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#五十九 鹿鳴館(一)

 その日の夜。午後から降りだした雪は次第に本降りとなり、東京市全域に白く降り積もる。


「ううう、めちゃくちゃ寒いよう」


「だから厚着して来いって言ったのに」


 両腕を抱えてガタガタ震えるコガネに、小波が呆れた顔でつぶやく。


 ふたりが居るのは、鹿鳴館の裏手の一角。


 正門からは紅葉が突撃して、かく乱してる間に小波たちと美妙がそれぞれ別の場所から侵入するっていうのが大雑把な作戦。


「ほら、これ着とけ」


 小波は自分の外套を脱いで、コガネに着せる。


「ありがと……って、アニキが寒いんじゃないか?」


「俺はいいんだよ、今夜はいつもより動かなきゃならねえんだから、着こんでると動きにくいんだ」


 そう言って、塀に立てかけたサーベルを左手で掴む。


「美妙さんに借りたのはいいけど、どうやって使うんだこれ」


 片手でぶんぶん振ってみても、どこか危なっかしい。


「そういえばアニキ、白兵戦してるのは見たことねえな」


 討伐にはいつも御伽創死を使うので、切った張ったのやり取りになること自体が少ない。


「できるのか?」


「馬鹿野郎、俺が本気を出したらこんなの超余裕だよ。だからおまえは、安心して守られとけ」


「……それはやだ」


「え?」


「オイラ、ただアニキに守られてるだけなんてやだ。オイラはアニキの横に、並んで立ってたい」


「……そうだな」


 コガネと組んで配達をするようになって数週間。彼女に助けられたことだって何度もあるし、今ではもう欠かせない存在なのは、当の小波が一番わかってる。


「じゃあ早速……と言いたいとこだが、紅葉さんが突入してからじゃねえとな」


 塀の中は静まりかえって、ただ雪だけが降り続ける。

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