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#六十三 山田美妙再び(一)

「美妙さん……」


 サーベルの刃先は小波の首筋に当てられて、いつでも頸動脈を切り裂ける状態。横にいるコガネも手出しできない。


「今すぐ立ち去りなさい。私も君たちを殺したくはない」


「どうして、美妙さんがこんなことを?」


「新政府、君たちの言う薩長政府は以前から前島と郵便局分室の動きを不審に思っていました。それで動向を探るために、私が間諜スパイとして送られたのです」


「最初から俺らの動きは筒抜けだったってことか……」


 小波の言葉に、うなずく美妙。小さく揺れた刃先が小波の首をかすめて、コガネが息を呑む。


「私も新政府のやり方を完全に支持しているワケではありません。ですが、今は明磁になって物事が色々変わっている過渡期です。多少の犠牲はやむを得ないでしょう」


「多少で切り捨てられる側の身にもなってみろよ……!」


 ずっと動けないでいた小波、ふいに床を転がってサーベルから逃れると、そのまま身をよじって足払いを仕かける。


「!」


 美妙がかわすとさらに起き上がって追撃しようとするが、右手を床に突こうとして痛みでバランスを崩す。そこを美妙が容赦なく蹴り上げた。


「アニキ!」


「おかしなことを考えないほうがいい。普段ならまだしも、そのケガで私に勝てる可能性はないのです」


「くそっ……」


 床に倒れた小波の眉間に、美妙がサーベルを向ける。コガネも助けに入れない。事態はさっきまでと較べて、確実に悪化した。


 外は雪。夜はまだ長い。

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