#五十一 捌胃婆(二)
小波の言葉に、コガネはこれまで討伐してきた相手を思い出す。
言われてみれば幼粘鬼も切裂惹狗も宙宙列車も、みんな放置できないほどの死者を出してた。
「どんなご立派な目的があろうと、誰かを死なせてまで達成させるようなやつが正しいはずがねえ。基準はそれだけだ」
「なるほど……」
コガネはとりあえず、小波がちゃんと自分の意思で動いてるのを知って安心する。
すると、それまで黙って話を聞いてた捌胃婆が割りこんできた。
「さっきから、ずいぶん好き勝手なことを言ってくれるじゃないか。アタシから見たら、さっきの男やアンタたちの方がよっぽど害悪だよ」
「見解の相違ってやつだな」
対立する立場がはっきりして、改めて向かい合う小波と捌胃婆。
御伽創死で捌胃婆を撃ち抜くのが先か、飛び出す口が小波の胃を喰い破るのが先か。
「……」
提灯を持つコガネの手にも力が入る。
どちらが先に動くのか。そして先に動くのは有利なのか不利なのか。
「死ねええええ!」
仕掛けたのは捌胃婆。五重塔の一段目の屋根へ跳び上がると、瓦を蹴って小波目がけて急降下。
「!」
突き出てくる口を横っ飛びにかわすと、地面を直撃して敷石を噛む。
小波はその口を靴で踏みつけようとするが、捌胃婆はすぐに顔へと引き寄せる。
「……」
「……」
再度向き合うふたり。
戦いはまだ始まったばかり。




