。
鹿鳴館に銃声。




